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昇煙
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隊長はだいぶ変な人だ。
例えば5月5日。隊長が隊員全員を集めるように呼びかけた。もちろん何か一大事が起こったのかと心配になる。しかし、隊員の前で隊長は何食わぬ顔をしてこう言った。
「こんなかで未成年のやつは手を挙げてくれ。今日は端午の節句だろ?だから今日は手を挙げてるやつの要望にはなるべく答えてやってくれ。なるべくな、以上」
例えば6月1日。隊長が隊員全員を集めるように呼びかけた。もちろん何か一大事が起こったのかと心配になる。しかし、隊員の前で隊長は何食わぬ顔をしてこう言った。
「俺は戦争に疲れた。ということで今日は戦うの禁止なー。襲われたら自己防衛で殺すのはいいけど、別に好戦的にいかなくてもいいぞー。以上。」
そんな部隊の副隊長は凄く疲れる。ものすごく疲れる。いつも変な行動をとる隊長を監視するのも一苦労なのだ。
今日も、隊長は私を呼び出して威厳を出そうと頑張っているのか、限りなく低い声でこう言った。
「隊員全員を集めて欲しい」
またか……。しかし、どこか変だ。隊長に、何か変化が起こっている。
「隊長……煙草吸われましたっけ?」
そうだ、隊長は煙草を吸わない。吸っているところを見たことがない。
それに今日は隊長が私の方を見ない。本拠点の窓から顔を出してふうっと煙を吐き出す。
「バレた?」と隊長がようやくこっちを向いた。
しかし変顔。
???????
「なんですか……その顔……」しまった、つい本音が。
「違うんだよ、俺煙草苦手でさぁ」隊長は掠れた声でそう言う。…………??????
ならば何故隊長は煙草を吸ってるんだ?
「声に出てるよ……そんな疑問かよ……」隊長が変顔のまましょげた顔をする。それがあまりにもおかしくて、笑いをこらえるのが辛かった。
「いやさ、今日って7月7日で七夕じゃん?今日の夜には絶対織姫と彦星がイチャイチャするわけじゃん?でもさ、周りに立ちこめるは兵器とか火災とか、不幸の煙。嫌じゃん?だからこうやって、煙草でも吸ってさ、幸せな煙でも昇らせようかなって」
何を言ってるんだこの人は……。第一、織姫や彦星も実際にいるのかどうか分からないし。
それにたかが煙草の煙が天まで届くわけないだろうに。
うん。そんなこと分かってる……分かってるのに……
「はい、わかりました!隊員を呼んできますね!あと、煙草1本頂けますか?」
気づいた時には口が開いていた。煙草なんて臭くて苦くて体に悪くて、嫌いでしかないのに……
そんなことを考えながら、部屋を出る時、私の口角が妙につり上がっていることに気がついた。
「今日は7月7日。だからみんなで煙草を吸うぞ。未成年はだめだけどなー」
隊長は、はじめ私にしたような説明を全て省いたため、隊員の顔にはハテナが浮かんでいた。
それでも、困惑しながら隊長から煙草を受け取り吸っていた。
みんなが火をつけたあたりで、隊長が「いやさ、織姫と彦星がイチャイチャしてる中……」とやっと説明を始める。
謎の話を聞かされた隊員たちは全員呆れたように笑うが、笑顔で煙を吸った。
やはり、私は煙草が苦手だ。ひとつ吸って、ゲホゲホと咳き込む。そんな自分に対しても、そして、このみんなで煙草を吸っているという状況にも笑みがこぼれた。
ふと上を向くと、煙草の煙がひとつにまとまり、大きく天まで昇っていくのが分かった。
例えば5月5日。隊長が隊員全員を集めるように呼びかけた。もちろん何か一大事が起こったのかと心配になる。しかし、隊員の前で隊長は何食わぬ顔をしてこう言った。
「こんなかで未成年のやつは手を挙げてくれ。今日は端午の節句だろ?だから今日は手を挙げてるやつの要望にはなるべく答えてやってくれ。なるべくな、以上」
例えば6月1日。隊長が隊員全員を集めるように呼びかけた。もちろん何か一大事が起こったのかと心配になる。しかし、隊員の前で隊長は何食わぬ顔をしてこう言った。
「俺は戦争に疲れた。ということで今日は戦うの禁止なー。襲われたら自己防衛で殺すのはいいけど、別に好戦的にいかなくてもいいぞー。以上。」
そんな部隊の副隊長は凄く疲れる。ものすごく疲れる。いつも変な行動をとる隊長を監視するのも一苦労なのだ。
今日も、隊長は私を呼び出して威厳を出そうと頑張っているのか、限りなく低い声でこう言った。
「隊員全員を集めて欲しい」
またか……。しかし、どこか変だ。隊長に、何か変化が起こっている。
「隊長……煙草吸われましたっけ?」
そうだ、隊長は煙草を吸わない。吸っているところを見たことがない。
それに今日は隊長が私の方を見ない。本拠点の窓から顔を出してふうっと煙を吐き出す。
「バレた?」と隊長がようやくこっちを向いた。
しかし変顔。
???????
「なんですか……その顔……」しまった、つい本音が。
「違うんだよ、俺煙草苦手でさぁ」隊長は掠れた声でそう言う。…………??????
ならば何故隊長は煙草を吸ってるんだ?
「声に出てるよ……そんな疑問かよ……」隊長が変顔のまましょげた顔をする。それがあまりにもおかしくて、笑いをこらえるのが辛かった。
「いやさ、今日って7月7日で七夕じゃん?今日の夜には絶対織姫と彦星がイチャイチャするわけじゃん?でもさ、周りに立ちこめるは兵器とか火災とか、不幸の煙。嫌じゃん?だからこうやって、煙草でも吸ってさ、幸せな煙でも昇らせようかなって」
何を言ってるんだこの人は……。第一、織姫や彦星も実際にいるのかどうか分からないし。
それにたかが煙草の煙が天まで届くわけないだろうに。
うん。そんなこと分かってる……分かってるのに……
「はい、わかりました!隊員を呼んできますね!あと、煙草1本頂けますか?」
気づいた時には口が開いていた。煙草なんて臭くて苦くて体に悪くて、嫌いでしかないのに……
そんなことを考えながら、部屋を出る時、私の口角が妙につり上がっていることに気がついた。
「今日は7月7日。だからみんなで煙草を吸うぞ。未成年はだめだけどなー」
隊長は、はじめ私にしたような説明を全て省いたため、隊員の顔にはハテナが浮かんでいた。
それでも、困惑しながら隊長から煙草を受け取り吸っていた。
みんなが火をつけたあたりで、隊長が「いやさ、織姫と彦星がイチャイチャしてる中……」とやっと説明を始める。
謎の話を聞かされた隊員たちは全員呆れたように笑うが、笑顔で煙を吸った。
やはり、私は煙草が苦手だ。ひとつ吸って、ゲホゲホと咳き込む。そんな自分に対しても、そして、このみんなで煙草を吸っているという状況にも笑みがこぼれた。
ふと上を向くと、煙草の煙がひとつにまとまり、大きく天まで昇っていくのが分かった。
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