渇愛

あんず

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テラ。

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「母さん、先帰っていいよ?」


「あら、そぉ?

お友達とゴハンでも食べるの?」


「あ~っ     コウと食べてく。」


「じゃっ      気をつけてね。」

そう言いながら
イクの母さんは手をヒラヒラさせて
帰って行った。


オレはイクの母さんにペコリと頭を下げた。




「コウ、行こ。」


「うん。」


「おばさんに連絡しとけよ?」


「うん。」




オレは先に帰った母さんにメッセージを
送った。



イクは黙ってオレの手を引いて
ゆっくり歩いた。












昇降口でローファーに履き替える。


「コウ、明日出る?」


ライブの事を言ってるのだろう。




「うん。」


「じゃっ、行くわ。」


「うん。」









校門の所でイクの仲間が待っていた。



「イク~どこにする?」


「あ~        ファミレス?」


「オケ。」


「なぁ      そいつも行くの?」











さっきまでニコニコしていたイクが

無表情になる。


それに気付かない仲間が続ける…。


「イク~      そいつ何にも話さな……」


「テラ、止めろよ。

剣持も一緒に、行くんだよ。

なっ    イク?」







イクは黙ったままで、

オレのために怒ってくれているみたいだ。



オレは何だか嬉しくて

イクの手を握りかえした。













「テラ。

俺、気に入ったって言ったよな?」


「……」

寺田は納得いかないようだ。





そりゃそうだ。

ずっと友達だったこいつらにしてみれば

『お前誰だ?』って言いたくなるはずだ。

でもそれを言わせないイクが

中心的存在なのは分かった。





「イク、悪いな。

テラさぁお前が剣持にくっついてて寂しいみたいだ。」

「なっ…アベちゃん何言っ」


「そうそう。テラ寂しがりだからさぁ~」


「ちょっ   ヤマヤンまで    」





「……て事で、イク行こうぜ?」












オレはもう一度

イクの手を握りかえした。

イクはテラに見せつけるように

オレの肩に手を回した。



「ん。行こ。」











今は居心地悪いが

イクがオレを分かってくれているようで

嬉しかった。


















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