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最後 青天の霹靂
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真っ白な鳥が空を切り裂いて飛び立った。
優雅のように見えて必死な羽撃く姿を目で追っていく道すがら、今更ながらの新事実。
暁色した下向きに靡くアホ毛を見つける。
そう、
「ぇ」
皆が冥暗を真っ向に目の当たりにする中、ヒスロア君だけが地面を直視していたのです。
……。
「もし魔法を使ったらどうなるんだ」
「身体が壊れると思う」
「それでもいざとなったら」
「オルスがこの前、見せてくれたあの魔法はね、初代勇者――フローズ・クライスターが世界に人が住めるよう放ったモノなんだ」
これ見よがしに緩やかに両の掌を重ね……
見せれば、良い事が。
乾いた音が合間に走った瞬間、身体から淡く消え入りそうな神蝶の群れが飛び立った。
心なしか、果てしない逆鱗に触れたような。
益々、勢いを増して此方へ向かってぇ、何ならさっきより意志を持ってる気さえする。
宇宙規模の存在に為す術などある筈もなく、ぼーっと大空を見上げることに全てを、
剣を落として、
見ることしかできなかった。
でも俺よりも幼く未熟な少年は前へ出て、自らの耳を躊躇いなく根本から肉を裂く、嫌な音を立てて引きちぎり、煌びやかな光学電子魔道機器を耳に当て嵌め、磁場を読んだ。
そして、同じく両手を重ね合わせ、祈った。
「ア、マっ……照ッッ‼︎」
知らぬ神の名だ。
だが、全てを包み込んでくれそうだ。
今、こっちに迫ってくる。
「ゴゴゴ」
地平線の彼方に蜃気楼となって浮かぶ、山に谷間を作り出しそうなどデカい大雷をも。
でも、それ以上にヒロの背中は大きくて、俺は何倍も小さくって、見てられなかった。
非常に落ち着いている。
お前はまさか。
あぁ。
あの時、小さな勇者と出会ったと思っていたが本当に小さいのは俺の方だったんだな。
そんで真っ白な空間に解き放たれた。
いや、どこここ。
「今はまだ落雷を衝撃と天照の加護の中だよ」
「嘘だろ、おい」
「……もう、だね」
「あぁ、いやぁ早かったなぁ。もっとうまくやれたと思うんだけど」
「本当はね、別の道もあったんだ」
「そっかぁ、でもまだ何も終わってねぇな」
「人の生き様はそんなに美しくない」
「ですか」
ヒロは会話の隙間に乗じてキラキラ光る何かと虹色の花びらみたいなのを鞄に仕舞い、そん中から一つのグロテスクを取り出した。
「これ、覚えてる」
生首兜。草臥れた青年だ。
「誰だっけ」
口に加えた身分証、相当な実力者だな。
「もし、革命が始まるんならどうする?」
「いや、もう戻れそうにないんだ」
「本当は此処から先、4代目の魔王と出会って配下になるとか、自分の分身に負けるとか、色々選択するんだけどね、……もう諦めた」
「はは、俺がか。めちゃ気になるな」
「あぁそういやさ、お前も移民だったんだな」
「うん」
「でもな、お前の兄の為に尽くす姿は立派だと思うんだよ。だから話せば良い奴も居ると俺は信じてる。なぁ、もう辞めにしないか」
「僕は進まなきゃ」
「そうだな」
これがコイツとの最後の沈黙だ。
案外、悪くないもんだな。
そして別れの挨拶まで暴力的に、俺も痛みに悶えることなく過ぎ去る背を目で追った。
何処かへ、故郷にでも帰るのだろうか。
祖先とも離れ離れだし、本当の目的は知らず終いだったが、いつになく彼奴のホッとした素顔にそれもうやむやに出来てしまった。
「なぁ! 俺、少しは大人になったかな?」
問えば、返ってくる。
今となれば、そうわかっていたんだと思う。
「振り返れば、きっと」
その答えに迷いはなかった。
さぁ、行こうか。
最後の分かれ道へ。
あっさり辿り着く。
まるで俺のために作られたような一本道。
