【完結】無自覚最強の僕は異世界でテンプレに憧れる

いな@

文字の大きさ
12 / 241
第一章

第12話 贋金大量

しおりを挟む
 僕はギルドマスターを睨み付けました。

「あの! 渡すのは隊長さんにではなくて僕達にですよね!」

 ギルドマスターと隊長さん、そしてギルド内の皆さんが僕に視線を集め、耳を澄まします。

「い、いや」

「それに僕達をこの大勢が見ている前で犯罪者呼ばわりした謝罪も頂いておりません!」

「チッ、ガキがちょっと間違えただけじゃないか、鬼の首を取ったように意気がるんじゃねえぞ、これ渡したらさっさと出ていけクソガキ共が!」

 もう、完全に怒りましたよ! お父さん、家名を使わせていただきます!

「ギルドマスター、正式にサーバル男爵家ライリール・ドライ・サーバルとして、謝罪を求めます! 見た目で判断するなど、不愉快です!」

 その言葉を聞きサーっと青ざめるギルドマスター、追い討ちを掛けるようにティも言葉を発します。

「ブラフマー公爵家嫡子、シャクティ・アン・ブラフマーからも、謝罪? そんな物では済ませませんよ! 大変不愉快です!」

 男爵の次に公爵家が出てきてギルドマスターは青から白に変わり、ガタガタ震えだし、持っていた金貨は手からこぼれ落ち、“しんっ” としたギルドの床に落ちて、“キン” と音を立て、転がり僕達の足元に転がってきました。

 ギルド内の皆が跪き、ギルドマスターと、僕達以外で立っている者はいません。

「皆さん、皆さんはお立ちください、普通に接して貰えた方が嬉しいので」

 皆さんは、そろ~っと立ち上がり、静かにこちらを見ています。

「ところで、それがギルドマスターの謝罪の仕方ですか? ティ、僕は三男ですからこれもありだろうとは思うけれど、ティは嫡子だよね、お父さんにこのギルドマスターって怒られるよね?」

「怒られますわね、帰った後、報告すれば、このギルドマスターさん処刑もあり得ますね」

「ライ君ではなくて、ライリール殿、貴族様だったのですね」

「はい、継承権は兄に有りますが、僕は十歳で家名を持ったまま冒険者になりましたので、成人までは一応貴族ですね、成人すれば、一個人になりますけれど、なのでライで良いですよ」

「あはは、俺と一緒だな、三男からはよほど金持ちの貴族でも無い限り、冒険者だよな、俺は父のつてで、衛兵になったが、おっとそれよりギルドマスター、私は貴方を不敬罪で捕らえなければなりません、公爵家の嫡子、シャクティお嬢様のお父上は子煩悩とお聞きしているのでな、おい、拘束せよ!」

「「はっ!」」

 カウンターの中に向かう衛兵達を見て、ギルドマスターは、「身体強化!」と叫び、その場から一気にカウンターを乗り越え、ティに向かって収納から取り出したであろう刃渡り四十センチ程の短剣を突き刺すように加速しながら向かって来た。

「死ね! 鎧通し!」

 技名なのか、叫びながら、ティに突っ込んできましたが、僕はギルドマスターの魔力を限界まで無茶苦茶な方向にぐるぐる回す。

 ぐるぐるさせながら短剣を避け、ギルドマスターとティの間に入り、左袖を掴み、さらに懐に入り込み袖を下に引き下ろすと同時に背中を使ってギルドマスターの体を押し上げました。

 ズダンッ

 背中からギルドマスターは床に叩き付けられ、さらに魔力欠乏で気絶をして、泡を吹き動かなくなりました。

「隊長さん、捕縛お願いしますね」

「あははは、いやいや、流石に今のは焦ったが、ライ君、ティお嬢様、危険に晒してしまい申し訳ない、しかし盗賊を捕まえた程だ、ライ君が強いのは当たり前か」

「あははは、勢いを利用しただけですよ、元ギルドマスターもあのまま捕まっていれば、もしかしたら奴隷落ちで済んだのかも知れませんが、ティを狙うなんて、同情の余地もありませんね」

 ティは僕に数歩ですが小走りに駆け寄り、ぎゅっと僕の胸に抱きついて来ました。

「こ、怖かったですわ」

 ぷるぷる震えるティを抱き締めかえし、優しく背中を撫でてあげます。

 テラも肩からティの頭をぽんぽんと叩き、ムルムルは僕の頭からティの頭に乗り移り、ぷるぷる。

「大丈夫ですよ、僕がティを護りますから」

「は、はい」
(ああ、どうしましょう、凄く胸がドキドキしますわ)

