最愛の敵

ルテラ

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アデリア戦

37話 嫌な予感

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 トートが自力で来るのを待つことにした。
「レオはもう行ったのかな?」
 辺りを見渡すフィール。
 アイシャはそんなフィールを地面と交互に見る。そして下を向いたまま「フィール」と呼ぶ。
「ん?どうした?」
 フィールはアイシャを見る。
「トートから聞いた。お姉ちゃんと話せたんでしょう?」
「あぁ、まぁな」
 気まずそうにソッポを向いたまま言う。
「夢だったけどな・・・」
「ごめんね」
 予想外の言葉にアイシャの方を見る。
「あの日、私が遊びに誘っちゃたから・・・」
「違う!」
 アイシャの両肩を掴む。
 アイシャの驚いた顔見てフィールは掴んで手を緩める。
「違う、あれは俺たち姉弟の問題だ。嬉しかった。誘ってくれて居心地悪かったから。遊びを言い訳にして逃げたんだ。お前は悪くない」
 フィールはアイシャの肩から手を話す。 そしてフィールは夢の話をした。
「だから結局姉ちゃんは死ぬつもりだったんだ。自分を責めるな」
「ごめん」
「いや、いいよ。悪かった。気づいてやれなくて。お前も姉ちゃんのこと好きだったもんな」
 アイシャに微笑む。
「うん。私の憧れ」
 アイシャも微笑む。
「忘れないでいてくれ。たまに思い出してくれると嬉しいって言ってたから」
「うん。わかった」
「お二人さんー!」
 声のした方に振る向くと走りながら、こちらに手を振るトートがいた。しかしトートが来る反対方向から、
 ドドドドドド
 音が大きくなる。2人は無意識に構える。しかし
「あっ」
「あれって」
 2人は顔見合わせ、笑う。
「来たな」
「だね」
 2人の目線の先には軍を率いる馬に乗ったレオの姿があった。
「お二人とも!」
 レオは馬から降りる。
「久しぶり!レオ」
 レオとフィールは固く握手をする。
「よかった。先にいちゃったかと思ったよ」
「お、お久しぶりです」
 息を切らしながらトートが駆け寄る。
「お疲れ様です」
 レオは苦笑いする。
「ここの敵は片付けたんですか」
「あぁ、だが・・・」
「少ないかった?」
 レオが続きを言う。
「そっちも?」
 アイシャが首を傾げる。
「えぇ、俺らの想像が飛躍しすぎだったのか本当に少なかったのか分かりません」
「まぁ向こう行けばわかるだろう」
 4人はアデリアの方を向く。
「行きましょう」
 4人は軍を連れ目的地に向かう。
「ラズリは?」
「単独でアデリアの首都に向かった」
「そうですか」
 肩をすくめる。

ーその頃ー
 先制攻撃をしたスイマールの艦隊。皇帝が乗っていた艦隊は最初の一撃だけ先頭に立ち打ったものの今は後ろにいる。
「状況を報告せよ」
「はっ!現在、力は均衡状態であり長引けばこちらが不利な状況です」
「このまま耐えよ。現状維持。全艦隊に伝えよ」
「いや、しかし・・・」
「まだその時ではない。従え」
 皇帝は睨む。
「失礼しました。各戦艦に伝えます」
「(そう今はまだ)」
 皇帝は両肘を机につきニヤリとする。

ーその夜ー
「よし、ここで野宿だ」
 4人と兵達は順調にアデリアの首都に向かっていた。順調に・・・
「順調すぎませんか?」
 トートは不安そうに問う。
「ですね。兵の数が少ない過ぎるそれに民間の人がお年寄りしかいなかった」
 通常出兵は男のみが駆り出される。しかし、女性、子供までいないのはおかしい。
「あの・・・女性は捌け口にされる為につれてがれた可能性はないですか?」
 トートの問いに黙り込む3人。
「可能性としてはなくはないが他国民ならともかく自国民をそんな風に扱いか?それに子供まで連れていった理由は?」
 フィールの問いにトートは何も答えられない。
「嫌な予感がします。警戒しつつペースを上げていきましょう」
「どれくらいには着くんだ?」
「うまくいけば3日程度で着くはずです」
「何もなければいいけど」

ー時は遡りー
 ラズリは敵に見つからないよう。森方面から行くことにした。森林敵兵おらず、戦わずにアデリアまで行っていた。ラズリも違和感を感じていたが、自身の為すべきことのために、疑問を振り払う。

ー夜ー
「ふぅー」
 ラズリはアデリアの都市ヨヂに到着した。首都は大きな壁に仕切られていると聞いていたが壁には改装中のように全体にシートが被せられていた。
 ラズリはシートに中に潜り込み壁の内側を確認する。内側の壁には等間隔で扉があり鉄板で足場ができていた。
「まったく何で俺らが」
 誰かが来る。ラズリは間一髪で“影”に潜り込む。
「文句言うな。俺だって嫌だよ」
「しかし何だってこんな・・・」
「皇帝が神の信託を受けたんだと詮索するな」
「でもよ。時々中から・・・」
「静かにしろ」
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