最愛の敵

ルテラ

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アデリア戦

25話 ヴォラク

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 食堂で食事をする。
「ワタチこれ好き!」
「そうよかったね」
 セリアがアンノの口元を拭きながら言う。
「お姉ちゃんは何が好き?」
「・・・」
「ラズリ」
 レオが腕を揺さぶる。
「ん?あぁ、そうか」

「じゃあ何かあったら連絡するよ」
 ライは帰路につく。
「私ももう少し調べてみる」
 セリアも帰る。
「頼んだ」
「バイバイ、お姉ちゃん、お兄ちゃん」
「バイバイ」
 セリア、ライは手を振るう。

「皆さんお風呂の用意が整いました」
「ありがとうございます」
「お姉ちゃん一緒に入ろ」
「仕事が残ってる。アイシャと入ってくれ」
「アシーちゃん行きましょう」
 アイシャが手を伸ばす。
「わかった」
 少しガッカリする。
 2人は風呂へ向かう。
「少し冷たくないか?ラズリ」
 フィールがラズリの背中を見て言う。
「他人を甘やかしている所を見たことがあるか?」
「そうだが・・・」
「部屋に戻る」
「ラズリさんは小さい子が苦手なんですか?」
 ラズリの背中を見ながらトートが尋ねる。
「子供というか人自体が苦手なんです。俺達も行きましょう」
 ラズリは部屋に戻るとドアに体を預けるしゃがみ込む。

ー一週間前ー
「そうか。死ぬか?」
「死ぬ?」
「殺してやろう。後悔がないのなら」
「こうかい?」
「やり残したことかないのか」
「わかんない」
 少女は下を向く。
「生きてさえいれば手を差し伸べられる。間違ったことをしてもやり直せる。分からないなら生きてみろ」
 少女は再び涙を流し、ラズリに飛びつく。
「うわぁぁぁ」
 声を上げて泣いた。
ー夜ー
 トート、アンノは遊び疲れて早めの就寝。
 パイロンはラズリの部屋に集まっていた。
「怖いですか?」
 レオが心配そうに問う。
「何がだ?」
「あの子に情が移るのがです」
「そんな優しい人間に見えるか?」
「別に悪いことじゃねぇはずだろう」
 フィールが言う。
「あの子アデリア帝国から狙われるのかしら?」
 アイシャが心配する。
「その可能性がないとは言えませんね」
「あそこに隠すか?」
「いえ魔力操作ができない以上は危険かと」
「確か今は魔力制御と魔力吸収のブレスレットでやっとだしな」
 魔力制御ブレスレットとは魔力を一時的の操作するもだ。あくまで一時的なので長くつけ過ぎるとブレスレットに故障が起こる。さらにそれに頼り過ぎると体の魔力操作機能が低下してしまう恐れがある。
 魔力吸収ブレスレットは魔力を吸収するものだがアタナシアナの場合は魔力が多すぎるため直ぐに満タンになってしまう。
「明日から操作の練習をさせましょう」
 レオはラズリの方を見る。
「ラズリは・・・」
 首を振るう。
「ですよね」

ー翌日ー
「アシーはこれから魔力操作の練習をしましょう」
「魔力操作?」
「魔力を操る練習のことです。その大きな魔力を抑えるために必要なんです」
「操れたらお外出れる?」
「約束します」
「頑張る」
 そう言い辺りをキョロキョロ見渡す。
「どうしたの?」
「ラズリお姉ちゃんは?」
「ラズリはお仕事です」
「そっか」
 また少しガッカリする。
「じゃあやりましょう」
 少し遠くには、
「トートも負けてられないな」
「はい、自分も頑張ります」

 ラズリは自分の部屋に閉じこもり実験のようなことをしていた。
 プレートの中に入った液体の上に1滴垂らす。すると緑色から赤色へと変貌する。
「やはりか」
 そう言った瞬間ラズリはそのプレートを握りつぶす。
「あいつは生きてる」
 血が出ている手をさらに強く握る。

ー一週間前ー
 アンノが泣いた後ラズリは問う。
「お前、名前は?」
「ヴォラク」
 ラズリは一瞬固まる。
ー現在ー
「あっ、お姉ちゃん」
 ラズリはそう言われて立ち止まる。
「ワタチ頑張ったよ」
「そうか」
 ラズリはトートの方を向く。
「どうだ?」
「大分良くなってきたよ」
 フィールがトートの頭を軽くポンポンする。
「そうか」
「これからみんなでお昼なんだけど・・・」
「先に食べた。部屋に戻る」
「お姉ちゃん頑張って」
 アタナシアナは手を振るう。
 ラズリはそれに返答せず部屋に行く。
 3人は不安そうに顔見合わせた。

 ー夜ー
コンコンコン
「なんだ」
 3人はその夜ラズリの部屋を訪れた。
「様子が変だったから見にきたんだよ」
「何があったの?」
「何でもない」
「そんなわけ・・・」
「少し待ってくれ」
 ラズリは拳を握る。
「・・・分かりました」
 ラズリの部屋を後にする。
「辛そうね」
「そうですね・・・」
「何ができる俺たちには」
「俺たちに出来ることはラズリの話を受け入れることそしてどんな結果になろうとラズリの味方であることです」
「頼りないかな俺たち・・・」
 それ以上は誰も話さなかった。
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