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酸と本 二代勇者の口喧嘩
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背に外套を羽織り、鎧には黒き光が輝く。
「本気で殺るか」
完全体は何年ぶりかな。疲れんの苦手なんだが。
そう独り言を午後のティータイムのように興じる隙を見逃さず、信徒は胸を貫きやがる。
血か、絶妙に環境に寄り添った立場だな。
「元勇者殿を血を吸いになられる花々は、果たしてどのような芽を咲かすのですかな?」
「黙れ」
「ほう」
不敵な笑みは陰る。旧友らの影によって。
けれども敵か味方か、背から迫った獲物を早技で両手に抱え切れんばかりに奪い取り、祈る道から外れた出癖の悪さを披露された。
「⁉︎」
直様、指先に走った空虚な違和感を覚えたようで……順々に様々な反応を見せていく。
「なっ」
「あれ」
「こんな物、我々の愛する星にあってはならない」
と、武器を地面に落とす度、磨かれた一級品が朽ちていくと同時に清らかに花を咲かす。
「ろくな芽ぇ開かねえぞ」
「では、共に見守りますかな?」
「命に換えてもお断りだ」
先刻、背後を取った信奉者Bを準備体操がてら首根っこ捕まえて手玉に取り、先っぽの一太刀で陸地で溺れさせる。
「ぁぁ」
噴き出す血飛沫は頬に触れんばかりの勢いだ。
「辛いんだろ、わかるよ」
苦しみに踠く様は神も仏も信じてやまない異様な光景と同等にお粗末な瞬間であった。
おまけに、
「古くに四代目の精錬した旧版の鎧を使用。剣も同様に最高峰の金属を用いた十字架で」「――絶え絶えぇ。だぜ、無理すんな。って」
「死など疾うに通り過ぎた事」
「だったら二度、死ね」
真っ赤な刃が出来上がり、一番の口数を誇る半端な訓練で導きを示したトップを襲う。
もうやめにしないか。
剣が魂を吸う度に口にしてきた言葉だが、最早――意味のないことなのかもしれない。
「じゃあな」
これもあれも必要なことだ。
そうだ、きっとそうなんだよ。
「っ‼︎」
大雑把な一撃は確実に胸を穿つ。
予定をぶち壊しにする、一つの手。
自分でも閉じてんのかわかんねぇ目でも捉えきれない速さで差し伸べられたようにも、
「よせ」
突き放すが為の一手にも見えてならない。
「お前は」
こんな新人紛いの野郎が止めたのか?
ピクリとも動かねぇ。
それは明らかに人殺しの目だ。
「四代目。貴様の宿敵だろう」
「っ‼︎ 何故、お前が……ッ」
純白ローブのフードから垣間見えるのは、精巧な人形に鏤めた宝石が落ちたような顔。
想像していた凍てつく眼差しとは程遠く、土砂降りの豪雨に捨てられた仔猫がぐしゃぐしゃな光景のような尽きぬ憐れみを向ける。
「消えろぉ‼︎」
「それは叶わぬ相談だ」
奴は輪廻転生していたんだ。
大して特別でもない存在に。
「これはあくまで一時的な憑依に過ぎない。どうか誤解せぬように踏まえて頂きたい」
「そこまでして、俺に……俺に何の用だ!」
「嘆願を申したく馳せ参じた所存。無論――当代の意志にも沿った形で終えるつもりだ」
「死人は黙って墓に戻れ」
一字一句に溜めを要した重い怒号を放ち、今正に振り翳さんとせん切先を寄り添える。
「私を殺すか? それで気が済むのならば、思う存分に過去の労力分を費やすといい」
「あぁ、言われなくともそのつもりだ」
一旦、かなり伸ばされた距離を縮めていく。
「だが、仮の身を拝借する以上、傷付ける訳にはいかない」
「御託はいい。お前に身を貸したが運の尽きだ」
「四代目に死への恐れはありません。生前、左腕を任せた人間は相対していましたがね」
「何?」
「過去の感傷に浸るつもりはない。選択に誤りがあった。故に命を落としたに過ぎない」
「ぉい」
「ですが、貴方様は先におりました」
「其処へ手招く姿は死神に見えたのだろう」
「おい」
「我々は何処までもお側に」
「すまないな」
「いえ」
「おいっ!」
一方通行に飛び交う会話に終止符を打ち、戯言に花咲かす農家野郎に睨みを効かせて、実質的な先代との感動的な出会いに改めて。
「お前は何の為に来たんだ」
「前職へ戻って貰わなくてはならない。故に」
「代わりなんていくらでもいるだろうがぁ。あいつだって、まさに――」
「いや、お前にしか出来ない」
「なんでだ!」
「皆、勇者になる者は必ず先代の背を追っている」
剣を握る手が震えた。
「ふっ、ふざけるなぁ!」
「これが運命だ。ただ……幻想的な夢から残酷な現実に変貌した。直視した結果なんだ」
「違う、俺は。違う!」
「此奴は兄者を」
ヒロを指し、
「私は先達を」
自らを指し、
「そして、貴様は私を」
「ありえない」
「恐らく父の背中越しに見ていたのだろう」
脱力感で力んだ指先が解け、刃が落ちた。
「だって、ずっと。だから!」
こんな俺を終始、周りは見守り続けていた。
「ふざけるな。なんで…………そうあれる」
