異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第3章

第57話

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その夜、男ーブレイドは怒り狂っていた。せっかく新しいおもちゃで性欲を処理する予定だったのに、光ったと思ったら急にいなくなったからだ。
仕方なくベットでくたばっている女で欲を満たした。だが、どんな新しいプレイをしても怒りと性欲が治らない。

「くそっ!あの女…!どこいきやがった!」

「…あっ!ブレイド様そんな激しくっ…!ぁあ!」

そして再び、寝ている違う女を叩き起こし欲を処理するのだった。女が早く終らせる為に大げさに演技し、さらに撮られているのも知らずにー。




王都の門でギルドカードを見せた。はじめてギルドカードで入るのは、少しテンションが上がった。初めて定期を使って電車に乗ったような感覚だ。
ティナさんがお金を払って通ろうとすると、流石に門番の人が気がついた。

「ティナ副団長!今日はお休みを取られたんですね。いつもは滅多に取らないのに。」

「え、えぇ。同僚に無理やりね…。」

「そうですか。それと今日の朝、副団長を見かけたらブレイド第二王子に連絡するようにと伝達があったのですが…、何かあったんですか?」

「…!そう、私がここに来た事は言わないでおいてもらえるかな?」

「わかりました…。まぁあの王子の事だから色々あるのでしょう。お気をつけて~。」

「ありがとう。」


どうやら王国の衛兵でも、あいつを良く思っている人は少ないようだ。

「まぁ、どうせすぐバレちゃうと思うしいつまでも隠れてても仕方ないんだけどね。」

「国王様に言ってみてはどうですか?」

「それも考えたんだけど、両親も結婚を喜んでるし…国王様は今他国に訪問されてるから不在なの。だから昨日の食事会にもいなかったし、あの人はそのタイミングを狙ってたみたいね。国王様には頭が上がらないみたいだし、すごくお強いから。」

「そうなんですか…」

紅葉がいきなり「そうじゃ!」と叫んだ。何かと思い見ると、俺の顔を見て嬉しそうにしている。嫌な予感しかしない…

「もういっそボコボコにしてレイが代わりに婚約者になればいいんじゃ!」

「発想がぶっ飛びすぎだろ…まぁ確かにボコボコにするのは簡単だけど、不敬罪で死刑だよ。一瞬考えたけど。」
 
「か、簡単なのね…。」

「ならその不敬罪にしたやつも倒して…」

「国王様だよ、それ。この国にいられなくなるわ!」

「いいじゃろ!別に4人で旅をするのも悪くない、むしろ妾からすれば楽しそうじゃ!」

「あのなぁ、父さんも母さんも」

「私もその意見だけには賛成です。」

「む、今回だけは貴様と気が合いそうだな。やはり鉄娘でもあのクズは気に入らんか。」

1番協力しちゃいけない2人が手を取り始めた。こんなのゾロとサンジが肩組んで戦ってるようなものだ。最強だけど、絶対しっくりこないやつ。

「ロゼッタまで…」

「あんなクズ、野放しにはしておけません…。ティナさんが婚約破棄を申し出ても取りつく島もないでしょう。ならいっそ消して仕舞えばいいんです。

「ふふっ、もういっそそれでもいいかもしれないわね。」

「いや、あんたもそっちかい!」

「冗談よ、私だってこの国の人達は好きだしあまり離れたくはないかなぁ。あ、もうすぐよ。」    



ティナさんの家にあと少しで着くという所で、クソ王子と昨日の部下らしき2人が出てきた。

(くそ…やっぱり見つかるよな。ジャイアンとスネ夫みたいな構図とりやがって。ドラえ○んの映画見てみろ、ジァイアン怖いくらい人格変わってるんだぞ。最早ドラ○もんよりのび太に主人公補正かけてんじゃねぇかってくらいいい奴なのにこいつときたら…。)

ブレイドは目の笑っていない、いつもの笑顔になった。

「ティナ!昨日は探したんだよ。どこに行っていたんだい?ご友人の方と一緒だったのかな?」

「それは…」

ティナさんは昨日の事を思い出したのか、少し震えている。紅葉が心配そうにしているが、おさまる気配はない。

「おい、ティナは貴様との結婚なんぞ望んでおらん。早く取り消せ。」

「あ…!」

「同感ですね。女性に無理やり性交渉をしようなど少しはマスターを見習って欲しいです。」

「はぁ…もういいや…。まぁ俺もこの人嫌いだし…。」

レイはもう諦める事にした。常識の少し欠けているこの2人ならいずれこうなる事は分かっていたし、もしこれで不敬罪によって家がなくなったとしても、神獣を全て売り払ってその金は全て家族に渡せばいいかと思っていた。まぁそれで両親が許してくれるなど思ってはいないし、むしろ勘当されるんじゃかと思う。

