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ドラゴンクエスト編
24話 ヒビキの身元
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国王が普段から身に付けている服を借り、もこもこの赤いマントを羽織った。
靴も国王が使っているものを借りると、王冠も本物を着用する。
少しでも国王に姿を近づけるために出来るところは真似をした。
しかし、ヒビキがは自信を持つことが出来ずにいた。
だから、いきなり目の前に現れたギフリードに国王の影武者かと問いかけられた時は、咄嗟にガッツポーズをしてしまいそうになるほど喜んでしまう。
嬉しさが表情に現れているかもしれない。
「ちゃんと、国王に見えるか?」
背筋を伸ばして、まっすぐギフリードを見る。
もう一度、確認をするように自分が国王に見えているのかギフリードに問いかける。
「あぁ。本物だと思った」
即答だった。
しっかりと目を見て言い切ったギフリードに安堵する。
お人形さんのような印象を人に与えていた少年が流し目をすると、切れ長の鋭い目が出来上がる。
華奢な体つきは眩い装飾品で飾られた服と大きなマントで隠していた。
切れ長の鋭い目。
水色の瞳。
国王に瓜二つ、そっくりな人物が真っ直ぐギフリードを眺めている。
眩い服に身を包み、もこもこの赤いマントを羽織る影武者は国王とは違って口数は少なく、表情も先程から変化が見られない。
「人間界に住まう国民に、この姿を見せようと思うんだ。国王が封印を受けた事を知り混乱が広まりつつあるから」
「その姿を見れば、混乱は収まるだろうな」
本物の国王と見間違うほど、そっくりな顔立ちをした影武者の言葉にギフリードが賛同した。
国王の封印の知らせを耳にして戸惑う国民達の前に姿を現したい。
安心させたいと言った影武者に対してギフリードは興味を抱く。
国王と瓜二つ。
近くで見ても、そっくりな容姿を持つヒビキの元に歩み寄る。
影武者の正体がヒビキである事にギフリードは気づいていない。
そのため国王が不在の今、人間界を影で操っているのは影武者である彼だろうとギフリードは考えていた。
「ありがとう。自分の考えに自信を持てた」
賛同したギフリードの言葉に自信を持ったヒビキが国民の元へ向かうために身を翻す。
歩き出したヒビキが扉の前から退いたため、それはギフリードの視界に入り込んだ。
丁寧に折り畳まれた状態でベッドの上に置いてある狐の耳付きの白いケープと、壁際に置いてある黒いブーツ。
ギフリードが探す少年が纏っていたものだった。 白いケープを羽織った少年は人の形をしていた。
そのため、共食いにあい食べられてしまったのだろうかと恐ろしい考えが一瞬、頭の中を過る。
室内を覗き込み見渡してみるけど血液は見当たらない。
肉片が散乱している様子もなく室内は綺麗なままだった。
魔界では食料が減る時期になると必ず共食いをする者達が現れる。
果たして国王の影武者を務めている青年が食べ物に困っているのだろうかと考えたギフリードが考えを改める。
あれが、白いケープの中身か。
ギフリードの中で自然と答えが浮かび、先程の影武者を思い起こす。
国王と同じクリーム色の髪の毛に薄い水色の瞳。
顔立ちも国王と瓜二つだった。
国王の寝室で見た肖像画を思い浮かべる。
肖像画に写っていた幼い子供は、満面の笑顔が印象的な可愛らしい顔立ちの中性的な見た目の子だった。
肖像画に描かれていた子供が成長したら、きっと国王とよく似た容姿になっているだろう。
先程の国王の影武者は笑顔が乏しく、口数も少なかった。
しかし、成長をしていくうちに性格は徐々に変わるものだから。
国王の息子か?