「よし、ギルドマスター、いや、元だな捕縛して、牢に叩き込め!」

「「はっ!はっ!」」

 衛兵さん達は気絶した元ギルドマスターをロープで縛り上げ、二人がかりで隣の詰め所に連れて行きました。

「ライ君、ほら、ん? 軽いな?」

 隊長さんが落ちた金貨を拾い上げ、僕に渡そうとして、何やら呟いていたと思ったら、ナイフを取り出し金貨に傷を着けました。

「チッ、罪が一つ増えるかも知れん、この金貨は偽物だ、奴の収納の中身を調べろ! 奴隷の首輪を使用しても構わん!」

「はっ!」

 なんと、渡そうと自分の収納から出した金貨は贋金にせがねでした、この事を知って報酬として渡そうとしていたなら、何と言う罪かは分かりませんが、罪状が増えることでしょう。

 衛兵さんがまた一人、冒険者ギルドから隣の詰め所に走り去ります。

「サブギルドマスター! ギルド内の貨幣全ての精査を!」

「は、はいぃ~!」

 おお、奥でエルフのお姉さんが返事をして、一つだけ大きい机に駆けて行き机の引き出しから鍵束を取り出し、その後ろにあった金庫を開け、鑑定をしようとしているところに、隊長さんが一言。

「偽装の魔法が掛けられているかも知れない、表面に傷を付ければ偽装は解ける」

「は、はい!」

 ふむふむ、ならぐるぐるして偽装を解いてあげましょう♪ ほいっと♪

「なっ! 手に持っていた物も傷を付けるまでもなく贋金になりました! 金庫内は······大銀貨以上が全て贋金ですよ!」

「おい! 俺達さっき大銀貨貰ったところだぜ! これも偽物か!」

 横のカウンターで依頼完了の報酬として貰った大銀貨をカウンターに叩き付け、お怒りの様です。

「あっ、お兄さん、僕が見てみましょうか?」

「へ? き、貴族様!」

 僕が隣にいたことを忘れていた様で、“びくぅ” ッとなってます。あはは。

「ほいっと!」

 銀貨は魔力を帯びていましたから、偽物だとは思いましたが、やはり偽物でした。

「偽物ですね、他の方は大銀貨以上持っている方がいるなら、偽装を解除しますので僕のところに来て下さい」

 お兄さんはペコペコと頭を下げ、他の大銀貨以上を持っている冒険者達は一列に並び、僕はティを抱き締めたまま解除して行き、八割が偽物と判明しました。

「隊長さん、贋金が沢山出ましたね」

「これは、個人で出来る範囲を越えているぞ、というかその力はなんだ? 魔法?」

 頭の上に、“?” を浮かべた隊長さん。

「いえ、魔力をいじって本来の働きをさせない様にしただけですよ、頑張ればたぶん誰でも出来ますよ」

 僕の耳元で小さく「無理ぃ~」とテラが言ってますが、継続して頑張るのがそんなに難しいのかな、あはは。

「そうなのか、他の魔力、と言うか魔力が弄れるなんて初めて聞くが」

 さらに、“?” の数を増やした隊長さん。

「そうだ、すまないが、先ほど渡した貨幣は無事か?」

 収納から出して調べる事にしましょう。

 ギルド内の視線が僕に集まる中、少し照れますが。

「そうですね、ほいっと! はい、魔力は帯びていないので大丈夫ですね、良ければ、詰め所の貨幣を見てみましょうか? ここでは報酬貰えないようですから、あっ、ちょっと待ってて下さいね」

 僕はサブギルドマスターさんに冒険者の登録と従魔登録とパーティー登録を頼みました。

 なんと、ムルムルの登録は当然のことです大丈夫でしたし、ティはいきなりEランクになり、テラも、「私は従魔ではなくて冒険者!」って、カウンターの上でサブマスターに熱弁して冒険者登録が出来てしまいました。が、テラはカード持てないので僕が一緒に持っておきますが。

 その後、詰め所に戻り、貨幣を精査して、少量ですが贋金が見付かり、今は元ギルドマスターの詰問に立ち会わないかと言われましたが、今夜の宿も取れていませんでしたからご辞退。

「流石国境の街ですわ、宿がこんなに沢山あります」

 衛兵さん達に教えて貰った宿が沢山建ち並ぶ通りを馬車で進み、隊長さんおすすめの宿に馬車を停め、滞りなく部屋も取れて宿の確保完了です。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...