【完結 R18追放物】勇者パーティーの荷物持ち~お忍び王女とダンジョン攻略。あれ? 王女のダンジョンも攻略しちゃいました~

いな@

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第一章

第96話 勝負の行方

「ふむ。アイテール、準備は良いのだろ? では開始!」

 聞くなら返事を待ってから始めろよ! と、思うところもあるが、······問題はないな。ほんの少し太刀、小太刀の重みが増した程度だから、シークジール伯爵の身体弱化は強力なものではないようだ。

 開始の号令と共に『狂乱の狼』リーダー、『狂剣』と名乗った奴が素早い動きで踏み込んできた。

 流石に身体強化がかかっているため中々の早さだが、踏み込みながらの下からの切り上げを俺も一歩踏み込みながら左手の小太刀で軌道をずらしてやる。

 ギィン!

「何っ!」

 自身にかかった身体強化があり、俺には身体弱化かかかっているにもかかわらず、簡単にさばいてしまった事に驚いているが、足元がお留守だぞっと!

 ガッと踏み込んで来た足を、体重が乗る瞬間に横から蹴ってやる。

「うがっ!」

 ガクンと体勢を崩したまま俺の横を通りすぎ、ごろんと倒れて、ズザザと数メートル地面を滑っていく。

「ほら、残りも行くぞ!」

 残りの七人と、シークジール伯爵に肉薄し、逆手に持った小太刀の柄頭で腹に一撃ずつ、ドスッ、ドスッドスッと間をすり抜けざまに、打ち込んでいく。

「ぐぼっ!」「おごっ!」「ごおっ!」など、呻き声をあげ膝を付いていく。

「おごろろろっ!」

 シークジール伯爵に至っては、朝からどれだけ食べてきたんだよ! ってくらい吐瀉としゃした後、その上に倒れ込んでしまった······いや、す、すまん。

 そして通りすぎた後すぐさま振り返り、今度は順手に持ち返し、刀背打みねうちで手首を打つ。

 ゴン! ゴゴゴン!

「あがぁ! 手、手がぁ!」
「ひぎっ!」
「うがっ!」

 各々手首を打ち付けられ持っていた武器を取り落とし、無事な手で折れ曲がった手首に手を添えている。

 そして『狂剣』はやっと立ち上がり、こちらを振り向いた所に俺は刀を突き付けてやった。

「ギルドマスター、勝負は付いたと思うんだが?」

「そうだな、アイテールの勝ち――」

「まだ負けてねえ! 死にやがれ!」

 突き付けていた刀を避け、近距離から突きを放ってきたが身をひねり避け、突いてきた右手の手首を刀背打ち!

 ゴッ!

「ぐがっ!」

 これで全員の手首を折ったが······。

「ぐぅ、ハ、ハイヒール! く、くそ、お前達何をしている! さっさとやっつけてしまわないか! このままでは――」

 まだ諦めてないようだな、ハイヒールで自分の骨折を治したシークジールは、次に一人ひとりの骨折を治すため、うずくまり、呻いている『狂乱の狼』に手を向けて、ハイヒールを唱えた。

「ハイヒール! ハイヒール! ハイヒール!」

 中々の魔力量だが、そろそろ一分になってしまいそうだな。

「終わらせる! しっ!」

 刀を納刀して九人の顎を掠めるように打ち付けてやる。

「――よし。ギルドマスター終わったぞ、しばらく立つ事も、魔法も集中できないから使えないはずだ」

「うむ。そうだな、後二十秒ほどで一分だ、それまでに立てたら続行、立てなければアイテールの勝利だ」

「なんだこれは? 体がいう事をきかないぞ――ま、まずい、このままでは何もかもこの者に取られてしまう。お、おい、お前達早く立つのだ!」

「シ、シークジール伯爵様、だ、駄目です! 目が回っているような、頭がぐらぐらして、む、無理です! これはなんなんだよ! ヤベえ、俺達もEランクだぞ、今さら薬草採取にゴブリン討伐なんてやってられねえぞ! 動け! 動け!」

 なんとか手をついて上半身を持ち上げようとしているが、やはり頭が揺れているからごろんとまた転がり立ち上がれず、やっと時間が······。

「ここまで! この勝負はアイテールの勝利だ!」

 立ち上がろうとしていたシークジール伯爵と『狂乱の狼』はギルドマスターの宣言の後、がくりと地面に寝転び、その表情は······少し可哀想な気もするが、勝負は勝負だ。

 そして完全に勝負が付いたと分かった瞬間、見学に来ていた冒険者達は歓声をあげ『よっしゃー今夜は飲むぞー!』『武器を買い換えるぜ!』『俺は今から娼館に行くぞ! シャーリーちゃーん!』『ちょ待てよ! シャーリーちゃんは俺が!』等々······走り練習場から出ていった。

 転がる奴らは職員が手当てしに行ったので、俺達も練習場を後にし、ギルド中に戻ってきた。

「なあギルドマスター。もうこれで終わりだよな? まあ俺達も小遣い稼ぎはできているが、流石に面倒くさいぞ」

「くははは! そうだな、今、王都に来て登録しているのは今回の『狂乱の狼』で終わりだな」

「え~、それじゃあまた六日後には来てるのかなぁ。今回は領地ももらえたけど、どうせなら、教国の温泉街が欲しいかな、どう思うセレーナ」

「良いわね。パナケアとの国境の街だし、また行きたいし、もらえるならもらっちゃいましょう」

「くははは! よしよし、とするならイブースキ子爵領だな、あそこは海もあるから塩の産地としても有名だぞ。海の無いパナケアとすればそれを手に入れれば叙爵······は必要ないか」

 最後は小さな声で言ったから俺達以外には聞こえていないが、このダンジョン攻略が終わり、叙爵と婚約発表がされるまでは公表できないんだから気を付けてほしいもんだ。

 受け付けまで戻ってきて、今回の勝負の登録を済ませ、さあ行こうと思ったのだが、そう言えばコイツらがいるんだったな。

 振り向いた所にいたのは······。
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