【完結】無自覚最強の僕は異世界でテンプレに憧れる

いな@

文字の大きさ
31 / 241
第一章

第31話 捕縛

しおりを挟む
 お城を騎士さん達と出て、魅了魔法を解くためのぐるぐるを済ませた後、商人街の中でも王都で一、二を争う大きな商会の近くに来ました。

 どうやって? 馬車では音が五月蝿いため歩きで騎士さん達は革鎧に変え金属音を立たせないようにして足音も立てないように慎重に移動してきました。

 何か所かあった少人数の所にも騎士さんを残し、さらに移動。

 ここが商人街の中で一番魅了魔法があった場所で、魅了を解き少しザワザワとしているのが聞こえます。

 少ない人数の、商会にも別動隊が動いていますので、今頃は踏み込んでいるはずですから、僕達はこの商会に集中します。

 商会の入口から騎士さん達が門番さんと話をして大扉開いて貰い中に入ります。

 その際、一応抜け穴もコションから聞き出していて、そちらにも人員は配置済みなので逃げる事はまず無理です。

 案内してくれている門番さんに続き、お屋敷の中に入ったのですが、入って直ぐのホールに沢山の人達が集まり騒然となっていました。

「静まって下さい!」

 騎士さんの声に騒いでいた人達が一斉にこちらを向き、騎士さん達の姿を見て、止まりました。

 僕は小声でテラにお願いをします。

「じゃあテラ、一緒にお願い出来るかな? 僕だと詳しいところまで分からないから」

「任せておきなさい! んん神眼~!」

「ありがとう♪ 鑑定!」

 テラも僕も、騎士さん達の後ろから、こっそり称号を見て行きます。

 集まっていた十数名の内、二人の盗賊ギルド員がいましたので、騎士さんの手をつんつんして、小声で伝えると、隊長さんが商人さん達と話をしている内に素早く皆に伝達して行動を起こすタイミングを図ります。

「あの、僕があの寝間着の二人を」

「ライ、五人よ、偽装している奴が三人、あの壁際に並んでいる三人も盗賊よ」

 流石テラ師匠♪

「分かった、あの三人だね、皆さん僕がその五人を動けなくしますので拘束をお願いしますね」

 騎士さん達は半信半疑な顔ですが、頷いてくれました。

「行きますよ!」

 一気に魔力を回して上げると、中央に来て隊長の話を聞いていた二人は崩れ落ち、壁際の三人も、壁に背中を擦らせながらその場に座り込むように気絶しました。

 それを見た商人達は驚きこそしましたが、隊長さんが説明をして、寝間着の二人は商人さん達も鑑定をして納得し、壁際の三人も、装備していた腕輪を外すと偽装が外れ、称号が見えるようになりました。

「ここにいる人以外はどこにいるか分かりますか?」

「いいえ、今日はこの屋敷の持ち主、その壁際の三人に集められたのです」

 ふ~ん、この三人は偉い人だったのですね。

「ここにいる者達で商人ギルドの役職持ちは全員揃っております」

 商人ギルドの集まりがあったのですね、

「その、この寝間着で倒れている者は小さな商会で最近売り上げを伸ばしてきたあの三人の弟子と聞いていたのですが、この会では出席者ではありませんでした。この屋敷に住み込みしていたと聞いております」

