勇者辞めます

緑川

文字の大きさ
17 / 27

殆どが兄ちゃん話 あぁ、うん。もうそろそろいいかな

しおりを挟む
 暴れ馬が凹凸激しき悪路を突き進んでいる筈なのだがとても優しい内装は心をも癒し、振動皆無の高度な運転技術が不満を僅かに。

 あの野郎、馬車があるんなら初めっから出しとけよな。

「何から何まで尽くして頂き、感謝しきれません。このご恩は――」

「構いませんよ。彼にとっては仕事の一環、私はただの憑き物に過ぎませんので」

 突然の敬語口調を前に人間性を疑い出したのか龍特有の目の色と輝きの強弱が変わり、

「俺はね、嬉しいんですよ」

「?」

「人の幸福でも誰かの親と似た人と会えて、甘えたり想いを伝えられたりするのが……」

「?」

「今は皆目わからないでしょうが、真実を知ればきっと御喜びになるでしょうね」

「?」

 一辺倒か。少しは聞いてくるだろ、普通。

 間。

「リュウの話はご存知ですか」

「それは何方の意味で」

 からの、ピリつく空気が外の風景も淀ます。

「祝福の神龍。呪いの竜族」

 と。

「えぇ、まぁ」
婆さんが懐かしい話題、振ってきやがった。

「我々は古くから世界に愛されてきました。しかし、初代から伝わる虹龍の因子を持つ、唯一の種族。貴方を畏怖の対象としていた」

「感想をお求めで?」

「心情によります」

「なるほど」

 どう答えるのが正解か、悩むねぇ。

「そうだな。正しく言えば嫌だった。かな」

「詳しくお聞かせ願えますか」

「俺らは、父を含めた先祖代々の人々は真っ当な生き様で生涯を終えたと心得ています」

「ですが、両家共に何らかの理由で歴史に名を残し、賞賛と非難の的になっている現状」

「つまり?」

 無表情で俺を凝視したまま沈黙で応える。

「ハァ。理想の言葉を聞けないのは残念でしょうが、俺の思っていることなら今から正直に答えますよ」

「……」

「きっと暇つぶしを欲した屑か、敵対勢力が陰謀論として流した噂に過ぎない。でも、運悪く世界中に伝染し、常識になっちまった」

「呪われたから化け物にされた。あんたらと違って一歩目から周りに振り回されてばかりだよ。お陰で神も占いも信じた試しがない」

 悪魔は信じてるがな。

「本音を聞けて嬉しい限りです」

「それは良かった。……俺にも少し前まで、少ないながらも友人がいたんですよ。其奴はね、呪いの竜に初めてこう言ったんですよ」

 ほんの少し、空を向いて。

「『君は呪いの竜かい?』って、疑いの念を掛けてくれた」

 不思議と彼女は異常なまでに瞳孔を開く。

 も、続けて、

「疑いは信用への第一歩だ」

 そう豪語すると同時、馬車が止まったみたいだ。

「貴方も、決してそれを悪だと思わないで」

 と、体がむず痒くなる捨て台詞を吐いて、その場から過ぎ去った。

「休憩か」

「いや」

 不穏な空気を察知したのか周りを見つつ、
「これからどうする」を軽くあしらってく。

「もう既に見張りの線に触れた」

「あ?」

 野郎共が砂埃から飛び出してきやがった。

「敵のお出ましか」

「っていうか、さっきの後付けだよね」

「細いことは良いんだよ」

「その甘さ、捨てるなら今のうちだよ」

 うるせぇよ、もう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。

幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜

犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。 これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。

足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました

ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」 優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。 ――僕には才能がなかった。 打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...