人間兵器

ツチノコのお口

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本編

第1話後半 戦争始まりの話

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「おい!持つなテメェ!持つんじゃねえ!このヤロ..」

 なんか、妙にリアルで気持ちの悪い夢を見た気がする。正夢じゃないかと思うような、恐ろしすぎる夢だった。
 と、夢の整理をしている彼は、学生の頃にカチュカンヘ越してきた、手城てしろ友樹ゆうきだ。
 別世界線でも日本は最近まで残っていた。日本も戦争によって滅亡はしたが、日本育ちの人もまだ普通に残っている。日本育ちでカチュカンに住んでいる珍しい人物。それが友樹だった。
 かといって、それ以外に彼の特徴はなく、彼女はおらず、そこそこの同僚がいて、ブラックでもホワイトでもない会社に勤めていた。
 今日も仕事の友樹は、憂鬱な気持ちになりながら、朝食の準備をしていた。夢について考えていたら、パンがすっかり焦げてしまった。苦さに顔をしかめるも腹は減っていたので牛乳とベーコンで流し込んだ。

 今日は運が悪い。
 朝から変な夢を見て、朝ごはんを焦がしただけでなく、上司に叱られ、更には昼飯分の金を持ってくるのを忘れていた。腹が減った。ただでさえ朝飯を残してきたのに、今日はもうダメだ。
 すると、同僚のノール・オギムが隣りに座ったかと思えば
「食えよ。まだ腹減ってねえし」
と、自分家から持ってきたサンドイッチを1つ差し出した。
「ありがとノール。マジで腹減って死にそうだったから」
と、ありがたく受け取る友樹。ちゃんと焼けてるパンを食って、朝のことを思い出し、口が一気に苦くなってくる。
 朝のことを話しながらノールと友樹は、休憩を目一杯楽しんだ。
 すると、友樹のスマホがぶるっと震えた。
 メールをいましてくるやつとか誰だろう?
 そう思いながらメールを確認した。

キトランス・カーター
人間兵器任命のお知らせ

 思わずスマホを持つ手が緩んだ。スマホは、更に不幸にも、表向きに落ちた。落ちたスマホを見て、ノールも顔を青くした。
「、、、友達がいたずらとかしてるんじゃねえか?」
 ノールは精一杯のフォローをしてるつもりなんだろう。ただ、俺にはこんな馬鹿なことをしてくれるような友達なんかいない。絶対、こいつは本物の皇帝だ。だからつまり、、、
 想像して吐き気がしてきた。腹は減っているのに、腹の中身が喉のすぐ近くまでやってきてた。
 一旦落ち着こう。これは夢かもしれない。絶対そうに決まってる!
 すると、上司に呼び出しを食らった。
「、、、。理由はわかるな?今日でお前をクビにする。最後に怒っちまって悪かったな。無事を、、、祈ってる、、、」
 また吐きそうになった。上司に言われると、現実味がより増す。現実逃避しているところだったから、より絶望感が増す。
 その日は皇帝の命令どおり、帰る途中で皇帝の住居へよっていく必要があったため、汚れた服をなんとかごまかして、重い足取りで会社を出た。
 ノールもついてきた。心配だとか理由をつけて、半ば無理矢理ついてきた。

 皇帝宅へつくと案外あっさりと話は進んでいった。
 俺が人間兵器に選ばれたこと、これは決定事項であること、これから一生をともにする銃をここで選ぶこと、銃を持ってからはすでに人間兵器であるため、あまり人と関わらないこと、このことは国家機密であること。
 どうしてたってこんな目に俺も合わなきゃいけないのか?
 それは俺が珍しい、日本の血を引くものだからだそうだ。日本人の勇敢な魂を戦争で活かすとのことだ。
 もう、この理論がおかしいとか考える頭は残っていなかった。この短期間で起こったことを整理できないのだ。
 ノールもそんな感じぽかった。
 そして、皇帝は恐ろしいことを俺に向かって言いやがった
「今から銃を持ってくる。1つ選びなさい」
 冗談じゃない。俺に合う銃じゃなかったら、それだけで俺の死は確実になるんだぞ。そんな大事なことを今決めろって言われても。
 しかし、俺は1つ考えていた。
 もし、これが今日見た夢だったら、俺は銃を持つのを止められてたことになるんじゃないか?だとしたら、持たずに未来を変えてもいいのか?
 急に不安が襲ってきた。
 未来が変わったせいで、なにか恐ろしいことが起こるとかないよな?
 待て、なにか怖い。恐ろしいことが起ころうとしている。
頭の中でも「持つな!」という声が響いてる。しかし、恐怖か、逆に吹っ切れたのか、俺は銃が5個位おいてある机へと向かっていた。
 ステータスをみまくって、1つの銃に決めた。
 それは、重量とパワーに全振りし、スピードを一ミリも考えていない、使用する人間兵器側の負担も強い銃。
 何故かはわからないが、俺はその銃から目が離せなかった。
 後ろでノールの声がする。
「正気か?友樹!おい!持つな!持つな友樹!持つなぁ!」

 良かった。未来は変わらずにすんだのか。
 それと同時に、やはり不安も。
 ここで引き返すんだ。こっち側へは来るな!
 脳が叫んでる。しかし...
「僕はこの銃にします。」
 そう言って手を伸ばした。そして触れた瞬間...

 強すぎる負荷で気絶。起きたらそこは俺の家だった。ただ、なんか違和感がある。とりあえず水を飲もう。そう思いながらコップを手に取り口の中へと、すると謎の違和感。
「?喉通んない」
 ようやく、俺は人間兵器になってしまったことを思い出した。
 改めてベットに戻ると、人間兵器の食事について丁寧に書かれたプリントが置かれていた。
 書かれてあるとおりに、憂鬱な気持ちで、火薬の入った謎のパウダーを飲んだ途端、あまりの苦さに顔をしかめる。どうしようもないので、オイルと鉄の塊で流し込んだ。
 こんな生活が続くなんて、考えるだけでもおぞましい。はぁ、、、
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