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オーブ編
オーブを扱いし戦士
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「おわり…ました…」
「そうか…よかった…」
「長かったですね…ここまで…」
「長かったな…ここまで…」
「魂は存在する」
それが科学的に証明されてはや十年。
それからというもの、魂に関する研究が積極的に進み、今、歴史に残る大手術が行われ、そして成功した。
「魂は粉状の物体であり、取り出すことが可能だ」
この理論に基づいた、科学的実験兼手術である。
粉状の魂を取り出し、圧力で潰し、そして特殊加工を施したオーブに入れる。そのオーブの数、ちょうど100。2日間に渡る大作業だ。
そんな作業も終わり、人類史上初、魂を体内から取り出した人物、軍冬 照黄は、今…
最高に暇をしていた。
手術の報奨金により10億という大金を受け取った照黄。
オーブが近くにないと命が危なくなることもあり、家から一歩も出ないヒキニートと化していたのだ。
「仕事探さねぇとな…あ、金はあるのか。外でないほうがいいのか。…。でも暇だしなぁ。せっかくモテるかもと思って魂抽出手術受けたたのにさ…外出れなかったら意味ねぇよ…」
おわかりだと思うが照黄は驚くほどのダメ人間である。
手術前までは政治家として、魂事業に熱心に取り組んでいたが、それは自分の元へ金を滑り込ませるため。
行動の垣根には自分のためがある。
「医者に内緒で外出ちまうか」我慢の限界が訪れた。
念のため2つのオーブをカバンに忍び込ませ、数週間ぶりの外へと旅立った。
最高に都会なこの街では魂のない浮遊感に慣れ始めた照黄にはハードルが高すぎる。
人がひとり通れる程度の細い裏道を通って、静かな行きつけカフェへと向かう。
「いらっしゃーい」
カラカラといったベルの心地よい音が鳴る。
カフェの奥からはコーヒーの豊かな香りが漂う。
「やっぱここなんだよな」
カウンターに座り、いつもの、とマスターに告げると、あいよ、といった適当な掛け声が返ってくる。
「お前いいのかよこんなとこ来て」
「いいんだよ。暇すぎてしょうがなかったし。それにマスターのコーヒー久々に飲みたくなってな」
「そりゃどうも。ほら、コーヒー砂糖多めミルクなし。シナモンは今切らしてるんでな。」
あざす、と告げて一口。うん、いつもの味だ。
長居しすぎた。これといった用事はないが、2時間もカフェに居座るのはなんとなく違う気がする。
「んじゃ、そろそろ帰るわ。美味かった。また来るぜ」
「おう。次はシナモンも用意しとくからよ」
「ほんとに頼むぜ!んじゃ」
いつもならこのまままっすぐ家に帰るが、今日はなんとなく近くにある公園にも寄りたかった。
カフェから徒歩1分。こんな公園でも意外と子供の声がする。
キャーキャーうるさい。ここは動物園かって。
「ん?え?なんか、はしゃいでるというか…」
叫んでる?と独り言を呟くところだった。
でっかい遊具の裏側から子供数人を連れた化け物が出てきた。子供の目には涙が浮かんでる。
え、やばい。どうすりゃいいんだよ。
ここは子供助けるべきなんだろうけど、俺だって死にたかねぇよ。
「あぁもうどうすりゃいいんだよ!」
「そりゃお前助けにいけよ」
「助けにってどうやっt…ってマスター!?」
よっ、と軽い挨拶を交わすマスターは何がおかしいんだといった目つきで俺を見てくる。
「ところでお前、今日オーブ何個持ってきてる?」
「ふ、2つだけどどうしたんだよ」
「いいかよく聞け。あれはシークレットっていう化け物だ。でな?あいつら、日本の軍事力じゃかなり手こずる相手なんだよ。」
「は?そんなの聞いたことねぇよ。え、マスターって何者?そういや名前しらねぇs」
「うるさい!そしてだ。お前のそのオーブ。100個もあるのには理由があんだよ。魂を抽出した奴っていうのは、シークレットの対抗策の一つでもあってだな」
「は?」
「戦ってみねぇとわかんねぇ。おいお前!騙されたと思ってオーブ1個ぶっ壊してみろ」
「は?え?は?」
わけが分からず、取り敢えず言われるがままにオーブを一つ取り出し軽く力を込める。
途端、バリッとヒビが入り、勢いに乗って粉々に割れてしまった。
オーブの破片が手に突き刺さり、血が流れ出す。
にしても血の量多くないか?え?
