最愛の敵

ルテラ

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チャムク帝国

99話 向き合う

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 レオの気迫に押され急いで頷く。
「おいおい、勝手に話しを進めるなよ。まぁでもいいか。それが狙いなんだろう?」
「・・・」
 レオは何も答えなかった。答えない代わりにセイレを真っ直ぐ睨めつける。

 自殺することが悪なら何故、死刑があるのだろか。法で善されているからいいのだろうか。平等と言いながら何故、捌けない人間がいる。その歪んだ法は誰のためにあるのだろうか。
 初めて望んだあの日から願いは今も変わらなかった。だからもう・・・
 このために生まれた訳ではないけど、でもせめてこれぐらいは・・・
 だからもういい、いいんだ。

 屋上へと続くであろう階段をひたすらに上がる。本来なら魔法ですぐにでもかけ上がりたかった。でもこの先何があるか分からない以上魔力は温存したかった。
 しばらく上がると広い部屋に出る。周りはガラス張りになっていて中からでも星が見える様になっていた。だからすぐに見つかった。星を眺める、黒いマントをしている2人の人影。顔も性別も分からなかったが、すぐに分かった。
 何とか息を整えて、テラスへ続く扉をゆっくり開ける。
「ラズリさん」
 2人が振り向く。
「おや、トートっと言ったか?久しぶり・・・」
「自分はあなたを救いたい!!!」
 トートはソロモンの言葉を遮る。そして沈黙が流れる。
「あなたはソロモンじゃない。ラズリさんです。ラズリさん、もうやめて下さい。お願いです」
 なるべく落ち着いて言う。
 懇願するしかなかった。戦ったとしても勝てないことは分かっていし、戦っても辛く、苦しくなるだけだ。そしてその戦いに意味がないと分かっていたから。
「ハァー、よく分かったな。トート」
 黒いマントを取るとそこにはいつものラズリさんがいた。仮面を被った。
「何故、分かった?」
「あなたが見えた瞬間、あなただと分かったんです」
 そうか、っというと、もう1人の黒マントを取る。どうやら傀儡の様だ。
「ソロモンはどうしたんですか?」
「殺したよ」
「そうですか」
「何故、とは聞かないのか?」
「興味がありません」
「言うようになったな」
「でも、聞かせて下さい。真実を、そして世間に・・・」
「真実は世界を滅ぼそうとした所をお前達、パイロンが止めたっだ」
「違います。ラズリさん、あなたにとってソロモンとはどんな存在なんですか?」
 あれ程のことをされながらラズリさんは何処か今でもソロモンという存在を信仰しているような気がした。
 ラズリは黙り込む。
「ラズリさん!!」
「ソロモンは『ホルス』だ」
 その言葉にトートは耳を疑う。
「えっ?」

 ソロモンがセイレに自身の過去について話した数日後、ラズリはソロモンの元を訪れていた。
「サマエル、よくここが分かったね」
 ソロモンはテラスで優雅に椅子に座り、ワインを飲んでいた。
「この世界にあなたが身を隠せる所なんてここしかないでしょう?」
 ラズリは一拍置く。
「ソロモン、いやホルス」
 ソロモンは一瞬眉をピクリっとさせる。
「よく分かったね。サマエル」
 ソロモンはイヤリングを外し、テーブルに置く。黒髪からネイビーブルー髪へと色が変わる。
「立ち話も何だ。座りなさい」
 ラズリは言われた通り座る。
「いつから気づいていた?」
「ソロモンは喋り出す時『ふむ』という癖があった。それがホルスにもあったんだ。助けられたその日から。だが確証を得たのは『ヴォラク』を保護してからだ」
「最初からっという訳か。何故黙っていた?あの時、言っていればこんなことにはならなかっただろうに」
「信じたくなかった。あなたがソロモンで・・・いや、あなたはどっちですか?」
「私は両方、僕さ。ラズリ、ここに来たってことは『私の完成』に賛同してくれるってことかな?」
「完成?」
「僕の力を受け継ぐんだ」
「あなたの子を産めということですか?」
「違う違う。確かにそれは魅力的だが、3つも魔法を受け継ぐことは出来ないし、実験の過程でお前の生殖器官は機能しなくなったんだ」
「それが目的なら何故あの世な“大砲”を作ったのですか?何故、人々から魔力を奪ったのですか?アデリアの人々はどうなったのですか?何故、魔力の多い、あの子を手放したのですか?」
「質問が多いな・・・まさかお前が誰かを気にかけるとはな」
 ソロモンはラズリを見る。
「ラズリ、これに答えたら僕の質問にも答えてくれるか?」
「どのような?」
「別に大した質問ではないさ。隠すことなんてないだろう?」
 少し考えるも
「分かりました」
 っと承諾する。



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