魔族とわたし

魔族とわたしの出会い

とある町外れの山奥に住んで長いことなる。
私もすっかり中年のおばさんになってしまった。
外は暗くなり雪が降り積もり、静かで真っ白な冷たい世界になっていることであろう。
暖炉の前で自分の足を摩る。
数年前。この国は魔族との戦争で疲弊していた。
そこに魔族と対抗しうる血筋をもつもの達が現れ、魔族を統べる魔王討伐のために、彼らは戦闘の英才教育を受けてきた。
私もその一人だった。
だが。修行の最中に崖から落ちて怪我をした後遺症で勇者から降りられざるえなかった。
周囲から役立たずと罵られ、見放され、仕方なくこの土地に着いた。
だがなんとか一人で時給時速の生活をしている。
畑仕事は何とかこなし、近くに川だってある。
生きていく分には困ることはない。
それが戦闘となると話は別だが。
その時。玄関のドアを叩く音がした。
誰だ？
私はドアに近づいた。
扉の向こうから強力な魔力を感じた。
まさか...
ドアを開けた。
目の前には誰もいなかった。
いや足元にいた。
小さな子供だった。
その子はボロボロの布を体に巻きながら震えた声で言った。
「あの...すみませんが...なんでもいいので、何か恵んでくれませんか？」
意を決したような声で、ボロボロの布をぎゅうと掴みながら言った。
「...寒いから中へ入りなさい。」
私の言葉にその子は顔を上げた。
その瞳は夕焼けの暁の空のように赤く輝いていた。