肖像画と先程の影武者を照らし合わせたギフリードが扉を閉めると、自分の考えを確認するため身を翻す。
高さ7センチの靴はヒビキの体力を激しく消耗させていた。
「疲れた」
階段を下りている最中に力尽きたヒビキは、壁に左半身を預け頭を押し付ける。
「城から出るのも一苦労なのに無事に街に、たどり着けるのか?」
疑問に思ったことを口にする。
目蓋を伏せハァとため息をつくけど、ちっとも疲れは取れない。
「街についた頃には足腰が立たなくなってそうだな」
国王が無事な姿を見せに行くのに、足腰の立たなくなった姿を見せたら更に混乱が広がるだろう。
独り言を呟いていると、ぐったりとするヒビキの元へギフリードが移動する。
「その服は、それほど体力を消耗させるのか?」
壁に寄りかかり、ぐったりとするヒビキに問いかけた。
「靴は歩きづらいしマントは重い。装飾品の付いた服は歩くたびに、じゃらじゃらと音を立てるし体力的にも精神的にも辛いよ」
大きなため息をつく。
閉じていた目蓋を開けて渋々と姿勢を整えたヒビキにギフリードが一つの提案をした。
「歩くのでは無く飛んで移動をすれば良いのでは?」
真顔で問いかけるギフリードにヒビキが、ぽかーんとした間の抜けた顔をする。
なぜ気づかなかったのだろうかと頭の中で自分に突っ込みを入れた。
「その手があった」
ギフリードの言葉を聞きポンッと開いた手の平に、軽く握りしめた手の尺側面を置く。
気づかないうちに肩や膝に無駄な力を込めていた。
集中力も散漫になっていた事に気づく。
宙に浮かぶために無駄な力を抜き、魔力を纏って体を浮かす。
集中力を高めて浮かんだ身体のバランスを取ると、自然と緊張が解けた。
そして、無駄に込めていた体の力を抜いた事で疲れが随分と取れたように思える。
「国民に姿を見せてくる」
これなら疲れた姿を国民に見せなくてすむと考えたヒビキが真っ直ぐギフリードの目を見て礼を言う。
「ああ」
近くの窓を開いて窓から外に飛び出したヒビキにギフリードが頷いた。
まさか、国王の姿をしたヒビキが窓から飛び出すとは予想もしていなかった銀騎士が見事に出遅れる。
「嘘だろ」
ぽつりと一言呟いたのは一体誰なのか。
特攻隊は城の玄関ホールでヒビキの着替えが終わるのを待っていた。
そのため、窓からヒビキが飛び出した事に気づけなかった。
騎馬隊は突然、窓から飛び出したヒビキに気づきはしたものの、馬の準備が出来ていなかったため追うことが出来ず。
ぽつりと独り言漏らしたのは騎馬隊に所属する誰かなのだろう。
調査隊も、まさかヒビキが飛行術を使って窓から飛び出すなんて考えてもいなかったため呆然と見送ってしまう。
突然ヒビキが窓から飛び出したため、唐突に城の中が慌ただしくなる。
銀騎士達がバタバタと慌ただしい足音を立て走り出す。
少し遅れて騎馬隊がヒビキを追いかける。
特攻隊は今からでは飛行術を使うヒビキに追い付くことが出来ないため国王の寝室に向かって走り出す。
調査隊はヒビキが国民の前に姿を表すことにより混乱が収まったか確認するために足早に街へと向かう。
街に向かったヒビキの背中を見送っていたギフリードが、きびすを返すと今歩いてきた廊下を足早に歩き始める。
銀騎士に見つかる前に魔界に戻ることにした。
先程、国王の影武者を務めるヒビキと出会った部屋の前を通りすぎると、すぐに国王の寝室が視界に入り込む。
パタパタと慌ただしい足音を立てながら走る騎士達が近づいてくる事を確認して、慌てて魔界に通じるゲートに足を踏み入れた。
視界が歪み、宙に浮いた感覚に包まれる。
ぐるんと体が一回転をしたかと思えば、急に胸を圧迫間が襲う。
靴も国王が使っているものを借りると、王冠も本物を着用する。
少しでも国王に姿を近づけるために出来るところは真似をした。
しかし、ヒビキがは自信を持つことが出来ずにいた。
だから、いきなり目の前に現れたギフリードに国王の影武者かと問いかけられた時は、咄嗟にガッツポーズをしてしまいそうになるほど喜んでしまう。
嬉しさが表情に現れているかもしれない。
「ちゃんと、国王に見えるか?」
背筋を伸ばして、まっすぐギフリードを見る。
もう一度、確認をするように自分が国王に見えているのかギフリードに問いかける。
「あぁ。本物だと思った」
即答だった。
しっかりと目を見て言い切ったギフリードに安堵する。
お人形さんのような印象を人に与えていた少年が流し目をすると、切れ長の鋭い目が出来上がる。
華奢な体つきは眩い装飾品で飾られた服と大きなマントで隠していた。
切れ長の鋭い目。
水色の瞳。
国王に瓜二つ、そっくりな人物が真っ直ぐギフリードを眺めている。
眩い服に身を包み、もこもこの赤いマントを羽織る影武者は国王とは違って口数は少なく、表情も先程から変化が見られない。
「人間界に住まう国民に、この姿を見せようと思うんだ。国王が封印を受けた事を知り混乱が広まりつつあるから」
「その姿を見れば、混乱は収まるだろうな」
本物の国王と見間違うほど、そっくりな顔立ちをした影武者の言葉にギフリードが賛同した。
国王の封印の知らせを耳にして戸惑う国民達の前に姿を現したい。
安心させたいと言った影武者に対してギフリードは興味を抱く。
国王と瓜二つ。
近くで見ても、そっくりな容姿を持つヒビキの元に歩み寄る。
影武者の正体がヒビキである事にギフリードは気づいていない。
そのため国王が不在の今、人間界を影で操っているのは影武者である彼だろうとギフリードは考えていた。
「ありがとう。自分の考えに自信を持てた」
賛同したギフリードの言葉に自信を持ったヒビキが国民の元へ向かうために身を翻す。
歩き出したヒビキが扉の前から退いたため、それはギフリードの視界に入り込んだ。
丁寧に折り畳まれた状態でベッドの上に置いてある狐の耳付きの白いケープと、壁際に置いてある黒いブーツ。
ギフリードが探す少年が纏っていたものだった。 白いケープを羽織った少年は人の形をしていた。
そのため、共食いにあい食べられてしまったのだろうかと恐ろしい考えが一瞬、頭の中を過る。
室内を覗き込み見渡してみるけど血液は見当たらない。
肉片が散乱している様子もなく室内は綺麗なままだった。
魔界では食料が減る時期になると必ず共食いをする者達が現れる。
果たして国王の影武者を務めている青年が食べ物に困っているのだろうかと考えたギフリードが考えを改める。
あれが、白いケープの中身か。
ギフリードの中で自然と答えが浮かび、先程の影武者を思い起こす。
国王と同じクリーム色の髪の毛に薄い水色の瞳。
顔立ちも国王と瓜二つだった。
国王の寝室で見た肖像画を思い浮かべる。
肖像画に写っていた幼い子供は、満面の笑顔が印象的な可愛らしい顔立ちの中性的な見た目の子だった。
肖像画に描かれていた子供が成長したら、きっと国王とよく似た容姿になっているだろう。
先程の国王の影武者は笑顔が乏しく、口数も少なかった。
しかし、成長をしていくうちに性格は徐々に変わるものだから。
国王の息子か?
