【完結】無自覚最強の僕は異世界でテンプレに憧れる

いな@

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第三章

第70話 ダンジョンへ向けて出発ですよ

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「ひゃっほ~い♪」

 バッシャーン

「私も行きますよ~そぉ~れぇ~♪」

 バッシャーン

 海賊退治から一週間が過ぎ、僕達は新たに見つけたお宝の島にいます。

 アクーパーラの産卵場所を見に行き、そこからの海賊達が来た方向を探るとやっぱり最初のお宝島と同じ魔道具の反応があり、そこに転移すると砂浜から少し高台に上がった場所に隠されていた宝箱。もちろんお宝はいただきました。

 半日ほどみんなで色々着飾ったり、装備して遊んだ後、この島を調べて回り島周りは本当に何もなかったのですが、なんと崖に囲まれた内海があったのです。

 外海からは小舟がギリギリ通れるかどうかの穴があって内海に繋がっています。その内海は外敵もおらず安全に泳ぐ事ができる環境でした。そこで海賊船の一番小さな船をその内海に浮かべテント代わりと、今やっていたように飛び込み台代わりになっています。

 それからケット・シーですが、あれからも一度として起きる事はなく船の中で寝ている状態です。

 テラに聞くと、『良く寝る種族とは聞いていたけど······』体に外傷もなく、変な称号も無いので、『まあ起きるまではお楽しみはお預けね♪』と言ってましたので、一週間経った今は特に心配はしていません。

「ほらあなた達そろそろ休憩の時間よ。上に上がりましょう」

「は~い♪」

 そんなテラもムルムルに乗ってプカプカ浮かんだり、ムルムルから飛び込んだりして楽しんでました。

「じゃあ行くよ、転移!」

 パッ

 そんな日々をさらに二週間続け、そろそろ王国のダンジョンに行こうと夕ごはんの時に決めた時でした。

「なんにゃ? ここはどこにゃ?」

 ケット・シーが起きたようです。

 事前にテラからケット・シーは喋ると聞いていたので驚きはしませんでしたがやっぱり初めてなので少しだけ僕とプシュケはビクッとなりました。

 でも最初が肝心です。

「こんばんは。僕はライ。ここは海に浮かぶ小さな島だよ」

 早速自己紹介からだよね。
 ケット・シーはもぞもぞ起きてお座りをしています······正座······可愛いですよ~!