え?体中に手の平から流れてくる血に包まれていく。
「なんだよこれ!うぇ、きったね」
そんなこと言ってたら段々と血が地面に垂れてきて、自分の体が見えてくる感じになった。
俺の体はモビルスーツにくるまれたかのような、鉄みたいなのに包まれた変な姿になっていた。
「おい!マスター!説明!」
「だまれ!くそ、あいつカー・シークレットかよ。足速いぞ!追いかけろ!」
「あ、ちょ、まてよ!」
この体のせいで思うように動かないが、強くなってるのは事実だろう。エネルギーがたぎるのを感じる。
「でも…いきなり…このダッシュは…きつい…」
かなり大きな広間に出てきた辺りで、シークレットとかいう化け物は子どもたちを投げ捨てて威嚇っぽいポーズを取り出した。
「なんなんだよてめぇ!」
一発繰り出したパンチの反動に驚きすぎて、自分で吹っ飛んでった。
ギリギリ体制を整える感じで地面に着地。
対するシークレットは吹っ飛びつつも器用に両足の高速回転で移動距離を少なく抑え、おなじくきれいに着地。
「あぁ!もう鬱陶しい!」
自分で腹パンして吐血。その血からハンマーを生成。
「砕け散れ!そんで消えろ!」
シークレットも、腕についたタイヤで摩擦攻撃をしようとするが、急に振り下ろしたハンマーについていけず、タイヤが地面にボトンと情けない音を立てて落ちる。
「んじゃ、消えてもらいますよ!」
今度こそ頭狙ってハンマーをぐるぐる回して、シークレットの頭目掛けて…
「じゃーな、二度と来んなよ」 ドゴブォーーーーーン
「そうか…よかった…」
「長かったですね…ここまで…」
「長かったな…ここまで…」
「魂は存在する」
それが科学的に証明されてはや十年。
それからというもの、魂に関する研究が積極的に進み、今、歴史に残る大手術が行われ、そして成功した。
「魂は粉状の物体であり、取り出すことが可能だ」
この理論に基づいた、科学的実験兼手術である。
粉状の魂を取り出し、圧力で潰し、そして特殊加工を施したオーブに入れる。そのオーブの数、ちょうど100。2日間に渡る大作業だ。
そんな作業も終わり、人類史上初、魂を体内から取り出した人物、軍冬 照黄は、今…
最高に暇をしていた。
手術の報奨金により10億という大金を受け取った照黄。
オーブが近くにないと命が危なくなることもあり、家から一歩も出ないヒキニートと化していたのだ。
「仕事探さねぇとな…あ、金はあるのか。外でないほうがいいのか。…。でも暇だしなぁ。せっかくモテるかもと思って魂抽出手術受けたたのにさ…外出れなかったら意味ねぇよ…」
おわかりだと思うが照黄は驚くほどのダメ人間である。
手術前までは政治家として、魂事業に熱心に取り組んでいたが、それは自分の元へ金を滑り込ませるため。
行動の垣根には自分のためがある。
「医者に内緒で外出ちまうか」我慢の限界が訪れた。
念のため2つのオーブをカバンに忍び込ませ、数週間ぶりの外へと旅立った。
最高に都会なこの街では魂のない浮遊感に慣れ始めた照黄にはハードルが高すぎる。
人がひとり通れる程度の細い裏道を通って、静かな行きつけカフェへと向かう。
「いらっしゃーい」
カラカラといったベルの心地よい音が鳴る。
カフェの奥からはコーヒーの豊かな香りが漂う。
「やっぱここなんだよな」
カウンターに座り、いつもの、とマスターに告げると、あいよ、といった適当な掛け声が返ってくる。
「お前いいのかよこんなとこ来て」
「いいんだよ。暇すぎてしょうがなかったし。それにマスターのコーヒー久々に飲みたくなってな」
「そりゃどうも。ほら、コーヒー砂糖多めミルクなし。シナモンは今切らしてるんでな。」
