最愛の敵

ルテラ

文字の大きさ
25 / 115
アデリア戦

24話 アタナシアナ

しおりを挟む
ー3日前ー
 ラズリ達はセリア、ライと共に謎の少女ことについて話すため皇帝の元を訪れていた。
 皇帝とパイロン、セリア、ライ以外は誰もいない。あくまでも少女のことは公然の秘密である。
「結論から言いますとこれといった異常はありません。ただ魔力が大きく過ぎるので魔力暴走が起きないように隔離しています。背中などに古傷等がありますが完治しているため問題はありません」
「真か」
 皇帝は安心したような疑っているような複雑な顔しため言う。
 無理もない。国一つを破壊するほどのエネルギーを生み出す子供、異常が無いわけがない。
「大砲の方はどうなったの?」
 アイシャが皇帝に聞く。
「まだ解析中だ。何せ術式が複雑のようでな」
「セリアその後あの子の容体は?」
 レオが問う。
 セリアの所で名目上は入院患者として預かっていた。本当は少女が害のある存在かどうかを見分けるための検査といった所だった。
「ご飯も食べられていますし精神も今、安定していますので退院しても大丈夫です。本来なか孤児院に預けるのですが・・・」
「まっ無理だろうな」
 フィールが困ったように言う。
「こちらで預かるのが最善かと」
 レオが皇帝に言うがラズリを説得しているように聞こえる。
 皇帝もラズリの方を見る。
「我からも頼む」
「わかった・・・」
 ラズリはため息混じりに言う。

ー現在ー
「とりあえずは俺たちの子供として誤魔化します」
「兄さん達いくつよ?」
「養子とすれば何とかなわ」
 セリアが言う。
「やはりアデリア帝国に直接聞くのが一番だよね」
「だな。さっさと落とそうぜ」
「ですが問題は海です」
 3つの帝国で唯一アデリア帝国の首都は海の向こうにあった。
「制圧するって言っても向こうに行くだけでかなり時間がかかります。その間に向こうは万全の準備をしてくるでしょう。あの大砲が多くあるとは考えにくいですが、ないとも言えませんしね」
「今の所そう言う情報はないから大丈夫だと思うけど探って見るよ。それと海問題なら大丈夫かも」
 ライが自信満々に言う。
「どう言うことだ?」
 レオが問う。
「どうやって海の向こうにある帝国の情報を仕入れてると思ってんの。安全な海路、隠れ家が向こうにあるからに決まってんじゃん」
「潜伏させるってこと、兵達を?」
 アイシャが察したように言う。
「すごい数になるし無理だろう」
 フィールが諦め半分で言う。
「隠れ家が国レベルで大きれば問題ないでしょう」
 ニカッとライが笑う。
 だが全員は首を傾げる。
「まっ、少し待っててよ。協力を仰いで見るから」
「わかった」
 ラズリが頷く。
「じゃあ話し終わり。2人の所に行こう」
 セリアが促す。

「皆さん」
「執事長、どうしましたか?」
 トート、アタナシアナ所に行こうとして執事長に呼び止められる。
「お昼のお時間なのでお呼びしようと」
「分かりました。2人は俺たちが呼んできます」
「ありがとうございます」
 執事長は一礼すると去っていった。
「もうそんな時間か」
「急いで呼んでこよう」
「明るくなってよかったわ」
「最初は酷く怯えてましたしね」
 歩きながらレオ、セリアは我が子が元気にはしゃいでいるのを嬉しそうに言う。
 それを後ろでフィール、アイシャ、ライがニヤニヤしながら見ている。

ー一週間前ー
 アタナシアナが入院している病院に訪れていた。
「容体はどうですか?」
「かなり怯えてる。点滴で何とか凌いでるけど直接食べた方が・・・」
 セリアは心配そうに頬に手をつく。
「少し話せるか?」
 ラズリが言う。
「えっ?えぇ大丈夫よ」
「2人にしてくれ」
 少し躊躇うもセリアそれを承諾する。
 ラズリは静かにベットでうずくまっている少女に近づき、近くにあった椅子に座る。近くに座ると少女は小さな体をさらに縮める。
「痛いところはないか?」
 少女は腕の隙間から目を覗かせる。
「仮面が怖いか?」
 少女は首を振るう。
「何が怖い?」
「わかんない」
「何か願いはあるか?」
「お願い?」
 少女は顔を出す。
「叶えられるものなら叶えよう」
「くるしい・・・」
 少女は大粒の涙を流す。
「そうか」
「頑張ったの。一生懸命努力したの。でも足りなくて悪口言われたり、叩かれたりしたの。でもね、役に立ってるって言ってくれたの・・・だから頑張ったのいたいもつらいも」
 『殺して』
 ラズリはあれが少女の言葉だと理解する。

「トート、アシー、遅くなりました」
 トートがアタナシアナを抱えてこちらに来る。
「トート君、子守りご苦労様」
「では食事にしましょう」
 全員で食堂へ向かう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

処理中です...