答えはずっと沈黙だ。
「おれは」
その瞬間、世界はまた暗闇に閉ざされた。
「本気で殺るか」
完全体は何年ぶりかな。疲れんの苦手なんだが。
そう独り言を午後のティータイムのように興じる隙を見逃さず、信徒は胸を貫きやがる。
血か、絶妙に環境に寄り添った立場だな。
「元勇者殿を血を吸いになられる花々は、果たしてどのような芽を咲かすのですかな?」
「黙れ」
「ほう」
不敵な笑みは陰る。旧友らの影によって。
けれども敵か味方か、背から迫った獲物を早技で両手に抱え切れんばかりに奪い取り、祈る道から外れた出癖の悪さを披露された。
「⁉︎」
直様、指先に走った空虚な違和感を覚えたようで……順々に様々な反応を見せていく。
「なっ」
「あれ」
「こんな物、我々の愛する星にあってはならない」
と、武器を地面に落とす度、磨かれた一級品が朽ちていくと同時に清らかに花を咲かす。
「ろくな芽ぇ開かねえぞ」
「では、共に見守りますかな?」
「命に換えてもお断りだ」
先刻、背後を取った信奉者Bを準備体操がてら首根っこ捕まえて手玉に取り、先っぽの一太刀で陸地で溺れさせる。
「ぁぁ」
噴き出す血飛沫は頬に触れんばかりの勢いだ。
「辛いんだろ、わかるよ」
苦しみに踠く様は神も仏も信じてやまない異様な光景と同等にお粗末な瞬間であった。
おまけに、
「古くに四代目の精錬した旧版の鎧を使用。剣も同様に最高峰の金属を用いた十字架で」「――絶え絶えぇ。だぜ、無理すんな。って」
「死など疾うに通り過ぎた事」
「だったら二度、死ね」
真っ赤な刃が出来上がり、一番の口数を誇る半端な訓練で導きを示したトップを襲う。
もうやめにしないか。
剣が魂を吸う度に口にしてきた言葉だが、最早――意味のないことなのかもしれない。
「じゃあな」
これもあれも必要なことだ。
そうだ、きっとそうなんだよ。
「っ‼︎」
大雑把な一撃は確実に胸を穿つ。
予定をぶち壊しにする、一つの手。
自分でも閉じてんのかわかんねぇ目でも捉えきれない速さで差し伸べられたようにも、
「よせ」
突き放すが為の一手にも見えてならない。
「お前は」
こんな新人紛いの野郎が止めたのか?
ピクリとも動かねぇ。
それは明らかに人殺しの目だ。
「四代目。貴様の宿敵だろう」
「っ‼︎ 何故、お前が……ッ」
純白ローブのフードから垣間見えるのは、精巧な人形に鏤めた宝石が落ちたような顔。
想像していた凍てつく眼差しとは程遠く、土砂降りの豪雨に捨てられた仔猫がぐしゃぐしゃな光景のような尽きぬ憐れみを向ける。
「消えろぉ‼︎」
「それは叶わぬ相談だ」
奴は輪廻転生していたんだ。
大して特別でもない存在に。
「これはあくまで一時的な憑依に過ぎない。どうか誤解せぬように踏まえて頂きたい」
「そこまでして、俺に……俺に何の用だ!」
「嘆願を申したく馳せ参じた所存。無論――当代の意志にも沿った形で終えるつもりだ」
「死人は黙って墓に戻れ」
一字一句に溜めを要した重い怒号を放ち、今正に振り翳さんとせん切先を寄り添える。
「私を殺すか? それで気が済むのならば、思う存分に過去の労力分を費やすといい」
「あぁ、言われなくともそのつもりだ」
一旦、かなり伸ばされた距離を縮めていく。
「だが、仮の身を拝借する以上、傷付ける訳にはいかない」
「御託はいい。お前に身を貸したが運の尽きだ」
「四代目に死への恐れはありません。生前、左腕を任せた人間は相対していましたがね」
「何?」
「過去の感傷に浸るつもりはない。選択に誤りがあった。故に命を落としたに過ぎない」
「ぉい」
「ですが、貴方様は先におりました」
「其処へ手招く姿は死神に見えたのだろう」
「おい」
「我々は何処までもお側に」
「すまないな」
「いえ」
「おいっ!」
一方通行に飛び交う会話に終止符を打ち、戯言に花咲かす農家野郎に睨みを効かせて、実質的な先代との感動的な出会いに改めて。
「お前は何の為に来たんだ」
「前職へ戻って貰わなくてはならない。故に」
「代わりなんていくらでもいるだろうがぁ。あいつだって、まさに――」
「いや、お前にしか出来ない」
「なんでだ!」
「皆、勇者になる者は必ず先代の背を追っている」
剣を握る手が震えた。
「ふっ、ふざけるなぁ!」
「これが運命だ。ただ……幻想的な夢から残酷な現実に変貌した。直視した結果なんだ」
「違う、俺は。違う!」
「此奴は兄者を」
ヒロを指し、
「私は先達を」
自らを指し、
「そして、貴様は私を」
「ありえない」
「恐らく父の背中越しに見ていたのだろう」
脱力感で力んだ指先が解け、刃が落ちた。
「だって、ずっと。だから!」
こんな俺を終始、周りは見守り続けていた。
「ふざけるな。なんで…………そうあれる」
答えはずっと沈黙だ。
「おれは」
その瞬間、世界はまた暗闇に閉ざされた。
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