 着崩れた寝間着ですもん、お話しする格好ではありませんし、他の人は清潔な白のシャツに高そうではあるけれど派手派手では無い服を着ていますものね。

「後は個々の商会にいるとは思いますが、王都から出ている者はどこにいるかまでは」

「ふむ、外は仕方がないか、よし話はここに残る者と進めて貰うとして、拘束を!」

 騎士さん達は素早く五人を拘束をし終え、外の馬車に放り込んでしまいました。

 次は魅了の魔力を崩した魔道具を回収して貰い、この屋敷の捜査のため騎士を十名残し残りはスラムに向かいます。

 ここには盗賊、暗殺のギルドがあるので、お城から騎士さんと衛兵さん達も追加で包囲、外に抜ける通りを全て封鎖、抜け道にも騎士さん達を配置してしまいます。

「ねえ、さっきの偽装の魔道具を全部使えなくしてからなら、ライでもギルド員を探れるわよね?」

「そっか! 夜だしみんなには寝て貰うつもりをしていたけど、それなら分かっちゃうよ♪ じゃあやっちゃうね、ほいっと!」

 お城の敷地よりは小さいので、十分スラム全体の気配を探れます。

「うんうん、沢山あるね。あっ! 地下にもいっぱいある! 騎士さん、偽装の魔道具と併せて気絶させちゃいますから、お願いしますね♪」

「はい、ライリール様、いつでも踏み込めます」

「ありがとうございます、せ~の、ほいっと!」

 ぐるぐるを一気に加速させて行き、偽装の魔道具を持っていた者はこのまま続けて、スラム全体を鑑定して行きます。

「ん~、偽装の魔道具をしていない方はギルド員ではない方ばかりですね」

「あら、そうなの? じゃあそろそろ、騎士さん達を動かす頃合いじゃない?」

「そうだね、隊長さん、そろそろお願い出来ますか?」

「分かりました。よし! 伝達! 踏み込むぞ!」

 小さな声ですが、騎士の皆さんは頷き、走り出しました。

 僕は隊長さんと一緒に、古ぼけた掘っ立て小屋に入り、入口以外に一つしか扉がない部屋に入り、奥の戸を開け進むと、ぽっかりと開けた中庭に出ることが出来ました。

 中庭にあるのは屋根付きの井戸だけですが、その井戸の裏側に地下に下りる階段が井戸の蓋で隠されてあり、そこが地下への入口のようです。

 隊長さんと僕が最初に入り、その後を次々と騎士さんが地下に下りて行きます。

 僕と隊長さんが一緒に、大人二人が並んで歩ける幅がある階段を下りて行き、突き当たりのドアは魔法の鍵なので僕がぐるぐるして開けちゃいます。

「任せて下さい、ん~、ほいっと!」

 カチャ

 軽い音を立て鍵が開きましたので、中に進みました。

「はわぁぁ! 広いし明るいですね!」

 そう、中は所々太い柱はありますが、一辺が二十メートルほどある広場で、その壁にはいくつもの扉があって、部屋があるみたいです。

「ああ、これ程広い地下を作り、拠点にしていたのですか······これは見付からないはずです」

 隊長さんも半ば呆れながら、部屋全体を見渡しています。

「では扉の鍵は僕が開けていきますね」

 端から順にぐるぐるさせて鍵を開けていきます。

 そして扉が無い所の奥はさらに通路がありそこにも扉が並んでいました。

 それから地道に鍵を開けて行き、やっと最後の鍵を開け終わりました。

「よし、完了!」

 だと思ったのですが、途中の部屋のさらに奥にまだ通路がありました······。

 それから三か所の通路が発見され、もう、眠くて仕方がない、「なっ! モイヒェルメルダー伯爵様がいたぞ!」「奥様もだ!」「なんて事だ! 二人ともギルマスじゃないか!」「拘束して、他の者とは別の馬車へ!」朦朧もうろうとして目も半分閉じた状態で開けきり、外に戻って誰も乗っていない馬車で寝させて貰いました。

 おやすみなさい······。

 ガタガタガタガタ

「ふぁぁぁ~、ん? 捕縛が終わって帰るところでしょうか」

 馬車の座席に寝ていたのですが、あははは、またムルムルとテラは胸に乗ってますね。

 そっと持ち上げ体を起こして、膝に乗せ、この事が終わった後どこに行こうか考えます。

「誰この人達? あっ! この馬車も捕まえる用の馬車だったのですね。あはは」

 見てみると、ギルドマスターさん達ですね(笑)、クションのパパとママですか······それに子爵なのね。

 ん~、この二人は痩せているのに、なぜクションはあそこまでブクブクしちゃったのでしょう?

 って、関係ないですね♪ これから夏だから海! を見たいところですね。確か東の森を抜ければ海があるはずでしたね。

 確かエルフさん達が住む森とは正反対で、魔物の宝庫と本に書いてありました。

 うんうん、危険かも知れませんが、でも海は必要ですね。

 でも、中々お城に到着しませんね? 起きてから結構時間が経ったように思うのですが?

「まあ、ぐるぐるさせて時間潰しを再開しましょう♪ ほいっと!」

 場車内から外へ広げて行くと······。

 あれ? 馬車の周辺にいる方達が偽装の魔道具を持っているのですが? どうしてでしょう?

 僕は、ムルムルとテラを座席に下ろし、馬車の天井の開口部をそ~っと梯子を登り開け、外を覗くと走る何台もの馬車を囲むように馬さんに乗って、真夜中の王都を結構な速度で進む、盗賊と暗殺ギルドの集団でした。

 ありゃ~、騎士さん達がいないので捕まえた人達を奪われちゃった様ですね、あはは。

 門に向かって、王都を出るつもりのようですね、正面に篝火かがりびで浮き上がって見える門がみえますし。ん~、もう少しで王都の門前ですね。

 でも~、逃がしませんよ~♪ 偽装の魔道具と、あわせてぐるぐるですね♪ ほいっと!

 この集団に付いて移動していて、偽装の魔道具を持っている人達全員の魔力を加速させて気絶させて行きます。

 次々に落馬する盗賊と暗殺ギルドの面々、乗り主がいなくなった馬さんは速度が落ち、馬車の速度も、人が全力疾走しているくらいから、ジョギング、徒歩、といった具合に徐々にゆっくりになり、門前で止まりました。

 門前では兵士達が、戦々恐々として、身構えていましたが二十メートルくらい手前で止まったので、ホッとした顔が見受けられました。

 僕は馬車の屋根に上り、門番さんに声をかけました。

「門番さん、お城の騎士さんに連絡して下さい、この方達は盗賊と暗殺ギルドの人達なので♪」

 門番さん達は、鑑定をした人がいるのか口々に、「本当に盗賊だぞ!」「こっちは暗殺ギルドだ!」「すぐに王城に走れ!」「こいつらを縛り上げるぞ!」「応援を呼べ!」と門前は真夜中だと言うのに、物凄く賑やかになってしまいました。

 王城に馬を走らせる者、気絶した者を縛り上げる者、僕の方に来る者。

「すまないが、君がこの者達を気絶させたのかい?」

「はい♪ 今夜、騎士さん達とこの人達を捕まえる作戦をしていました」

 そう言うと、訝しげな顔ですが、騎士さん達が来ればすぐ分かるのにね、あはは。

 騎士さん達が来たのは三十分ほど経ってからでした。
 
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...