肖像画と先程の影武者を照らし合わせたギフリードが扉を閉めると、自分の考えを確認するため身を翻す。
高さ7センチの靴はヒビキの体力を激しく消耗させていた。
「疲れた」
階段を下りている最中に力尽きたヒビキは、壁に左半身を預け頭を押し付ける。
「城から出るのも一苦労なのに無事に街に、たどり着けるのか?」
疑問に思ったことを口にする。
目蓋を伏せハァとため息をつくけど、ちっとも疲れは取れない。
「街についた頃には足腰が立たなくなってそうだな」
国王が無事な姿を見せに行くのに、足腰の立たなくなった姿を見せたら更に混乱が広がるだろう。
独り言を呟いていると、ぐったりとするヒビキの元へギフリードが移動する。
「その服は、それほど体力を消耗させるのか?」
壁に寄りかかり、ぐったりとするヒビキに問いかけた。
「靴は歩きづらいしマントは重い。装飾品の付いた服は歩くたびに、じゃらじゃらと音を立てるし体力的にも精神的にも辛いよ」
大きなため息をつく。
閉じていた目蓋を開けて渋々と姿勢を整えたヒビキにギフリードが一つの提案をした。
「歩くのでは無く飛んで移動をすれば良いのでは?」
真顔で問いかけるギフリードにヒビキが、ぽかーんとした間の抜けた顔をする。
なぜ気づかなかったのだろうかと頭の中で自分に突っ込みを入れた。
「その手があった」
ギフリードの言葉を聞きポンッと開いた手の平に、軽く握りしめた手の尺側面を置く。
気づかないうちに肩や膝に無駄な力を込めていた。
集中力も散漫になっていた事に気づく。
宙に浮かぶために無駄な力を抜き、魔力を纏って体を浮かす。
集中力を高めて浮かんだ身体のバランスを取ると、自然と緊張が解けた。
そして、無駄に込めていた体の力を抜いた事で疲れが随分と取れたように思える。
「国民に姿を見せてくる」
これなら疲れた姿を国民に見せなくてすむと考えたヒビキが真っ直ぐギフリードの目を見て礼を言う。
「ああ」
近くの窓を開いて窓から外に飛び出したヒビキにギフリードが頷いた。
まさか、国王の姿をしたヒビキが窓から飛び出すとは予想もしていなかった銀騎士が見事に出遅れる。
「嘘だろ」
ぽつりと一言呟いたのは一体誰なのか。
特攻隊は城の玄関ホールでヒビキの着替えが終わるのを待っていた。
そのため、窓からヒビキが飛び出した事に気づけなかった。
騎馬隊は突然、窓から飛び出したヒビキに気づきはしたものの、馬の準備が出来ていなかったため追うことが出来ず。
ぽつりと独り言漏らしたのは騎馬隊に所属する誰かなのだろう。
調査隊も、まさかヒビキが飛行術を使って窓から飛び出すなんて考えてもいなかったため呆然と見送ってしまう。
突然ヒビキが窓から飛び出したため、唐突に城の中が慌ただしくなる。
銀騎士達がバタバタと慌ただしい足音を立て走り出す。
少し遅れて騎馬隊がヒビキを追いかける。
特攻隊は今からでは飛行術を使うヒビキに追い付くことが出来ないため国王の寝室に向かって走り出す。
調査隊はヒビキが国民の前に姿を表すことにより混乱が収まったか確認するために足早に街へと向かう。
街に向かったヒビキの背中を見送っていたギフリードが、きびすを返すと今歩いてきた廊下を足早に歩き始める。
銀騎士に見つかる前に魔界に戻ることにした。
先程、国王の影武者を務めるヒビキと出会った部屋の前を通りすぎると、すぐに国王の寝室が視界に入り込む。
パタパタと慌ただしい足音を立てながら走る騎士達が近づいてくる事を確認して、慌てて魔界に通じるゲートに足を踏み入れた。
視界が歪み、宙に浮いた感覚に包まれる。
ぐるんと体が一回転をしたかと思えば、急に胸を圧迫間が襲う。
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