最愛の敵

ルテラ

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アデリア戦

36話 開戦

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ー翌朝ー
 朝になっても洞窟は暗く朝が来たのが分からない。
「(さて、何をするかな)」
 レオは部屋から出て辺りを見渡す。
「あの!」
 声のする方に振り向く。
「王、どうしましたか?」
 そこには息を切らした王がいた。
「僕に稽古をつけてください」
 あまりに予想外の言葉に目を大きくする。
「あ・・・はい?」
「あの後、色々考えました。戦争のしない国を作りたい。でもそも前に民を守れる人になりたいんです。僕はここに残って戦わない人達を守られる人になりたい。守られてばかり王は王ではなくただの人です。だからお願いします」
 王はレオに向かって頭を深く下げる。
 静寂が流れる。王は頭を下げたまま目を強く瞑っていた。
「俺は厳しいですよ」
 レオの言葉を聞くと下を向いたまま目をパチパチされる。そして顔上げ再び目をパチパチさせる。
 レオは首を傾げる。
「断った方がいいですか?」
「いえ、ありがとうございます」
 再び頭を下げる。
 レオは上を向く。
「(いいですよね。それくらい)」
 再び前を向く。
「頑張りましょう」
「はい!頑張ります」

ー現在ー
「ん?久しぶりぶりですね」
 森の中に剣を振るう。髪を縛ったレオの姿があった。
「もう時期こちらに皆さまが到着なされます」
「分かりました」
 レオは片手で軽く遮り太陽を見る。
「ようやく会えるんですね」
 そう言い洞窟の中へ戻る。
「師匠!」
 王が駆け寄る。
 そこには自信のなさそうな少年の姿はどこにもなかった。
 レオは王を見つめたあと、前を向き「準備をしましょう」と笑顔で言う。

ー戦争開始まで少しー
「では3万の兵とセルシアルの1万の兵は俺と残りのセルシアの兵は王と共にここに残ってください」
 『影』が現れる。
「レオ様、スイマールの軍艦を確認」
「分かりました」
 イヤリングから声が聞こえる。
 ピピ
[どうだ?]
 懐かしい声に目を細める。
[こちら準備完了しました。待機中。上にもアデリアの兵が配備されています]
[分かった。砲撃をすると同時にお前達もセルシアルにいるアデリアの兵を倒しながらアデリアの都市に向かってくれ]
[了解]
 通信が切れる。
「ご武運を」
 『影』は立ち去る。
「砲撃の音と共に出ます。いつでも出れるように準備を」
「了解」
 全員が言う。
「師匠」
 王が駆け寄る。
「王なら守れます。自信を持ってください」
「ありがとうございます。ご武運を」
 王は笑顔で言う。
 そこで2人は別れる。
バーーーーン
 洞窟に音と揺れが響く。
『出撃』
 その音に負けないくらいの大きな声が洞窟を満たし、一斉に外へと出る。

ー少し前ー
 パイロンは軍艦に乗っている。目の前にはスイマールの戦艦を凌駕する数のアデリアの軍艦が配置されていた。
「お迎えが来たぞ」
 フィールは片手を日除け代わりにし目を細める軍艦を見る。トート、フィール、アイシャは軍艦の先頭にいる。
 アデリアの都市ヨヂが見えた。首都には珍しく海に面しており逆側は城よりも背の高い壁で覆われている。
「すごい数ですね」自分は唾を飲み、腰にある銃に触れる。
「緊張してるの?」
「はい」
 トートは軍艦から目を離さず言い、背中にある銃に触れる。
「いつも通りにやれば・・・」
「準備しろ」
 後ろからラズリが言う。
「レオは?」
「さっき連絡がついた所だ。こちらが始まり次第向こうも動く」
「よし、じゃあまた」
 フィール、アイシャは左右の軍艦に散る。
 ラズリは操作室に戻る。そこには皇帝もいる。しばらくすると各軍艦から無線で準備の完了の報告が挙がる。兵の一人が皇帝に「全艦準備完了しました」と報告する。皇帝は頷き、戦艦隊につながる無線で「攻撃開始、全艦打てー」と叫ぶ。同時に戦艦隊から敵の艦隊に向けて多くの弾が打ち込まれる。
 ラズリは皇帝の開始の合図と共に外に出て弾が打ち込まれるのを見守る。
 打ち込まれると同時に4つの影が動く。
「ついた」
「うまくいったね」
「え!?」
 気がつくとトートは上陸していた(トートはラズリさんに突然運ばれる)。
「あ、え、あの」
「トートは俺達とな」
「えっ?ラズリさんは?」
「別行動だ」
 ラズリはどこかに消える。
「いや、え?」
「構えろ。トート」
 トートは2人の方を向く。
「えっ?」
「説明は後今は」
「客だ」
 そこには多くの敵がいた。
「はい!」
 トートは状況の整理ができないまま構える。

「ふうー」
 フィールは額の汗を拭う(汗なんてかいてない)。
「フィール終わった?」
「あぁ、そっちは?」
「こっちも」
 フィールの元に行くアイシャ。
「あれ?トートがいない」
 2人は辺りを見渡す。
「はぐれたな」
「だね」
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