【完結 R18追放物】勇者パーティーの荷物持ち~お忍び王女とダンジョン攻略。あれ? 王女のダンジョンも攻略しちゃいました~

いな@

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第一章

第99話 マズハオマエカラダ!

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 伸ばしてきた右手の軌道を俺は左手で反らして手首を掴み、捻りながら下に引き下ろすと同時に肘へ右手を添えて押し上げてやる。

 ゴキンと間接が逆に曲がり、左手で掴んでいた手がプランと垂れ下がった。その手から落ちたのは、細く、女性のネックレスに近い形の奴隷の魔道具······。

「ウギャァァー! 俺の手がぁぁー! ウギィィィー!」

「やかましい! 何をしようとした! 無理矢理奴隷の魔道具を罪もない者に嵌めるのは犯罪だ! おい! シークジール! 教国の冒険者ギルドも犯罪者は除名だよな」

「くっ! 油断している内に――い、いえ、そ、その通りです! 除名ですよ教国冒険者ギルドマスターの私の権限で確実に除名にしましょう!」

 あまりの激痛にのたうち回るヤツに落とした奴隷の魔道具を嵌めてやる。

 そして――!

「命令だ、黙って立っていろ!」

「――――!」

 プルプル震えながら折れてない左手を使い立ち上がった。

それよりシークジールはおかしな事を言いかけたよな。

俺は念話でギルドマスター達に話しかける。

(ヒョンビー子爵、リマンダ男爵、ギルドマスター、これは念話です。驚かずに聞いてくれ)

念話で俺が話しかけるとビクッと、する三人。だが言った通り黙ってそのまま続きを聞いてくれるみたいだ。

(シークジールのヤツが口走りかけた『油断している内に』の真相を聞こうと思う。ラカス枢機卿と『狂乱の狼』を除いた者に聞こえるようにするから頼む)

三人は軽く頷く。

「おい。なぜ俺の大事な人に奴隷の魔道具を嵌めようとした。それも、ネックレスに擬装した物をだ。それにどこで手に入れたんだ? 奴隷の魔道具はそう簡単に持てる物ではないはずだが、どうやって手に入れたんだ?」

「ぐぎぎ、そ、それはシーク――」

「そ、そんな事は私が責任を持って聞き出し報告を上げます! おい! お前達そいつを連れて下がっていろ! ぐずぐずするな!」

(何て事を聞くのですか! それでは私の計画が! 忌々しい奴め、大人しく辞退しておけばこんな事にならずに済んだものを、なんとか狂剣達は連れ帰って作戦の練り直しだ)

なるほど、報酬を渡さなくて良いようにしたかったのか。確かに誰かを奴隷にされて、解放する引き換えなら辞退したかも知れないな。

「なるほど。シークジールに依頼されたんだな」

「な、何をおっしゃるのですか! そんな事はあり得ません!」

「答えろ狂剣」

そ、その通りだわぁぁぁぁー!

「違う違う違う! コイツは嘘を言っているのです! ラカス枢機卿、なんとか言って下さい!」

(クソクソ! 頼むラカス、なんとか味方になり、私を援護してくれ!)

「ラカス枢機卿、これはまったくの出鱈目です! どうか私の無実を信じて下さい」

同じ教国の、枢機卿同士だが、ラカス枢機卿は苦虫を噛み潰したような表情でシークジールを睨みつけた。

「シークジール枢機卿。あなたがそんな事を指示していたとは······同じ教会関係者として、流石に全ての地位と資産を取られるのは避けたいと思い参列したが、私にはあなたに賛同する事はできかねます」

シークジールに向いてそう言った後俺の方に向き直り、言葉を続ける。

「アイテール伯爵様、教国の爵位と枢機卿の地位、領地やダンジョンの正当な受領者として私、教国貴族の男爵及び、枢機卿としてあなた様を歓迎いたします」

そして会釈をした後シークジールに向き直り······。少しの沈黙の後。

「シークジールを捕らえねば。ギルドマスター、お願いできますか?」

「ま、待て! おい! 触るな!」

「暴れると乱暴になるぞ、大人しくしろ。サブマス、衛兵もだが兵士を呼んでもらえるか、決闘の勝者へここまであからさまに妨害をするなど、極刑まではいかないだろうが、犯罪奴隷にはなるだろうな」

「い、嫌だ! こうなったら! 近付くな! ふぐっ、んぐんぐ」

シークジールは首元からネックレスを引き出し、その先に付いていた物、中に紫色の液体が入った小瓶の栓を抜いたと思った瞬間、口にして飲んでしまった。

「シークジール! 何を飲んだ! 毒か!」

「キヒッ。キヒヒヒヒヒッ!」

ミチミチと音を立て、服を引きちぎるように体が大きくなるシークジール。

「毒じゃないのか!? ヤバい、みんな! 応接室から出ろ! しっ!」

横に回り込んで腹を思いっきり殴ろうとしたのだが――くっ、避けやがった! 結――!

「キヒッ! ミエテオルハ! クソガキガ! キサマサエシネバ! イヤ! ココ、オウトノスベテノモノヲコロシツクシテヤル! キヒャヒャヒャヒャ!」

「――ぐはっ!」

結界を張る前に無造作だが目に見えないほどの速度で拳を伸ばしてきたのか、物凄い衝撃と共に壁まで飛ばされた。

みんなは俺の声と共に応接室から出るためシークジールから離れていたのが幸いし、奴の振り回した拳に触れたのは俺だけのようだ。

くそ。なんとか立ち上がり身構えたが、やられた――かすっただけで右手が砕けたか、痛みと痺れで力が入らない。

回復魔法を使い、部屋の状況を把握しようと見わたす。

応接室の中央には体が五倍ほどに膨れ上がったシークジール。まるで筋肉の塊のようで、さらにオーガのように額からは角が延びている。

そして奥にはギルドマスターとリマンダ男爵、ヒョンビー子爵にラカス枢機卿が壁際まで下がり、扉側には他のみんなが避難できていた。

だが狂剣は、飛ばされた俺とは反対側。その場から動けずシークジールの真横にいる。

「狂剣! 離れろ!」

「キヒッ! キサマモイタカ! キサマノセイデナニモカモオシマイダ! オマエハサイゴニコロシテヤル! コノマジンヤクデチカラヲエタワタシノテデ、スリツブシテヤル!」

「ひぃー!」

腰を抜かしたのか這いずり俺とは逆の壁際に逃げる狂剣。

くそ、まずい、複雑に折れたようですぐには治らないぞ。

「マズハオマエカラダ!」
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