101 / 115
チャムク帝国
99話 向き合う
しおりを挟むレオの気迫に押され急いで頷く。
「おいおい、勝手に話しを進めるなよ。まぁでもいいか。それが狙いなんだろう?」
「・・・」
レオは何も答えなかった。答えない代わりにセイレを真っ直ぐ睨めつける。
自殺することが悪なら何故、死刑があるのだろか。法で善されているからいいのだろうか。平等と言いながら何故、捌けない人間がいる。その歪んだ法は誰のためにあるのだろうか。
初めて望んだあの日から願いは今も変わらなかった。だからもう・・・
このために生まれた訳ではないけど、でもせめてこれぐらいは・・・
だからもういい、いいんだ。
屋上へと続くであろう階段をひたすらに上がる。本来なら魔法ですぐにでもかけ上がりたかった。でもこの先何があるか分からない以上魔力は温存したかった。
しばらく上がると広い部屋に出る。周りはガラス張りになっていて中からでも星が見える様になっていた。だからすぐに見つかった。星を眺める、黒いマントをしている2人の人影。顔も性別も分からなかったが、すぐに分かった。
何とか息を整えて、テラスへ続く扉をゆっくり開ける。
「ラズリさん」
2人が振り向く。
「おや、トートっと言ったか?久しぶり・・・」
「自分はあなたを救いたい!!!」
トートはソロモンの言葉を遮る。そして沈黙が流れる。
「あなたはソロモンじゃない。ラズリさんです。ラズリさん、もうやめて下さい。お願いです」
なるべく落ち着いて言う。
懇願するしかなかった。戦ったとしても勝てないことは分かっていし、戦っても辛く、苦しくなるだけだ。そしてその戦いに意味がないと分かっていたから。
「ハァー、よく分かったな。トート」
黒いマントを取るとそこにはいつものラズリさんがいた。仮面を被った。
「何故、分かった?」
「あなたが見えた瞬間、あなただと分かったんです」
そうか、っというと、もう1人の黒マントを取る。どうやら傀儡の様だ。
「ソロモンはどうしたんですか?」
「殺したよ」
「そうですか」
「何故、とは聞かないのか?」
「興味がありません」
「言うようになったな」
「でも、聞かせて下さい。真実を、そして世間に・・・」
「真実は世界を滅ぼそうとした所をお前達、パイロンが止めたっだ」
「違います。ラズリさん、あなたにとってソロモンとはどんな存在なんですか?」
あれ程のことをされながらラズリさんは何処か今でもソロモンという存在を信仰しているような気がした。
ラズリは黙り込む。
「ラズリさん!!」
「ソロモンは『ホルス』だ」
その言葉にトートは耳を疑う。
「えっ?」
ソロモンがセイレに自身の過去について話した数日後、ラズリはソロモンの元を訪れていた。
「サマエル、よくここが分かったね」
ソロモンはテラスで優雅に椅子に座り、ワインを飲んでいた。
「この世界にあなたが身を隠せる所なんてここしかないでしょう?」
ラズリは一拍置く。
「ソロモン、いやホルス」
ソロモンは一瞬眉をピクリっとさせる。
「よく分かったね。サマエル」
ソロモンはイヤリングを外し、テーブルに置く。黒髪からネイビーブルー髪へと色が変わる。
「立ち話も何だ。座りなさい」
ラズリは言われた通り座る。
「いつから気づいていた?」
「ソロモンは喋り出す時『ふむ』という癖があった。それがホルスにもあったんだ。助けられたその日から。だが確証を得たのは『ヴォラク』を保護してからだ」
「最初からっという訳か。何故黙っていた?あの時、言っていればこんなことにはならなかっただろうに」
「信じたくなかった。あなたがソロモンで・・・いや、あなたはどっちですか?」
「私は両方、僕さ。ラズリ、ここに来たってことは『私の完成』に賛同してくれるってことかな?」
「完成?」
「僕の力を受け継ぐんだ」
「あなたの子を産めということですか?」
「違う違う。確かにそれは魅力的だが、3つも魔法を受け継ぐことは出来ないし、実験の過程でお前の生殖器官は機能しなくなったんだ」
「それが目的なら何故あの世な“大砲”を作ったのですか?何故、人々から魔力を奪ったのですか?アデリアの人々はどうなったのですか?何故、魔力の多い、あの子を手放したのですか?」
「質問が多いな・・・まさかお前が誰かを気にかけるとはな」
ソロモンはラズリを見る。
「ラズリ、これに答えたら僕の質問にも答えてくれるか?」
「どのような?」
「別に大した質問ではないさ。隠すことなんてないだろう?」
少し考えるも
「分かりました」
っと承諾する。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる