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一番
初夏
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夏って、どんなだろう。
「坊主、夏は初めてか?」
「はい」
「だが、ここは片田舎の小島だ。なーんもねぇぞ」
そんな観光に運良く当選したんだ、致し方ない。それにしても、仕事中とは思えぬ身勝手っぷりだ。
映画でしか見てこなかった紙煙草を咥えてるし、スーツの皺ヨレヨレでネクタイも曲がっててだらしがない。本当に成人しているんだろうかこの人は。
「船酔いしねぇとは逞しいな」
「どうも」
こんな潮風と波音、船揺れなんて初めてだが――
「彼方の他三人と違って、な」
ごく一般的な理想な家庭図では、各々の耐性にばらつきが生まれるのは、よくある事なのだろうか。
「家族でか」
「俺は来たかった訳じゃありませんけどね」
「親ってのはそういうもんだ」
僕からすれば、「火付け役を買って出たのはー。そうっなんですが、本命は姉ちゃ、姉です」
「通りで、浮かれてると思ったぜ」
「すみません」
「とりま沈んだ気分はその辺にしといて、港上がれや」
「スゥぅーぁぁぁ」
あくびで涙を漏らしながらも嫌々、降り立った。
久々に聞く、キャリーケースを引きずっていくエッジの効いていないローラーはぶつっと途切れた。
いや、正しくはかき消されたが合ってると思う。
大雑把に散らばった木々なんかから、幾つもの重く低ーい音を奏でる楽器を混ぜたみたいな感じだ。
ミーン、ミーンって。
「わぁぁ」
あっ、ここが。
「空気汚染は問題無さそうだ」
「ちょっとお父さん、気分台無し!」
「ちょ、ちょっと何するんだ!」
「これは没っ――」
そこにはまだ僕の知らない世界が広がっていた。
自然とその場で体を少し捻らせ、皮膚に爪を軽く当てて、「んんっ、ぁぁ」と、喉を鳴らし、額からこぼれ落ちてくる汗を拭って、そのまま空を見た。
おっきな雲だ。
「熱いな」
「坊主、夏は初めてか?」
「はい」
「だが、ここは片田舎の小島だ。なーんもねぇぞ」
そんな観光に運良く当選したんだ、致し方ない。それにしても、仕事中とは思えぬ身勝手っぷりだ。
映画でしか見てこなかった紙煙草を咥えてるし、スーツの皺ヨレヨレでネクタイも曲がっててだらしがない。本当に成人しているんだろうかこの人は。
「船酔いしねぇとは逞しいな」
「どうも」
こんな潮風と波音、船揺れなんて初めてだが――
「彼方の他三人と違って、な」
ごく一般的な理想な家庭図では、各々の耐性にばらつきが生まれるのは、よくある事なのだろうか。
「家族でか」
「俺は来たかった訳じゃありませんけどね」
「親ってのはそういうもんだ」
僕からすれば、「火付け役を買って出たのはー。そうっなんですが、本命は姉ちゃ、姉です」
「通りで、浮かれてると思ったぜ」
「すみません」
「とりま沈んだ気分はその辺にしといて、港上がれや」
「スゥぅーぁぁぁ」
あくびで涙を漏らしながらも嫌々、降り立った。
久々に聞く、キャリーケースを引きずっていくエッジの効いていないローラーはぶつっと途切れた。
いや、正しくはかき消されたが合ってると思う。
大雑把に散らばった木々なんかから、幾つもの重く低ーい音を奏でる楽器を混ぜたみたいな感じだ。
ミーン、ミーンって。
「わぁぁ」
あっ、ここが。
「空気汚染は問題無さそうだ」
「ちょっとお父さん、気分台無し!」
「ちょ、ちょっと何するんだ!」
「これは没っ――」
そこにはまだ僕の知らない世界が広がっていた。
自然とその場で体を少し捻らせ、皮膚に爪を軽く当てて、「んんっ、ぁぁ」と、喉を鳴らし、額からこぼれ落ちてくる汗を拭って、そのまま空を見た。
おっきな雲だ。
「熱いな」
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