オーブ・シークレット

金充編

死は幸福

　目を覚ますとそこは病院だった。
　金充には、途切れることのない集中力によった長期戦と、命中率がある。しかし、集中しすぎて戦闘終了に気づかず、仲間を攻撃してしまうのはよくあることらしい。
　そんときに俺もしっかりと心臓付近を当てられちゃんと手術もしたようだ。
「本当に…ごめんなさい…」
「大丈夫だって！痛いけど…まぁ、俺もこれからシークレットが死んだら大声で知らせてやるからさ」「あ…ありがとうございます…」
「わたしのお父さんは、お母さんがわたしを身ごもると同時に死んで、お母さんはストレスをしょって、わたしをほぼ監禁してて、それでもこどもながらに遊びを探したんです。壁が少しずつ黄ばんでいくのをじーっと見つめたり、小さなアリを一発で潰す遊びをしてたら、やめ時っていうのがわからなくなって…」
「そうだったのか…なんか…お金儲けってそういうことだったのか…失礼なこといって悪かったな」
「いえ…いいんです。だって、ここで働き始めて、初めてまともなご飯を食べたんです！今までのカピカピなお米が普通だと思ってたから、びっくりしちゃいました…」　
　びっくりした。よくここまで生きてきたなと思った。俺だったらとっくの昔に自殺でもしているはずだ。とおもったら…
「実際わたしだって、何度も死のうとしました。けど、お母さんも自殺でした。あんな人と一緒の人生なんか歩みたくない。わたし、自殺だけは嫌なんです。せめて、せめてシークレットに殺してもらいたいんです」
「そっか…じゃあまずは金、稼がないとな！」「はい！」

「おぅ照黄！復活したのか！お前の中には翔也もいるんだ。ちゃんと大事にしてくれねぇと心配になるだろ」
「ごめんなマスター。でももう大丈夫。で、ここに呼び出したってことは…」
「あぁ。シークレットが出た。しかも今回はちょっと厄介だぜ…」
『誰が厄介だと？』

リーパー・シークレット
攻撃力∞ 防御力∞ 俊敏性∞
死神のシークレット。殺すことは不可能であり、魂を取り出すか封印するかの二択でしか倒せない。
そして、数少ない理性が少しあるシークレットで、人間と会話をすることもできる。

「し、死神！？しかもシークレットなのに話せるのか！？」
『あぁ、ただ我が求めるは唯一、そなたらの命、これだけだ。』
「何言ってるか分からねぇが、なんとかしないとまずいのはわかる。よし、行くか…チェンジ！シークレット！」
「わたしも援護します！」
『はぁ、人類はなぜ我に立ち向かうのか？人というものの本当の幸福は死だ。死後に不安は存在しない。全てが思い通りだ』
「うるせぇ！人間は今生きてることを確認できてるだけで幸せなんだよ！うりゃぁぁぁぁぁ！」
「死ぬことは…幸せ…なんでも…思い通り？」
「おい！金充！？あんなやつの言う事真に受けるな！お前の集中力見せてみろよ！」
「あ、そうだよ。自分からシークレットに殺してもらうのは…自殺だよ…よし…戦わないと！」
「よく立ち直った！行くぞ！ぶるぁぁぁぁぁぁぁ！」
　リーパーへ勢いよくパンチを繰り出すが、透明化され、勢いよく転倒しかけるが足にローラーを付けてなんとか体制を立て直すが、死神の鎌が目の前を横切りそうだったところに「ヒット」鎌には実体があるらしく、簡単に吹っ飛ぶ。
　しかし、鎌は即消滅しその後リーパーの手に戻ってくる。
『我の鎌にさえ身を委ねれば、楽に死ぬことができるというのに、そなたらはなぜそれほどまでに…』
「ミス」銃弾は当たらずすり抜けた。
ミス、ミス、ミス、ミス、ミス
　実体のある場所を探しているらしいが、やはり死神、全てがそのままリーパーをすり抜けていく。
『だからそなたらには二択しか残っていないのだよ。我に殺してもらうか、我に殺されるか。選ぶのだ』