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悪魔の六歩 勇者辞めます
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「普通ー子供とかだろ、来るとしても」
「え、何。もしかしてまだ子供欲しいの?」
「そりゃ、まぁな」
「へー。後悔するよ、きっと」
急に馴れ馴れしいな、此奴。
「これから何処行くつもり?」
「使い魔を探しに」
「『奴隷商まで』なんだ」
「仰る通り」
淡々と進んでいく道すがら、
「ねぇ、寄り道しない?」
「寄り道?」
「うん」
案外、上手く関係を築きつつ、ヒスロアの提案を飲んだ。
「行きたいとこでもあるのか?」
「まぁね、でも正確にはオルスの方がだけだ」
「様付けしなくていいから何か後ろに添えてくれ」
「じゃあ、クライン」
「もういいよ、オルスで」
「オルス」
「はいはい、何ですか」
「着いた」
「え?」
「移動図書館販売車」
荷馬車の末尾に魔術で巧く施された入口。
此奴の軽ーく現代にも通ずる慣れ親しんだ引き幕を開く流麗さに遅れを取らずに続き、背にくっ付いたまま見た先の光景には――。
「おぉ」
正に壮観の一言に尽きる。
味のある外観を損なわぬ紙と筆に墨の匂いにまるで引けを取らぬ売り手の寡黙な老人。
「こんな場所、あったんだな」
「ただ目を向けてこなかっただけだよ」
「当店は禁忌書物も並んでおります」
とんでも発言は勇者の立場であれば、即しょっぴいていたが、まぁ此処は目を瞑ろう。
「好きなのを選んでいいよ、今回だけは僕が特別に買ってあげるから」
「ホント? じゃ、お言葉に甘えて」
「意味もなく本を読んでも無駄だからね。学が欲しいなら、それなりの読み方でないと」
「へいへい」
「文字にはちゃんとふりがなの書かれているものにしてね」
「はいはい」
「海関係はずっと禁忌だし、覚えても何の価値も無いだろうから辞めてね」
「……」
「あと」
「あーっ、じゃあもうお前が選べよ!」
「此処も分岐点だから、自分で選ばないと」
「じゃあどうしてそんなにうるさいのよ、お前は」
「必要な工程だから。省くときっと痛い目を見る」
「料理と同じか」
「うん、多分」
「適当だねぇ」
なんやかんやありつつもどれもこれも似たり寄ったり、変わらない姿形に心も体も疲れ、導かれるように辿り着いた最終地点へ。
「……」
ふと手が伸びていた。
「これは?」
表紙を見せ、店長に問う。
「あぁ、それは魔王城に保管される一冊。初代勇者、フローズ・クライスターの本だ」
とんでもない返しがやってきた。
「こんなのどっから入手したんだよ」
「……」
都合の悪いことは無視ですか。
「便利な口だね、全く」
「それにするの?」
「あぁ、有り難く無償で頂戴させて貰うよ」
「一応言っておくけど、それレプリカだから」
「あー、まーそりゃそーか」
「うん」
「ん?」
表紙の文字が回転し、次第に靄が晴れていく。
「なんだ、コレ」
「レプリカにもこの機能はあったんだ。これはね、人によって見え方が変わるんだって」
「面白いな」
「どう? どんな感じ?」
「ん? あぁ、どれどれ」
そして俺はじっと凝視した。
あぁ。
いつの間にか掌を眺め、増えた皺に嘆息を漏らしていた。
「其処は、勇者辞めます。じゃ、ねぇのかよ」
「なんて書いてあるの?」
見たいというご様子を赤裸々に露わにし、思わず揶揄いの念を込めた悪戯でヒロの背ではまだ、届かない距離にまで高く上げれば、ぶん殴る勢いで奪い取られ、必死な熟読を。
決め込む、かと、思われた。
瞬間的に哀愁の漂う姿へと変貌した。
「どうしたんだ?」
「別に」
ただ、事実がそこに刻まれていた。
それは俺自身言わなくても分かっていたからこそ、二の矢を放つ手をそっと下ろし、呆然と立ち尽くす子を尻目に会計を済ませた。
「あぁ、そうだ。此処らに奴隷商はないか?」
「使い魔の使役でしたら、近くの市場が確か、此処から暫く道なりに歩けば着くかと」