だとしても、レイ自身のこの男への怒りは大きかった。
前世で自分の友人が襲われる所など見たことがなかった。日本は平和の国だったから、そんな事に遭遇する機会もなかったし、この先もないと思っていた。もちろん、前世に女友達がゼロというわけではなかったが、その人達が強姦されそうになるなど男の俺からしたら想像もできなかった。

だが、この世界に来てその常識は覆った。ゴブリンやクソみたいな連中に強姦される女性がいる、友人がその被害にあうという事実を目の当たりにして、加害者のコイツに対して怒りが収まらなかった。前世でニュースなどの文だけ見ても分からなかったことが、ようやくわかった。

なのでロゼッタや紅葉がコイツに何か言っても、もうあまり止めないようにした。

「性交渉?おい鉄娘、それはいったいどういう事じゃ。」

「コイツは昨日…」

「ロゼッタさん!もういいの!私なら大丈夫だから…」

「ですが…!」

ティナさんはどこも大丈夫そうではなかった。だが、表情は迷惑をかけたくないと言っているような感じだった。
ブレイドは鼻で笑うと、ティナを再び鎧を着たまま抱き寄せた。

「ティナ…僕は昨日心配していたんだ。君がいなくなって夜も眠れなかったんだよ。さぁ、王城へ一緒に帰ろう。」

「なっ…!」

ティナはさらに震え、顔色はとても悪くなった。

(こいつ…!言うに事欠いてなんて事を!嗅覚を強化したからわかるけど、男のイカ臭い匂いと女の匂い撒き散らかしてるくせによくそんな事言えるなっ…!)

流石にもう限界だったし、ティナが体調を崩しそうだったので体が動いた。

「お前いい加減に…!」



「ふん!」「っ!」

俺が止めようとした瞬間、ブレイドは殴られ後ろにすっ飛んだ。
見上げると、紅葉とロゼッタが拳を突き出していた。

「貴様、本当にクズだな…。お前なんかにティナを任すはずなかろう。」

「最初からあなたは嫌いでしたが、もう無理です。あなたは魔物と同じ理性のない動物です。」

取り巻きの2人がブレイドに駆けつけ、何をしている!やら不敬だぞ!と騒ぎ立てている。早朝で人も昨日ほどいなかったが、さすがに増えてきていた。
2人とも殴ってもなお怒りが収まっていないようだったが、それはレイも同じだった。
紅葉はティナの手を取ると自分のそばに来させた。

「もう大丈夫じゃ。妾達にはマスターがおるからな。」

「「えっ?!」」

俺とティナさんの声が重なった。

「そうです、あんなのマスターが消し炭にしてくれますから。」

「いや…消し炭まではどうだろう…」

紅葉はブレイドの前へ歩いていき、鼻血を垂れ流すブレイドを見下ろした。

「おい、貴様。曲がりなりにも腕は立つと聞いた。それなら妾の主人と勝負しろ。」

「また勝手に…まぁもういいけど。」

「嫌と言うなら、ティナは無理矢理にでも連れてこの国を出て行く。」

「ふっ、ここまで無礼な女は初めてだよ。君のいっている主人というのは、あの子供のことかい?いいだろう、勝負くらい受けようじゃないか!」

「ふん、せいぜい死ぬなよ。」

「この私が負けるはずないだろ?私が勝ったらティナは私の奴隷にでもなってもらおう。毎日夜の相手をさせ、メイドより酷い扱いをさせるのも悪くないなぁ!」

ブレイドはようやく化けの皮が剥がれ、ゲスい顔になった。

「ふん、くるはずのない未来を妄想して楽しんでおれ。勝負は今日の午後、あそこの大きな闘技場でじゃ。」

紅葉の指差した方には、王都にある『ダライアス闘技場』があった。よくギルド同士の力比べや、魔物同士の戦うイベントなどが行われる所だ。

(あれ、戦う俺が放置されて話がどんどん進んでいく…。)

「いいだろう。せいぜい逃げない事だな!」

「ふんっ」

紅葉はそう言い残して帰ってきた。

「レイ、文句はあるまいな?」

「もういいよ。俺も殴りそうだったし。」

「さすが妾のレイじゃ~。わかっておるのぉ!」

そう言ってまた頰を擦り寄せてきた。
するとロゼッタに支えられていたティナが口を開いた。

「あ、あの…」

「どうしたんですか?」

「その皆さんに迷惑をお掛けしてしまって…」

「何を言っておるのじゃ。迷惑など思うわけなかろう、ティナは妾達の大切な友人じゃ。」


その言葉にティナの瞳から小さな雫がこぼれた。そんなティナを紅葉は優しく抱きしめた。

「大丈夫じゃ、妾のレイは無敵じゃからな。」

「………ぅっ…ありがとう……ずっと誰にも言えなくてっ………!」

「良かったですね、ティナさん。」

「………はい。」


レイもその光景に頰を緩ませた。たった女性3人、されど自分なんかよりよっぽど芯は強いと思った。
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