渇愛

あんず

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焼肉。

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『今日は美波が泊まりで仕事なんだ。

郁弥、久しぶりに2人でゴハン食べに

行こう。』


ヨシ兄からメッセージが届いた。






『焼肉』


返信した。






電話がすぐ鳴る。

「どこでもいぃ?」


「ん。」


「直ぐ行くね。」


「出てる。」







「母さん、

ヨシ兄とゴハン食べに行ってくる。」



「あら   いいわねぇ~

母さんも栞菜とデートに行こうかな~

一応カギ忘れないでね?」



「ん。行ってくる。」


「いってらっしゃい。」



母さんはいつも明るい。

母さんの笑顔は大好きだ。




玄関を出るとちょうど
ヨシ兄の車が横付けされた。






「あっ……373」




今まで気付かなかった。

じゃあミナ兄の車は……448?






「郁弥乗りなよ~お腹空いたよぉ。」


「ゴメン。

ヨシ兄、聞いていい?」


「何?」


「ミナ兄の車のナンバー。」


「……448……」

ヨシ兄の顔が真っ赤だ。


「俺、今まで気付かなかったよ?」


「聞いたんだろ?

やめてくれよ。ハズカシイ……。」

もう、耳まで真っ赤。


「ヨシ兄、ミナ兄のこと大好きなんだな?」


「当たり前だろ?……
結婚相手なんだから…」










ヨシ兄は

個室になっている
高そうな焼肉屋に連れてきてくれた。




「何がいい?」


「美味しいの。」


「ん。」








ヨシ兄は

「料理は任せます。

運転してきたから飲み物はジャスミン茶で。」







料理が運ばれて驚いた。

この個室の担当者がいて俺らの食べ具合で

肉を焼いてくれた。



「ヨシ兄、凄く美味しい。

ありがと。」



「ヤケに素直だな?」


「まぁね。」


「俺と美波の話しは聞いた?」


肉を頬張っていたからそのまま頷いた。



「美月の母親の話しは?」


欲張り過ぎた…。
仕方なくそのまま首を振る。




「そっか。    美月にはこの前話した。

『誰の子』って悩ませちゃったみたいで
可哀想な事したよ。




郁弥も聞くだろ?」


「ん。」




俺はチラッと肉を焼いてくれる担当の人を見た。

「大丈夫。この人は何も言わないよ?」



「ヨシ兄に任せるよ。」



「ありがと。

美月は戸籍上、俺の実子。

母親は『弥生さん』。

美月を産みながら亡くなった。

だから美月を捨てたんじゃない。

父親は美波。

美波の血を分けた息子。

弥生さんが亡くなって直ぐに
美月の事を知って、
どうしても美波の子供を他の人に
渡したくなくて俺が18の時に引き取った。」











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