最愛の敵

ルテラ

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アデリア戦

33話 姉の想い

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「(ここはどこだ)ズキ」
 頭を抱える。酒の飲み過ぎで二日酔いの様だ。
 顔が冷たいのに気付き触れると濡れていた。どうやら泣いていた様だ。濡れた手の平を愛おしそうに握る。
 夢でも幻でも姉に出会えたこと話せたことが何よりも嬉しかった。
「フィールさん」
 声がし現実に引き戻される。
「自分です。入ってよろしいですか?」
「ああ、いいぞ」
 顔を袖で拭いながらいう。
「おはようございます」
「おはよう。悪い昨日のことあんま覚えてないんだ。トートと話したのは覚えてるんだが・・・」
「あの後すぐに寝てしまったので自分がここまで運んできました」
「そうだったのか。ありがとう」
「いえ」
 フィールは下を向き話し始める。
「姉ちゃんにあった。夢の中だけど、俺のこと恨んでないってこれからも頑張ってって言ってくれた」
「よかったですね」
「トートのおかげだよ。ありがとう」
 フィールはトートを向き微笑む。
「そんな、あっ!そうだこれ」
 話を逸らす様にそれを渡す。
「ん?」
 受け取る。
「二日酔に効く薬だそうです」
 フィールは1度固まったあと冷や汗が出て目を大きくする。そのままトートの方を向く。
「ちゃんと飲まなきゃわかってるわよね。だそうです」
 セリアからの言伝の様だ。
「お・・・う」
「では自分はこれで失礼します」
 その場を逃げるように速やかに退散。
 フィールはため息を吐くが何処か嬉しそうで「ありがとう」そう呟く。
 薬を飲んだ後フィールはテントから出る。太陽の眩しさに目が眩む。しかし負けじと天を見て伸びをする。
「フィール」
 前を向くとアイシャがいた。
「あぁ、おはよう」
 昨日のともあり、ぎこちない。
「昨日はごめ・・・」
「そんなことよりお客さん」
 アイシャは後ろを見る。フィールは心当たりがなくアイシャが見た方を見る。すると、
「あ、あの・・・」
 昨日の強姦されそうになっていた女性がそこにはいた。
「あっ、昨日・・・」
 気まずい雰囲気が流れる。
「あ、あの」
 フィールと強姦された女性の声が合わさる。「どうぞ」とフィールが譲る。
「あ、ありがとうございました」
 女性は深々と頭を下げる。
「あなたおかげで救われました」
「あ、いや俺はただ・・・」
「どういたしまして、でいいんじゃない?」
 アイシャが横から言う。
「んん・・・どういたしまして」
 咳払いをし照れて横を向く。
 パチン
「さぁご飯にしましょう」
 アイシャが両手を叩く。
「行きましょう」
「私もですか・・・」
 と驚く女性、フィールを見る。
「お前が嫌じゃなきゃ」
「ほら、行くわよ」
 女性の腕を掴んでアイシャが言う。
「あぁ」
 フィールも後に続く。

 ーおまけー
 女性を強姦しようとした女性はその後、皇帝の耳にも入り厳しい処罰と降格が言い渡された。

ー約10日後ー
 自分らはようやく海に辿り着く。自分、フィールさん、アイシャさん、セリアさんはハイタッチをする。
「おぉ、ようやく着いたな」
 突然、横から声がしたので横を向く。
「こ、皇帝陛下!?」
『(忘れてた)』
 全員が思う。
「いたねー皇帝陛下。ヒソ」
 セリアさんが苦い顔して言う。
「何にもしてないから忘れてた。ヒソ」
 フィールさんが苦い顔して言う。
「出てこなくてよかったのに。ヒソ」
 アイシャさんが言う。
「ん?何をひそひそと話してる?」
 皇帝は片方の眉を上げる。
『いえ、何も』
 全員が首を振るう。
「して、ラズリは?」
「さぁな、作戦開始以降あってねぇ」
 フィールが言う。
「ラズリなら自力で渡れそうね」
 アイシャが言う。
「もういちゃったんじゃ・・・」
「いや、まだだ」
「そう」
『ん?』
 声をした方を全員が向く。
『ラズリ(さん)!!』
「えっ、何で?」
「どこにいたんだ?今まで」
「久しぶりラズリ」
「・・・」
「息災か?今まで何をしていた?」
 皇帝が問う。
「船は?」
 質問を無視してラズリさんが問う。
「もう来た」
 皇帝の見ている所を見ると船が来る。
「あれが」
 自分は船を見て目をキラキラされる。
「見るのは初めてか?」
 皇帝が問う。
「いえ、訓練兵の時に一度。でもあれほど立派なのは初めてです」
「そうか。そうか」
 ラズリは何も言わずにその場を去る。
「ノーネーム。ボソ」
 トートは皇帝がラズリの方を見て言った言葉に首を傾げるが、トートは何も聞かなかった。

「出てこい」
 ラズリは路地に行き、ライの部下『影』を呼ぶ。
「こちらに」
「レオに知らせろ」
「仰せのままに」
 そう言い消える。
『知らせろ』というのは船でそちらに向かうから準備をする様にとのことだ。

ー1週間後ー
 休息を終え始まる。
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