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分かると怖い話
感情
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今日は新作ゲームソフトの発売日だ。
気分良く帰宅ラッシュの波に飲まれる事なく皆が酔狂に中、残業に明け暮れる定時帰りを決め込み、ゲームソフト販売店に訪れ、僅か数分足らずで目的の物にのみ一直線で迷いを捨てて掴み取り、退却。
手付かずの愛すべき代物を皺無き袋に激しく回し、心弾ませる気持ちを周囲に振り撒き、引かせる恥ずかしい自分と路線以外そう変わらぬ輩が前に。
未熟な女性に異常な執着を見せる、所謂、ストーカーに振り回されている光景を目の当たりにした。
願わくば、動かなくなるまで甲に野郎の皮膚が付着した拳を振り翳す姿を篤と目に焼き付けたかったが、ムードを壊す障害にぶち当たる方が先だろう。
やだやだ。
一歩、一歩と大股で闊歩する毎に限りなく現状を穏便に済ませる巧みな動作を進めていき、終える。
数秒足らずで被害者の安全と獣の隔離に成功し、喧嘩を吹っ掛けられる前に彼女を人通りの多い場所まで引っ張り、名も口にせずにその場を後にした。
別に責任逃れがしたかった訳じゃない、決して。
あれ以降、両者にどのような結末が迎えたのか、映画並みの感動を与える最高の傑作に夢中な俺には知る由もない。しかし……他の方々は違うようで。
糞上司のバック宣言に最下級の己が身は生ける屍となりながら、最前線に身を投じることとなった。
よりによってクライマックス一歩手前、完全に熱が冷め、別方向に湧き上がる感情を抑えつつ進む。
いつものルート、背景はお馴染みの灰一色で。
この矛先がゲームで見た投獄に向かわぬよう、ぶつぶつと浄化の呪文を穢れた身体に唱えている時、何処に目を付け、親の教育を受けたかも定かではない人とは思えない生物と肩がぶつかった気がした。
当然、後ろに目も付いていないので、相手がどんな表情を浮かべているか皆目見当付かないうちに社会人必須の荒技、お得意の平謝りを連打し、退散。
あらゆる面で不利な状況下、勝てない相手に無理な戦闘を強いる必要性も感じず、地獄の場に着いた。
それからの記憶は全くない。
気付けば、我が家に無事、帰還していた。
だが、明らかに奪われた時間と根こそぎ持っていかれた体力を代償に、雀の涙の報酬が未来の我が元と降らんのはそれ程間違い無いのだろうが、些か、満足の行かない心の拠り所、目の保養としてまだゲームに再参戦への序章に過ぎぬアナウンサーで目を補おうとテレビを付ければまた物騒な事件が――。
いや、どうやら未遂で終わったらしい。
何々、某道で警官に職質を掛けられた男が刃物を所持、理由は奪われた恨みを持っての行動だとの事。
その気持ち、十二分に理解出来るが殺しはやり過ぎ。
本来、模範的な回答で咎められないのは、俺の良心が心労でぶっ倒れているのに他ならないだろう。
ん?
急激に酔いが覚めた。
なぜか、身に覚えのある背格好に、姿形。
パトカーに突っ込まれる際の無様な顔面。
最後の不貞腐れた表情までもがそっくりに描かれている。
今、点と点と点が線で繋がった。気がする。
これは悪夢なのか、そうなのか? 否、死を回避した現実だ。
でも。なんで。
もし、あの時、俺だと気が付いていれば。
それから先、感情が動くことはなかった。
気分良く帰宅ラッシュの波に飲まれる事なく皆が酔狂に中、残業に明け暮れる定時帰りを決め込み、ゲームソフト販売店に訪れ、僅か数分足らずで目的の物にのみ一直線で迷いを捨てて掴み取り、退却。
手付かずの愛すべき代物を皺無き袋に激しく回し、心弾ませる気持ちを周囲に振り撒き、引かせる恥ずかしい自分と路線以外そう変わらぬ輩が前に。
未熟な女性に異常な執着を見せる、所謂、ストーカーに振り回されている光景を目の当たりにした。
願わくば、動かなくなるまで甲に野郎の皮膚が付着した拳を振り翳す姿を篤と目に焼き付けたかったが、ムードを壊す障害にぶち当たる方が先だろう。
やだやだ。
一歩、一歩と大股で闊歩する毎に限りなく現状を穏便に済ませる巧みな動作を進めていき、終える。
数秒足らずで被害者の安全と獣の隔離に成功し、喧嘩を吹っ掛けられる前に彼女を人通りの多い場所まで引っ張り、名も口にせずにその場を後にした。
別に責任逃れがしたかった訳じゃない、決して。
あれ以降、両者にどのような結末が迎えたのか、映画並みの感動を与える最高の傑作に夢中な俺には知る由もない。しかし……他の方々は違うようで。
糞上司のバック宣言に最下級の己が身は生ける屍となりながら、最前線に身を投じることとなった。
よりによってクライマックス一歩手前、完全に熱が冷め、別方向に湧き上がる感情を抑えつつ進む。
いつものルート、背景はお馴染みの灰一色で。
この矛先がゲームで見た投獄に向かわぬよう、ぶつぶつと浄化の呪文を穢れた身体に唱えている時、何処に目を付け、親の教育を受けたかも定かではない人とは思えない生物と肩がぶつかった気がした。
当然、後ろに目も付いていないので、相手がどんな表情を浮かべているか皆目見当付かないうちに社会人必須の荒技、お得意の平謝りを連打し、退散。
あらゆる面で不利な状況下、勝てない相手に無理な戦闘を強いる必要性も感じず、地獄の場に着いた。
それからの記憶は全くない。
気付けば、我が家に無事、帰還していた。
だが、明らかに奪われた時間と根こそぎ持っていかれた体力を代償に、雀の涙の報酬が未来の我が元と降らんのはそれ程間違い無いのだろうが、些か、満足の行かない心の拠り所、目の保養としてまだゲームに再参戦への序章に過ぎぬアナウンサーで目を補おうとテレビを付ければまた物騒な事件が――。
いや、どうやら未遂で終わったらしい。
何々、某道で警官に職質を掛けられた男が刃物を所持、理由は奪われた恨みを持っての行動だとの事。
その気持ち、十二分に理解出来るが殺しはやり過ぎ。
本来、模範的な回答で咎められないのは、俺の良心が心労でぶっ倒れているのに他ならないだろう。
ん?
急激に酔いが覚めた。
なぜか、身に覚えのある背格好に、姿形。
パトカーに突っ込まれる際の無様な顔面。
最後の不貞腐れた表情までもがそっくりに描かれている。
今、点と点と点が線で繋がった。気がする。
これは悪夢なのか、そうなのか? 否、死を回避した現実だ。
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