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第一章

第102話 黒ローブ達の目的は?

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「ねえねえケント、この子裸ん坊だし~、私の買った服を貸した方が良い?」

 アンラは俺に聞きながらも自分の収納からゴソゴソと、この前買った服を取り出していく。

 見てるとドリアードは興味津々でアンラが出す服を興味深そうに見ている。

 俺も見ているんだが、いったい何着買ったんだと思えるほど次から次へと出してはしまい、結局白地の頭からかぶる上着とスカートが一体になった服に決めたようだ。

 目をキラキラさせて、アンラが『万歳してね~』と言った途端、バッとドリアードは元気よく両手を真上にあげ、ワクワクした顔でアンラが服を持ち上げるのを見ている。

 服に腕を通し、すっぽりと頭にかぶせると、ストンと足元に落ち、完全に引きずってしまって、まったく大きさが合ってないようだ。

「ああ~駄目ね~、確かベルトがもう一本あったはず……あった! これで縛って~スカートの裾を引きずらないようにっと。どう?」

ドリアードの腰に巻いたベルトの隙間から、服を上に引っ張り出してスカートの裾を地面につかないよう調整するようだ。

「おお、これなら奴らに破られた葉っぱの服より丈夫そうじゃな。お主、これはいただいても良いのか?」

 左右に体をひねり、スカートの裾と、お腹に引き上げられた余った部分をひるがえして、自分の格好を確かめている。

 止まったところを見たんだが、肩は半分出てるし、お腹の余った分がひざ上までたれさっがっている……スカートを二枚履いたみてえだな……。

 てかよ、葉っぱの服だったのか……。

「ん~、やるのはいいけど、やっぱり私のじゃ大きすぎるわね。ドリアードは大きくならないのよね?」

「そうじゃな、かれこれ数百年はこの格好じゃし、私より大きなドリアードは見たことないのう」

 腕組みをして首を傾げ、思いを巡らせているようでけどよ、数百年生きたにしちゃ見た目がちびっこだからちとなあ。
 ま、まあ裸よりマシって思うことにするか。

「と、とりあえずはこれで良いだろ、てかよ、聞きたかったんだが、あいつらの目的は何だか知ってっか?」

 またフリフリとスカートを膨らませたりして楽しんでいるようだが、これは聞いておきたいからな。

「ん? なにやら……そうじゃ! りちうむーじゃったかの、そこへぶつけるとかなんとか言っておったぞ」

 りちうむー? ああ、リチウムか。

 ってか……ぶつけるだと? ちと待て……リチウムに……ぶつける? 駄目じゃねえか!

「まあここまで集まってしまったのじゃ、そう遠くない未来に走り出すであろうな。ここまで数が膨れ上がってなければ穏便に散らす事もできたのじゃが……」

「やべえじゃねえか! 城のダンジョンから溢れた魔物と数は似たり寄ったりだがよ、ここには囲いがねえ……バラけちまえばこんなのおさえられねえぞ」

「ん~、背後に崖を背負わせる事がこの地形ならできるじゃん? またクローセにまわりを走ってもらうしかないわね」

 いや、背後が崖だからまわりをぐるぐると回りながら牽制ができねえんだ。

 どうしても一度止まって向きを変えなきゃならなくなるからな。

 いくらクローセの足が速かろうが、間を抜ける魔物が絶対出てきてしまうってのは想像できる

 一度抜け出す道ができてしまえばそこに時間を取られ、さらに抜けていくだろう。

「ふむ、一日や二日で走り出すことはないのじゃ、お主らで半分、いや、アンデッドの魔物だけでも倒してもらえるなら十日は持たせて見せよう」

「は? ド、ドリアード? そりゃどういう事だ? あっ! そうか、お前ならこのまま集めておけるって事なんだな!」

 思わずドリアードの肩を掴んで、前後にユサユサとゆすってしまった。

 カクンカクンとゆすられながらもドリアードは答えてくれた。

「そ、そうじゃ、じゃか――ら言う事をあ――まり聞か――んアンデッ――ドをじゃな、先に――倒しても――らえると――って、ゆさぶるでない!」

 ペシッと両肩を掴んでいた手を叩かれ、ドリアードはしゃがむことで俺の手から逃げたようだ。

「まったく。アンデッドじゃ、アンデッドを先に倒してもらえたなら他の魔物だけじゃったらもう少し逃さずに集めておけるのじゃ」

 しゃがんだまま四つん這いで素早く少し下がり、俺から離れると、ササッと立ち上がりアンラの背に隠れてしまった。

 そこから顔だけ出して、そんなことを言うがアンデッドを先にって事だな。

「すまねえ。ちと興奮しすぎたようだ。アンデッドを先にか」

 それを聞き、まわりの魔物達を見てみると、十匹のうち、アンデッドなのは三匹程度だ。
 このままだと近いうちにスタンピードが始まるってんなら、地下に逃げた奴らを捕まえるより、こっちを止めねえとまずいよな。

『ケント様、言いにくいのですが、私ではアンデッドの血は吸えませぬ。バラバラにして動きを止めるだけとなりますが、不死の奴らの小さな魔石を正確に狙えれば……』

「ダーインスレイブ~、あれは狙うの面倒だもんね~、小指の先くらいしかないし、私達は黒ローブの奴らをやっつけに行っておく? どうせ捕まえるんでしよ?」

 親指と人指し指で小さな丸を作り、それを覗き込みながらアンデッドが持つ魔石の大きさを教えてくれた。

 ちっせえな、そんなもの俺でも狙えねえぞ、魔法で燃やしちまえばいけんのか?

『ケント、私ならアンデッドだろうが浄化できますので、アンラには黒ローブを追ってもらいましょう』

「マジかよ! そうだな、足だけでも切ってもらえば動かなくなるんだがと思っていたけどよ、ここはふたてに別れてやるか! よし、アンラ、頼めっか? いつも通り姿を消して眠りヒュプノスで寝かせて来てくれ」

「ほ~い、まっかせなさい♪ んじゃさっそく――ありゃ……鍵がかかってるじゃん……」

 トトトと木箱に走りよったアンラが蓋を取ろうとしたんだが、鍵がかかっていて開かないようだ。
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