「どうも」
「護身用ですかい」
「余計な探りを入れないのがお宅の売りだろ」
「いつの時代も馬鹿は利用されますからね」
「そろそろその口閉じねぇとこの店ごと燃やすぞ」
「ご来店、ありがとうございました」
強気の姿勢は変わらずかよ。
店を出ても尚、ご機嫌斜めは継続中。
「あんま拗ねてると置いてくぞ」
「別に良いよ。後悔するのはそっちだから」
「はぁ。今までみたいに過去に行けば……」
全部、仕組まれた出来事。なんだよな。
「まさか俺の母を殺したのも」
「それは違う」
「何だ、だったらいい」
やっと威勢が元に戻ったか。
「お父さんなら良いの?」
「あ、名誉の戦死だろう」
「そんな綺麗なものじゃないと思うけど」
「良いんだよ別に。お前にもあるだろ、これだけは嫌だっていう大切な人が」
「うん、居たよね
「へぇ、誰だ?」
「お兄ちゃん」
「そっか、お前兄弟いたんだな。.....」
いた。
「もう、居ないけど」
「今回は俺が悪かった」
「いいよ、もう。僕の兄も勇者だったから。今、背中を追いかけてるんだ、またきっと」
「ちょっと待て、お前はまだ勇者じゃないのか?」
「世間的にはそうかな」
「『世間的には』って」
まさかコイツ、本当は勇者じゃ無くて、ただ魔術が得意な悪ガキか? でも、今のもどうにも嘘には見えないし。
「まさか、運命ってのは決まってるのか?」
「さぁ」
「ま、結局は成り行きか」
「もう問い詰めなくていいの?」
「いいよ、どうせ教えてくんないんだろ」
「うん」
「って、おいおい」
「どうした、ほら行くぞ」
「どうしてこんな乱れた世の中でそんな性格でいられるの?」
「大人になると色々あんだよ。お前もいずれそうなるかもな」
「覚えていたらね」
「――。じゃ、そんなに兄貴が寂しいんなら俺がおぶってやろうか?」
「太陽で照らされたいんなら構わないよ」
「む、毟るのだけは勘弁。いや、本当に」
「なら、早く先進もうよ」
「それは、こっちの台詞なんだけどな」
また、大きなお荷物を抱え、俺は進む。
前へ。
「え、何。もしかしてまだ子供欲しいの?」
「そりゃ、まぁな」
「へー。後悔するよ、きっと」
急に馴れ馴れしいな、此奴。
「これから何処行くつもり?」
「使い魔を探しに」
「『奴隷商まで』なんだ」
「仰る通り」
淡々と進んでいく道すがら、
「ねぇ、寄り道しない?」
「寄り道?」
「うん」
案外、上手く関係を築きつつ、ヒスロアの提案を飲んだ。
「行きたいとこでもあるのか?」
「まぁね、でも正確にはオルスの方がだけだ」
「様付けしなくていいから何か後ろに添えてくれ」
「じゃあ、クライン」
「もういいよ、オルスで」
「オルス」
「はいはい、何ですか」
「着いた」
「え?」
「移動図書館販売車」
荷馬車の末尾に魔術で巧く施された入口。
此奴の軽ーく現代にも通ずる慣れ親しんだ引き幕を開く流麗さに遅れを取らずに続き、背にくっ付いたまま見た先の光景には――。
「おぉ」
正に壮観の一言に尽きる。
味のある外観を損なわぬ紙と筆に墨の匂いにまるで引けを取らぬ売り手の寡黙な老人。
「こんな場所、あったんだな」
「ただ目を向けてこなかっただけだよ」
「当店は禁忌書物も並んでおります」
とんでも発言は勇者の立場であれば、即しょっぴいていたが、まぁ此処は目を瞑ろう。
「好きなのを選んでいいよ、今回だけは僕が特別に買ってあげるから」
「ホント? じゃ、お言葉に甘えて」
「意味もなく本を読んでも無駄だからね。学が欲しいなら、それなりの読み方でないと」
「へいへい」
「文字にはちゃんとふりがなの書かれているものにしてね」
「はいはい」
「海関係はずっと禁忌だし、覚えても何の価値も無いだろうから辞めてね」
「……」
「あと」
「あーっ、じゃあもうお前が選べよ!」
「此処も分岐点だから、自分で選ばないと」
「じゃあどうしてそんなにうるさいのよ、お前は」
「必要な工程だから。省くときっと痛い目を見る」
