渇愛

そんなの……。

「あのね。

みんな心配かけちゃってゴメンなさい。」



「姫どうした？」

「ミキちゃん？」


陸くんと空センパイが同時に言った。





「あのね……郁弥なんだけどね。

事件に巻き込まれてケガさせられちゃったの。」



「姫、事件て？」

凪さんが聞く……。



ミキちゃんは話そうとするけど震えてるみたい。

ノブがミキちゃんの手を掴んだ？

驚いた顔のミキちゃん……


「おいで。」とノブがミキちゃんに声をかけて胡座をかいた膝をポンと叩いた。

ミキちゃんは恥ずかしそうにしていたけど
もう一度ノブが膝を叩くとポスっとノブの胡座の上に座った。


驚いた……


ノブ？


ミキちゃんの隣りにいていいのは

……イクと空センパイだ……


ノブが震えるミキちゃんの身体を背後から抱きしめた。


ノブだめだ。
ミキちゃんを抱きしめていいのは

……イクと空センパイだ……





「……信夫…ありがと…」

「ん……」



ミキちゃんとノブの短い会話……

二人の間に温かい空気が流れる。




そんなの……ダメだ……。





「あのね……

男の人に…ホテルに連れて行かれて
……睡眠薬みたいの飲まされて悪戯されたみたい……

郁弥、ケガさせられてね死んじゃうかもだったの。

出血が多くてね……発見までに時間が経っててね……。

でもミナ君が手術してくれて命の危険はなくなって、僕がココに帰る前に意識は戻ったの。


朝から皆んなに心配と迷惑かけちゃってゴメンね。」





何の話し？




ミキちゃんは震えながらも一生懸命オレたちに説明してくれているのが『ウソ』じゃないと物語っていた。





あのホテルの部屋でミキちゃんは
イクの傷ついた身体をオレに見せないように
イクの自尊心を傷つけないように
シーツと毛布で隠した……。




ミキちゃんのイクに対する『想い』を
見せつけられた気がした。






「姫、迷惑なんて思ってない。

イクは俺らの仲間で後輩だ。

とりあえず一安心でいいんだな？」

凪さんが聞く。




「うん大丈夫。」



ミキちゃんの『大丈夫』に安心のため息を吐き出した。