あざす、と告げて一口。うん、いつもの味だ。
長居しすぎた。これといった用事はないが、2時間もカフェに居座るのはなんとなく違う気がする。
「んじゃ、そろそろ帰るわ。美味かった。また来るぜ」
「おう。次はシナモンも用意しとくからよ」
「ほんとに頼むぜ!んじゃ」
いつもならこのまままっすぐ家に帰るが、今日はなんとなく近くにある公園にも寄りたかった。
カフェから徒歩1分。こんな公園でも意外と子供の声がする。
キャーキャーうるさい。ここは動物園かって。
「ん?え?なんか、はしゃいでるというか…」
叫んでる?と独り言を呟くところだった。
でっかい遊具の裏側から子供数人を連れた化け物が出てきた。子供の目には涙が浮かんでる。
え、やばい。どうすりゃいいんだよ。
ここは子供助けるべきなんだろうけど、俺だって死にたかねぇよ。
「あぁもうどうすりゃいいんだよ!」
「そりゃお前助けにいけよ」
「助けにってどうやっt…ってマスター!?」
よっ、と軽い挨拶を交わすマスターは何がおかしいんだといった目つきで俺を見てくる。
「ところでお前、今日オーブ何個持ってきてる?」
「ふ、2つだけどどうしたんだよ」
「いいかよく聞け。あれはシークレットっていう化け物だ。でな?あいつら、日本の軍事力じゃかなり手こずる相手なんだよ。」
「は?そんなの聞いたことねぇよ。え、マスターって何者?そういや名前しらねぇs」
「うるさい!そしてだ。お前のそのオーブ。100個もあるのには理由があんだよ。魂を抽出した奴っていうのは、シークレットの対抗策の一つでもあってだな」
「は?」
「戦ってみねぇとわかんねぇ。おいお前!騙されたと思ってオーブ1個ぶっ壊してみろ」
「は?え?は?」
わけが分からず、取り敢えず言われるがままにオーブを一つ取り出し軽く力を込める。
途端、バリッとヒビが入り、勢いに乗って粉々に割れてしまった。
オーブの破片が手に突き刺さり、血が流れ出す。
にしても血の量多くないか?え?
え?体中に手の平から流れてくる血に包まれていく。
「なんだよこれ!うぇ、きったね」
そんなこと言ってたら段々と血が地面に垂れてきて、自分の体が見えてくる感じになった。
俺の体はモビルスーツにくるまれたかのような、鉄みたいなのに包まれた変な姿になっていた。
「おい!マスター!説明!」
「だまれ!くそ、あいつカー・シークレットかよ。足速いぞ!追いかけろ!」
「あ、ちょ、まてよ!」
この体のせいで思うように動かないが、強くなってるのは事実だろう。エネルギーがたぎるのを感じる。
「でも…いきなり…このダッシュは…きつい…」
かなり大きな広間に出てきた辺りで、シークレットとかいう化け物は子どもたちを投げ捨てて威嚇っぽいポーズを取り出した。
「なんなんだよてめぇ!」
一発繰り出したパンチの反動に驚きすぎて、自分で吹っ飛んでった。
ギリギリ体制を整える感じで地面に着地。
対するシークレットは吹っ飛びつつも器用に両足の高速回転で移動距離を少なく抑え、おなじくきれいに着地。
「あぁ!もう鬱陶しい!」
自分で腹パンして吐血。その血からハンマーを生成。
「砕け散れ!そんで消えろ!」
シークレットも、腕についたタイヤで摩擦攻撃をしようとするが、急に振り下ろしたハンマーについていけず、タイヤが地面にボトンと情けない音を立てて落ちる。
「んじゃ、消えてもらいますよ!」
今度こそ頭狙ってハンマーをぐるぐる回して、シークレットの頭目掛けて…
「じゃーな、二度と来んなよ」 ドゴブォーーーーーン
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