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分かっても怖い話
畑
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最近、食品高騰に伴う故郷の異なる野菜泥棒が此処らでも頻発し、親しい知人からも忠告を受けた。
絶対に深夜には外に出るなと。
家の周りには出勤やら散歩道には小さくとも立派な畑があちこちに見当たり、収穫時期も近かった。
自由の束縛に抑圧された旺盛な食欲が目を凝らせば星の見える時間に俺をコンビニへと駆り立てた。
ルンルン気分で寂しさの谺する閑散とした夜道を軽やかなステップを刻み、トントン拍子に帰路に着く。
我が家を巣作る建物の影の見える裏ルート。
左手には管理人が趣味で作ったであろうやや大きめの意外な人気を博する家庭菜園をふと眺めれば、誰かいた。
曖昧な人影が一つ。
そして、俺と目が合った。
ビニール袋片手に立ち尽くす自分と声も掛けずにじっとこっちを凝視する存在に思わず息を呑んだ。
間。
ふと目の前のコンクリートの壁越しに身を寄せ、今更ながらにスマホも取り出す事なく息を潜めた。
次第に近づいていく足音にゆっくりと見上げるだけの己に憤りを感じても、それ以外、今の俺には為す術がなく、ただその時を待ち、それは訪れた。
綺麗な星空の下に不定形な真っ黒な影が落ちた。
俺は、瞬間。
口走る。
「こ、こんばんは」
声に僅かな戸惑いを見せたのはこの暗闇でも明らかで、幸運にも挨拶は功を奏して見逃してくれた。
あれは、幽霊だったのだろうか。
今はまだ、俺にはわからない。
だが、今日食べたアイスが何よりも美味かったのは、きっとこれから先も変わらないだろう。
絶対に深夜には外に出るなと。
家の周りには出勤やら散歩道には小さくとも立派な畑があちこちに見当たり、収穫時期も近かった。
自由の束縛に抑圧された旺盛な食欲が目を凝らせば星の見える時間に俺をコンビニへと駆り立てた。
ルンルン気分で寂しさの谺する閑散とした夜道を軽やかなステップを刻み、トントン拍子に帰路に着く。
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左手には管理人が趣味で作ったであろうやや大きめの意外な人気を博する家庭菜園をふと眺めれば、誰かいた。
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そして、俺と目が合った。
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間。
ふと目の前のコンクリートの壁越しに身を寄せ、今更ながらにスマホも取り出す事なく息を潜めた。
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