オーブ・シークレット

大地ノコ

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外伝

コーヒー・シークレット

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 生まれたシークレットのひとつ、コーヒー・シークレット。
 こいつは最弱と言ってもいいほどの弱さだからこそ、シークレットとして目覚めるのも早かった。
 目覚めたのは、朝。8:00頃には行動を開始したのだ。
 こいつが最初に向かった場所は、本能か否か、しがない喫茶店だった。
 自慢の商品は自家製珈琲。豆にこだわり抜いた1品で、マニアからだけでなく、良心的な値段から、朝は必ずここという人も少なくない。
 そんな時間帯であったから客は多く、大混乱に陥った。しかし、そんな中、マスターだけが冷静だった。
「よぉ、そこのバケモンさん。わりいなみんな。お代は要らねえから、今日はもう帰ってくれ。俺ぁこいつの相手スっからよ」
 そう言って客を全て帰したあと、マスターは話し始めた。
「お前さん、珈琲、飲めるかい?飲めないんなら俺の命はお終い、だな」
 そう言って出された珈琲を、シークレットは飲んだ。
 その瞬間、こいつは飛び跳ねた。美味しかったのだ。本能にこびりついている、珈琲愛。
「おぉ……あんたこの美味さが分かるのかい?じゃあ悪いやつじゃないね。またのご来店を」

 それ以来彼は、この店の常連となった。
 段々と体は人間のような形に、言葉も拙いながらに喋ることができるようになった。
「ようバケモンコーヒーテイスター!」
 こいつのあだ名だ。略してバケコーターなんて呼ぶやつもいる。
「おはよう、ますた、こーひー、いっこ」
「あいよ、いつも通りな」
 そんな生活が彼にとってかけがえのないものへなっていったのだ。

 気がつけば、彼は体以外、人間と言って差し支えない程の感受性と語彙を手に入れた。
 バケコーターなんて呼ぶやつはいつの間にか消え、人間として扱う常連が増えていた。
「おい、バケモン、珈琲の注ぎ方教えてやる」
 そんな彼を未だにバケモン呼びし、何故かそんなことを教えているマスター。彼の意図を読めないまま、言われるとおりにしていたコーヒー。
 この2人のやり取りを眺めながら、珈琲とモーニングを食すじい様から、朝からこんなにと思う量の定食を食べるリーマン。
 素敵な日常を詰め込んだような、小さな世界が広がっていた。
 しかし、その幸せも終わりに近づく。マスターが歳によって、入院した。
 残り、だいたい3週間。
 そんなになるまで、店を開けず、毎日みんなの居場所を作っていたマスター。
 そんなマスターに対して、コーヒーは、なにかしたかったのだ。
「僕に、何か出来ることは無いでしょうか?」
「そんなん簡単さ、バケモン。お前は人間の体さえあれば、体の年齢を下げたり、まぁ、なんか出来んだろ?シークレットっていうんだっけか?でさ、俺が死んだあとも、店、続けてくれねぇか?」
 コーヒーはようやく気づいた。マスターが自分に珈琲を教えてくれた理由。マスターはこの店を、ここの客を愛していたのだ。愛していたから、潰したくなかった。
「分かりました。マスター。マスターの最高の店、最高の形で続けてみせます」
 そんな最後のやり取りの後、2人目のマスター、照黄の相棒であるマスターが誕生したのだ。

 彼がキング・シークレットを見たときの発言、「あっあれは……ッッ!シークレット!!!あれ?な、なぜだ!?」
 これは、かれがシークレットになろうとしていたが、人間の体に馴染みすぎたがために、シークレット化出来なかったことに対する焦りなのだ。
 つまり、彼はもう、シークレットでは無い。
ただの、一人の、しがない喫茶店を経営する、人間なのだ。
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感想 4

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みんなの感想(4件)

月見団子
2023.01.02 月見団子
ネタバレ含む
解除
月見団子
2022.12.25 月見団子

お久しぶりです。
来ないうちに中々面白くなってますね。
魂を取り込む主人公ですか!
敵にはありそうな力ですけどそれを主人公に使うとは…!
これからに期待です!

解除
月見団子
2022.11.05 月見団子

シークレットになるときの主人公が冷静になってるなぁ。
その冷静さは戦闘にも関係あるのか…。

解除

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