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第1章

第5話 階段があれば突入だよね!

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 祭壇を収納して現れたのは階段だった。

 おおー! 隠し階段だよ! RPGだよ!

 ぽよぽよと階段のふちまで移動した私は穴をそっと覗き込む。

 うん、暗いね、でもスライムだからか見えない事は無さそうだし、これは行くしかないでしょ!
 どうせこの部屋から出るにはあの扉が開かなきゃ出れないんだ、行っちゃいましょー!

 あっ、でも、扉が開いた時に出られないんじゃ、駄目じゃん。

 扉を見て、階段を見て少し考える。

 次に誰か扉を開けた時に抜け出すなら、扉前で待機しているのが正解、でも目の前にある未知なる階段の先も気になる。

 …………よし、扉の方は出ていったところだし、しばらく開かないって事で階段を下りてみましょう!

 ん~、階段の幅は一メートルくらいかな? 大人でも普通に通れそうだね、今の俺なら余裕で通れる。

 思いきって一段目を飛び下り、そのまま連続ジャンプでたった二十段ほどしかない階段を下りると、五メートル四方の部屋がありました。

 また祭壇かよ! 上の部屋の小さい版じゃないか! エッチな絵は飾られてないし鏡も無いけどさ! ここはダンジョンがあるべきじゃないの!

 ぽよんぽよんと苛立ち気味に祭壇に向かって跳びはね近付く。

 なんだよ期待させて……そうか! この祭壇も、収納しちゃえば良いじゃん!

 まったく、それならそうと言ってくれなきゃね~、普通の人なら残念がって上に戻ってるところだよ。

 ぬふふふ、しか~し、ここ最近、引きこもりの時間潰しのために、古いRPGロールプレイングゲームばかりをやっていたのは伊達じゃないぞ!

 気を取り直して祭壇に張り付き、これを収納すれば、隠し部屋からまた、隠し部屋にいけるはずだ! 収納!

 張り付いて、途中まで登っていたが、別に上で収納しなくてもと、途中で収納したため、張り付いていた祭壇がなくなり、宙に放り出されて、五十センチほどの高さから落下して、ペタンと床に着地したんだけどさ……祭壇を収納したんだけどさ、階段無いんだけどさ……駄目じゃん!

 とぼとぼど祭壇があった場所の真ん中まで進み、細かく見てみる。

 ……どこかへ続く扉が開いたりするスイッチがあっても良さそうなんだけど、なにもない……ホコリもない石畳があるだけだよ……。

 打ちひしがれたまま上への階段を上る。

 ズルズルと文字通り、体を引きずりながら階段を……。

 どれだけの時間がかかったのか分からないけど、召喚された部屋に戻ってきた。

 そのままみんなが出ていった、見上げるような扉の前まで来て気が付いたんだけど、……扉の上の方に覗き窓っぽい物があるじゃないですか!

 おいおいおいおい! それならそうと早く言ってよ~、ダンジョンやお宝は残念だったけど、とりあえずこの部屋の脱出が先だよね♪

 俺は一応部屋の中に忘れ物がないか見渡してから、扉に向かって飛び上がり張り付いた。

『しかし間の抜けた勇者様だな、いくら一時的に奴隷魔法が効いていたとしても、履いてた靴が脱げている事にも気付かぬとは』

 へ? 誰か来た? 奴隷魔法ってどゆこと? それに靴? あっ! 持ってるじゃん!

『そう言うな、召喚直後に魔道具を付けるため、仮の奴隷魔法をかけてあったんだ、あれで心神喪失してたからじゃないか』

 聞き耳を立てながら俺は扉から飛び降り、部屋の中をもとに戻すべく、走り回り、壁に絵と鏡を、それから木箱に入った剣をもとに戻して靴を落ちていたところに出しておいた。

 ふぅ、奴隷とか不穏なワードが飛び出したけど、今はこの部屋から出ることに集中しよう。

 ガチャガチャと鍵を開けるような音が響いている内に扉まで急ぎ、階段の横をダッシュで通り過ぎ――。

 ――ちゃ駄目でしょ!

 急ブレーキをかけ、石畳をズザザと滑りながら祭壇を取り出し階段を隠した。

 ガチャンドスンと鍵が開くカン高い音と、なるべく音がならないように出した祭壇の音が重なり小さく鳴った。

 出した祭壇の影に隠れ、入ってきた二人をやり過ごさないと駄目だ。

 カツカツと足音を響かせて近付いてくる二つの足音を聴きながら、祭壇を目隠しにして扉側に移動する。

「あれだな、見た感じは同じようだが、間違いない、かかとのところにある紋様も同じ物だ」

「よし、帰るか、ゆっくり帰る頃には食事の用意が終わって、謁見の間へ移動するはずだ」

 ヤバい、早すぎるよ! 間に合わないって!

 祭壇を盾に二人の通った逆側を移動して、扉側に来たんだけど、もう一人、扉の向こうに立っていた。

 幸い向こうを向いているから、見付かってはいないけど、これじゃあ外に出れないじゃん!

 ┏━━━━━══とびら━━━━━┓
 ┃絵          絵┃
 ┃絵          絵┃
 ┃絵    ┏━┓   絵┃
 ┃絵    ┃祭┃   鏡┃
 ┃絵    ┃壇┃   絵┃
 ┃絵    ┗━┛   絵┃
 ┃絵  靴       絵┃
 ┃絵 絵 絵 □□木箱 絵 絵┃
 ┗━━━━━━━━━━━━┛

 素早くバックして祭壇の影に入り、足音が通り過ぎるのを待つ。

 こうなったら後ろをついて行くしかないでしょ! せーのっ!

 足跡が祭壇を通り過ぎた瞬間を見逃さず、二人の後ろに音を立てずに追従し、部屋の外に――ぽよんと跳ね返された。

 痛っ――くないけどなに! なんなのこれ! ってか見付かる! そおいっ!

 ぽよぽよんと転がったけど、さらにみにょ~んと体を伸ばして素早く扉の影に身を隠し、扉が閉まる前にぶつかった何もないところに体を伸ばして触ってみた――。

 は? 透明な壁がある? え? じゃあ出れないって事なの?

『ぷふっ、あははははは、残念だったね~、あの人達の間に入ってればぶつからなかったのに~、そおいっ! だって、あははははは♪』

 その声はロリっ子! どういう事だよ! 出れなかったら終わりじゃん! せっかく見付けた地下は何もないし、行き止まりだし!

『ここは召喚の間だよ~、簡単に出入りできる訳ないでしょ~、最初の人と~最後の人が持ってる神器の間にいないと駄目なので~す』

 は? よく分からないけど、じゃあもう出れないって事?

『ん~、東雲友里くんは面白いから特別に――』

 え? 出してくれるの? ありがとうございます! 神様仏様ロリっ子様! 美しくて可愛い女神様はやっぱりお優しい!

 こ、ここで持ち上げて機嫌取らなきゃ、召喚されたら閉じ込められました。

 で終わっちゃう……ま、まあ可愛いのは認めるけど……。

(ふ~ん、可愛いんだ私、仕方ないわね、少しだけ手助けしちゃおっと)

『……特別に、しばらく餓死しないように食べ物だけでもって思ってたけど、可愛いとか言ってくれたしさらに特別サービスしちゃう。ほいっと』

 手助けしてくれると言ったロリっ子。

 気の抜けるような掛け声をしたんだけど、その後すぐに祭壇の上、何もないところからドサドサとなにやら色んな物を出てきた。

 ……は? 外に出してくれるんじゃないの?
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