「料理と同じか」
「うん、多分」
「適当だねぇ」
なんやかんやありつつもどれもこれも似たり寄ったり、変わらない姿形に心も体も疲れ、導かれるように辿り着いた最終地点へ。
「……」
ふと手が伸びていた。
「これは?」
表紙を見せ、店長に問う。
「あぁ、それは魔王城に保管される一冊。初代勇者、フローズ・クライスターの本だ」
とんでもない返しがやってきた。
「こんなのどっから入手したんだよ」
「……」
都合の悪いことは無視ですか。
「便利な口だね、全く」
「それにするの?」
「あぁ、有り難く無償で頂戴させて貰うよ」
「一応言っておくけど、それレプリカだから」
「あー、まーそりゃそーか」
「うん」
「ん?」
表紙の文字が回転し、次第に靄が晴れていく。
「なんだ、コレ」
「レプリカにもこの機能はあったんだ。これはね、人によって見え方が変わるんだって」
「面白いな」
「どう? どんな感じ?」
「ん? あぁ、どれどれ」
そして俺はじっと凝視した。
あぁ。
いつの間にか掌を眺め、増えた皺に嘆息を漏らしていた。
「其処は、勇者辞めます。じゃ、ねぇのかよ」
「なんて書いてあるの?」
見たいというご様子を赤裸々に露わにし、思わず揶揄いの念を込めた悪戯でヒロの背ではまだ、届かない距離にまで高く上げれば、ぶん殴る勢いで奪い取られ、必死な熟読を。
決め込む、かと、思われた。
瞬間的に哀愁の漂う姿へと変貌した。
「どうしたんだ?」
「別に」
ただ、事実がそこに刻まれていた。
それは俺自身言わなくても分かっていたからこそ、二の矢を放つ手をそっと下ろし、呆然と立ち尽くす子を尻目に会計を済ませた。
「あぁ、そうだ。此処らに奴隷商はないか?」
「使い魔の使役でしたら、近くの市場が確か、此処から暫く道なりに歩けば着くかと」
「どうも」
「護身用ですかい」
「余計な探りを入れないのがお宅の売りだろ」
「いつの時代も馬鹿は利用されますからね」
「そろそろその口閉じねぇとこの店ごと燃やすぞ」
「ご来店、ありがとうございました」
強気の姿勢は変わらずかよ。
店を出ても尚、ご機嫌斜めは継続中。
「あんま拗ねてると置いてくぞ」
「別に良いよ。後悔するのはそっちだから」
「はぁ。今までみたいに過去に行けば……」
全部、仕組まれた出来事。なんだよな。
「まさか俺の母を殺したのも」
「それは違う」
「何だ、だったらいい」
やっと威勢が元に戻ったか。
「お父さんなら良いの?」
「あ、名誉の戦死だろう」
「そんな綺麗なものじゃないと思うけど」
「良いんだよ別に。お前にもあるだろ、これだけは嫌だっていう大切な人が」
「うん、居たよね
「へぇ、誰だ?」
「お兄ちゃん」
「そっか、お前兄弟いたんだな。.....」
いた。
「もう、居ないけど」
「今回は俺が悪かった」
「いいよ、もう。僕の兄も勇者だったから。今、背中を追いかけてるんだ、またきっと」
「ちょっと待て、お前はまだ勇者じゃないのか?」
「世間的にはそうかな」
「『世間的には』って」
まさかコイツ、本当は勇者じゃ無くて、ただ魔術が得意な悪ガキか? でも、今のもどうにも嘘には見えないし。
「まさか、運命ってのは決まってるのか?」
「さぁ」
「ま、結局は成り行きか」
「もう問い詰めなくていいの?」
「いいよ、どうせ教えてくんないんだろ」
「うん」
「って、おいおい」
「どうした、ほら行くぞ」
「どうしてこんな乱れた世の中でそんな性格でいられるの?」
「大人になると色々あんだよ。お前もいずれそうなるかもな」
「覚えていたらね」
「――。じゃ、そんなに兄貴が寂しいんなら俺がおぶってやろうか?」
「太陽で照らされたいんなら構わないよ」
「む、毟るのだけは勘弁。いや、本当に」
「なら、早く先進もうよ」
「それは、こっちの台詞なんだけどな」
また、大きなお荷物を抱え、俺は進む。
前へ。
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