噂じゃ此処は近年稀に見る、希少な水田だったと聞いていたが、もう埋められていた。
ずっと地平線の彼方まで続く野原の先、当然、俺を迎えたのは怒りのメリスのだった。
「よう」
「こうして貴様と一対一で対面するのはいつぶりだろうな」
「さっきぶりだよ」
「そうか、ではもうこれも終わりにしよう」
「ま、そうだよな」
頭を軽ーく掻きながら、自らを頷かせて、
「じゃケリつけっか」
五体満足、フルアーマーが身構える中で、俺は悠々自適な歩みでその横を突っ切った。
「っ!」
「じゃあな」
肩にそっと、一瞬の手を添え終えて。
意表を突かれたのか僅かに怯みつつも直様包囲網を広げ直し、意外にも優しめな手の網に捉えられ、囚われの身となってしまった。
「お前、まさか逃げるのか⁉︎」
「見ろよ、俺はこの通り、手ぶらだ。剣もねぇ俺には戦闘で何かを主張する権利も資格もねぇんだよ」
「なら、せめて言葉だけでも抗って見せろ!」
「無理だよ。知ってるだろ? 俺、口喧嘩弱いから、どうせお前には負けるよ」
今にも泣きじゃくりそうなくらいに顔を歪ませてるし、必死に引き留めてくるよ、この人。もう何がしたいの。
「来い! 俺を殺しに‼︎」
「だから無理なんだって」
「何故だ、何故いつもお前は、そう……」
「泣くなよ」
「泣いてないっ」
「じゃあ顔上げろ」
「ぁぁ、ぁ」
嫌な一言だ。
「うっ」
次にメリスを目にした時にはその予感は的中していて、咄嗟に伸ばされた手は俺を突き飛ばし、瞬いた眼前には胸を貫かれた姿が。
「あと一歩、届かず終いですか。気配は殺した筈ですが」
「ダダ漏れだ」
最期まで変わらない奴だ。
あぁ、なんだろうか。
この感覚は。
嬉しい? それとも悔しいのか?
そんなのとは違う、何かが。
「行け」
「え?」
次第に真っ白に色が死んでいく瞳は変なふうにひしゃげた俺を映していて、誰のかもわからない掠れた声が次々と放たれていった。
「行けっ!」
俺には進むことしかできない。
俺にしか辿り着けない場所へ。
また、歩き出した。
背を向かずに。
もう少しでゴールだ。
優雅のように見えて必死な羽撃く姿を目で追っていく道すがら、今更ながらの新事実。
暁色した下向きに靡くアホ毛を見つける。
そう、
「ぇ」
皆が冥暗を真っ向に目の当たりにする中、ヒスロア君だけが地面を直視していたのです。
……。
「もし魔法を使ったらどうなるんだ」
「身体が壊れると思う」
「それでもいざとなったら」
「オルスがこの前、見せてくれたあの魔法はね、初代勇者――フローズ・クライスターが世界に人が住めるよう放ったモノなんだ」
これ見よがしに緩やかに両の掌を重ね……
見せれば、良い事が。
乾いた音が合間に走った瞬間、身体から淡く消え入りそうな神蝶の群れが飛び立った。
心なしか、果てしない逆鱗に触れたような。
益々、勢いを増して此方へ向かってぇ、何ならさっきより意志を持ってる気さえする。
宇宙規模の存在に為す術などある筈もなく、ぼーっと大空を見上げることに全てを、
剣を落として、
見ることしかできなかった。
でも俺よりも幼く未熟な少年は前へ出て、自らの耳を躊躇いなく根本から肉を裂く、嫌な音を立てて引きちぎり、煌びやかな光学電子魔道機器を耳に当て嵌め、磁場を読んだ。
そして、同じく両手を重ね合わせ、祈った。
「ア、マっ……照ッッ‼︎」
知らぬ神の名だ。
だが、全てを包み込んでくれそうだ。
今、こっちに迫ってくる。
「ゴゴゴ」
地平線の彼方に蜃気楼となって浮かぶ、山に谷間を作り出しそうなどデカい大雷をも。
でも、それ以上にヒロの背中は大きくて、俺は何倍も小さくって、見てられなかった。
非常に落ち着いている。
お前はまさか。
あぁ。
あの時、小さな勇者と出会ったと思っていたが本当に小さいのは俺の方だったんだな。
そんで真っ白な空間に解き放たれた。
いや、どこここ。
「今はまだ落雷を衝撃と天照の加護の中だよ」
「嘘だろ、おい」