「私はプシュケ。猫さんよろしくね」

「私はテラよ! そして私の騎獣ムルムルよ!」

 二人も、そしてムルムルも突起をのばしてゆらゆらさせています。

「なんだか分からにゃいけど、リントのにゃまえはリントにゃ。ここはどこにゃ? 確か磯にあった大岩の上で日向ぼっこしてたはずにゃんだけどにゃ~」

「たぶんその時に捕まって海賊の船にいたんだよ。そうだ、どこか調子悪いところとか無い?」

「にゅにゅ? にゃ~、大丈夫にゃ。じゃあ助けてくれたのにゃね」

 立ち上がったり(後ろ足で)、なぜか脇の下とか肉球とかしっぽとかを見ている姿がまた可愛いのですよ。

「良かった。リントって寝たまま起きないから」

「うんうん。撫でてももふもふしても起きませんでしたよ」

「そうね、私がたまに寝台代わりに使っても起きなかったわね」

「ああ~、ケット・シー仲間の中でもリントは寝起きが悪いって評判にゃ」

 そう言うと、後ろ足で立ち上がったまま腰に前足? もう手で良いかな。手を腰にあて、胸を張りながらドヤ顔です。

 いや、猫さんってドヤ顔できるのですね。

「ところでにゃ、ここから森に帰れるにゃ? 塩の香りしか辺りからはしにゃいんだけど?」

「ここは海の真ん中の島だから森には繋がっていないよ」

「にゃ! にゃんですとー! ダメにゃ、困ったにゃ、どうしたらイイにゃ、泳ぐかにゃ、リント泳げなかったのにゃー!」

 リントは甲板を二足で走り船縁に行くと飛び上がって船縁に着地······。

「本当にゃ、こんなところ知らにゃいにゃよ······どうすれば良いにゃ」

 もう少し可愛い動きを見ていたい気持ちもありますが、可哀想なので転移で送って上げましょうかね。

「まあ良いかにゃ。帰っても寝るだけだしにゃ~寝るだけにゃらどこでも一緒かにゃ、そうと決めれば寝るにゃ!」

「「おい!嘘っ! 心配したのに!それで良いの!」」

「どうしたにゃ? みんなにゃんで怒ってるにゃ? リント悪いにゃ?」

 今度はしょぼ~んとしてしまって、項垂うなだれています。

 あはは。仕方ないですね。

「リント、ちゃんと森には帰れますよ。王国の東の森で良いのかな?」

「にゃ?」

 船縁の上で項垂れてたリントは飛び降りるやいなや中々の早さで僕の胸に飛び込んできて鼻と鼻がピトッとくっつきました。

「ライといったにゃ? 帰れるにゃ?」

「うん。大丈夫だよ。でも今日はもう夜だから明日の朝に僕達と一緒に森に行こうか」

「あ、あ、あ、ありがとにゃぁぁぁー!」

「あははは。ほらほら落ち着いてね」

「うんうん。ライ達良いやつにゃ、ケット・シーの加護をやるにゃ! 滅多に与えるものではないにゃよ! そ~れっ!」

 リントは僕の胸から飛び退き甲板に着地。それから二本足のままくねくねちょっとへんだけど踊り始めました。

「うんうん♪ 昔一度だけ見たことあるけれどケット・シーならではの体の柔らかさを使わないとできない踊り。ライ、プシュケ、中々見れないのよ✨しっかり目に焼き付けておくのよ♪」

「この者達に夜を見通すケット・シーの加護を与えるにゃ!」

 リントがキメポーズでしょうか、くるくるとか回転し出したと思ったらピタリと僕達に肉球を向け、肉球から淡く輝く光が放たれ僕達が包まれました。

「これで決まったにゃよ」

 そう言って光が収まったと思った瞬間。

 篝火かがりびが届く範囲以外は夜の闇だったはずなのに、ぱあっと視界がひらけ、見えていなかった夜の景色が鮮明に、いえ、暗いままなのにスゴく良く見えるようになったのです。

「凄い凄い! 凄いよリント! 真っ暗だったのに凄く良く見えるようになったよ」

「はわわわ! 本当です! なんて事ですか!」

「ぬふふふ。良い加護を貰ったようね、これから向かうダンジョンで役に立つ能力よ」

「にゅふふふ。踊りはなくても加護は付けられたんにゃけどおまけにゃ!」

「「おまけなの!おまけなの!」」

 僕達三人の声は、『にゅふふふ』笑うリントの声と合わさり、良く見えるようになった夜の景色に広がっていきました。

 そして翌朝東の森に転移してリントとのお別れの時間になりました。

「リントまた遊びに来るからその時もよろしくね」

「私の故郷でもあるし、また来ますね」

「リント、まあ短い付き合いだったけれどあなたの踊りは忘れないわ」

 ぷるぷる

「にゅ~、ここどこにゃ? 知らない森にゃよ。森違いにゃ、もっと北の方にゃよ、生えてる木が全然見た事無い物ばかりなにゃし」

「え? 北ってそんな大きな森ってあったかなあ?」

「私はこの森しか知りませんし」

「ん~、北ならラビリンス王国方面へ行くしかないわね。あの国と帝国にまたがってある森は大陸一の大きさだから。ちょうど良いじゃないダンジョン行くんでしょ?」

「うん。そうだね、リント、僕達としばらく一緒に旅してリントがいた森に送るよ」

「はいにゃ。よろしくにゃ♪」

 僕とテラ、ムルムルの三人から、プシュケが加わり、リントが加わりました。

 僕達は、僕が東の森に入って来た場所に転移、しばらく帝国方面の道を進み、途中からラビリンス王国への分かれ道に進むと決め、歩き出しました。



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