「……もう、だね」
「あぁ、いやぁ早かったなぁ。もっとうまくやれたと思うんだけど」
「本当はね、別の道もあったんだ」
「そっかぁ、でもまだ何も終わってねぇな」
「人の生き様はそんなに美しくない」
「ですか」
ヒロは会話の隙間に乗じてキラキラ光る何かと虹色の花びらみたいなのを鞄に仕舞い、そん中から一つのグロテスクを取り出した。
「これ、覚えてる」
生首兜。草臥れた青年だ。
「誰だっけ」
口に加えた身分証、相当な実力者だな。
「もし、革命が始まるんならどうする?」
「いや、もう戻れそうにないんだ」
「本当は此処から先、4代目の魔王と出会って配下になるとか、自分の分身に負けるとか、色々選択するんだけどね、……もう諦めた」
「はは、俺がか。めちゃ気になるな」
「あぁそういやさ、お前も移民だったんだな」
「うん」
「でもな、お前の兄の為に尽くす姿は立派だと思うんだよ。だから話せば良い奴も居ると俺は信じてる。なぁ、もう辞めにしないか」
「僕は進まなきゃ」
「そうだな」
これがコイツとの最後の沈黙だ。
案外、悪くないもんだな。
そして別れの挨拶まで暴力的に、俺も痛みに悶えることなく過ぎ去る背を目で追った。
何処かへ、故郷にでも帰るのだろうか。
祖先とも離れ離れだし、本当の目的は知らず終いだったが、いつになく彼奴のホッとした素顔にそれもうやむやに出来てしまった。
「なぁ! 俺、少しは大人になったかな?」
問えば、返ってくる。
今となれば、そうわかっていたんだと思う。
「振り返れば、きっと」
その答えに迷いはなかった。
さぁ、行こうか。
最後の分かれ道へ。
あっさり辿り着く。
まるで俺のために作られたような一本道。
噂じゃ此処は近年稀に見る、希少な水田だったと聞いていたが、もう埋められていた。
ずっと地平線の彼方まで続く野原の先、当然、俺を迎えたのは怒りのメリスのだった。
「よう」
「こうして貴様と一対一で対面するのはいつぶりだろうな」
「さっきぶりだよ」
「そうか、ではもうこれも終わりにしよう」
「ま、そうだよな」
頭を軽ーく掻きながら、自らを頷かせて、
「じゃケリつけっか」
五体満足、フルアーマーが身構える中で、俺は悠々自適な歩みでその横を突っ切った。
「っ!」
「じゃあな」
肩にそっと、一瞬の手を添え終えて。
意表を突かれたのか僅かに怯みつつも直様包囲網を広げ直し、意外にも優しめな手の網に捉えられ、囚われの身となってしまった。
「お前、まさか逃げるのか⁉︎」
「見ろよ、俺はこの通り、手ぶらだ。剣もねぇ俺には戦闘で何かを主張する権利も資格もねぇんだよ」
「なら、せめて言葉だけでも抗って見せろ!」
「無理だよ。知ってるだろ? 俺、口喧嘩弱いから、どうせお前には負けるよ」
今にも泣きじゃくりそうなくらいに顔を歪ませてるし、必死に引き留めてくるよ、この人。もう何がしたいの。
「来い! 俺を殺しに‼︎」
「だから無理なんだって」
「何故だ、何故いつもお前は、そう……」
「泣くなよ」
「泣いてないっ」
「じゃあ顔上げろ」
「ぁぁ、ぁ」
嫌な一言だ。
「うっ」
次にメリスを目にした時にはその予感は的中していて、咄嗟に伸ばされた手は俺を突き飛ばし、瞬いた眼前には胸を貫かれた姿が。
「あと一歩、届かず終いですか。気配は殺した筈ですが」
「ダダ漏れだ」
最期まで変わらない奴だ。
あぁ、なんだろうか。
この感覚は。
嬉しい? それとも悔しいのか?
そんなのとは違う、何かが。
「行け」
「え?」
次第に真っ白に色が死んでいく瞳は変なふうにひしゃげた俺を映していて、誰のかもわからない掠れた声が次々と放たれていった。
「行けっ!」
俺には進むことしかできない。
俺にしか辿り着けない場所へ。
また、歩き出した。
背を向かずに。
もう少しでゴールだ。
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