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第6章

第90話

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次の日、俺は王城の庭にいた。

王都の学園の試験は、筆記・実技・面接の3つを経て合否が決まる。この国で1番レベルが高いので、生半可な知識や能力では弾かれるらしい。

マリア様は筆記試験の方は、もう大丈夫なレベルらしいが実技が苦手なようなので、実技は俺が教えて、筆記は教えてもらえる事になっている。

ロゼッタと中庭で話していると、マリア様と執事の方が歩いてきた。

「レイ君、今日はよろしくお願いします。」

「レイ様、執事のアンクと申します。リーゼロッテの父です。」

「初めまして。レイ・トライデント・レストリアです。それじゃあ始めましようか。」

アンクさんはポーションを持って、ロゼッタと近くのベンチに座った。

「レイ君、今日はどうするんですの?」

「そうですね…では基礎から始めましょうか。魔法は本で学ぶよりも、こうやって外で実際にやった方が身につきやすいですからね。」

「わかりました!まずは何からすれば良いんですか?」

「まずは魔力を感じ取る事からですね。だいたいの人は左胸、心臓のあたりに魔力が多く集まっています。それを意識する所からです。」

そういうと、マリア様は目を閉じて集中して魔力を探していた。

「う…難しいですね。あるような…ないような…」

「そのまま意識していてください。」

俺はマリア様の背後に回り、背中から心臓のあたりに指を向けちょんとつついた。

「あ、今何か感じました!」

「それが、マリア様の魔力の根源のようなものです。」

「様をつける必要はありません。呼び捨てで構わないですよ?」

「いや…それは…」

「わかりましたね?レイ君。」

そう言ってマリアは絶妙な角度で微笑んだ。8歳でこれは、末恐ろしい。

「わかりました…マリア…?」

「50点です。かしこまって話す必要はないですよ?」

「お、王女様じゃないですか!」

「王女ですが、あなたの友人でもありますから。…ダメですか?」

「う〝っ…わ、わかった…。」

「はい、よく出来ました。」

絶対この人と結婚する人、尻に敷かれるやつだと思った。


その後も小さい頃母さんに教わったようなやり方で進め、午前中は魔力を意識する事終わった。
本当は午後に筆記の勉強を教えてもらうのだが、今日は王国魔道士団の本部に行かなければならないので午後になったら王城を出た。

マリアには、神獣の魔石を使ったネックレス型の魔具を渡してあるので陛下が心配するような事は起きないだろう。
陛下と王妃にはお揃いのブレスレット型の物を、リーゼロッテさんとアンクさんには指輪型の物を渡してあるので、仮に暗殺されそうになったとして大丈夫だ。



ロゼッタは屋敷でやる事があるそうなので、途中で別れて1人で本部へと向かった。

受付で名乗ると、一瞬驚きつつも団長室の場所を教えてくれたのでそこに向かった。
 
3階の団長室にいるとの事だったので、階段を上っていくと2階についた時にすれ違った人に声をかけられた。見上げると、CV.藤原啓治さんが似合いそうな渋いダンディな男がいた。男はタバコを手に持って、俺を不思議そうに見ている。

「坊主、こっから先はお前さんは入れないんだが迷子か?」

「いや…この上のルージュさんに用があって。」

「もしかして…お前新しい副団長か?」

「はい。レイ・トライデント・レストリアです、よろしくお願いします!」

軽く挨拶をすると、男性はニヤッと笑い俺の頭をガシガシ撫でた。

「俺はレギル・ストーガ、お前と同じ副団長だ、よろしくな。子供の副団長が来るとは聞いていたが…まさか本当に子供だったとはな。ルージュに用があるんだろ?なら俺も行くから案内するぜ。」

「わかりました!」

に案内された部屋に行くと、ルージュさんは資料を目に通している所だった。

「お、レイ君!やっと来たねぇ、とりあえず座ってちょうだい。」

俺とレギルさんが座り、向かいにルージュさんが座った。

「早速見てもらいたい物があるんだけど…」

そう言ってルージュさんは、机の上に1枚の小さな薄い金属板を置いた。金属板には小さなボタンが1つあった。

「なんですか、これ?」

「レギルもみたことなぁい?」

「ねぇな…何に使うのかもさっぱりだ。」

ルージュさんがボタンを押すと、音声の様な物が流れてきた。

『………ぅぁぁぁああああ!!…………ははっいいぞ!その調子で魔水槽に溜まってくれ……!!』

男性の悲鳴が聞こえたと思ったら、それに不釣り合いな男の嬉しそうな声が聞こえた。
そしてしばらく音が止み、再び音声が流れた。

『………くなったら言ってください……………は限りませんが…………ぐぁぁぁああ……』

「今の声…」

「知っているのかい?」

答える暇もなく、音声は聞こえてきた。

『………際に本性が出…………至福なのだよ……』

「今のは…ガリアの野郎だな。」

『……なら……一度抱い………てください!……』


その声を聞いた瞬間、俺は板を思いっきり殴りつけて粉々にした。2人とも驚いたような素振りは見せなかった。

「そして今のはキャロルだったな…。ルージュ、こりゃ一体なんだ?」

「あの爆発現場の付近から見つかったのよ。でも明らかにこの国の技術で作れるものではないわね…。魔石などの力も感じないし、一体誰が…。」

俺は我に返り、魔法で板を完全修復した。

「ごめんなさい、友人の声がしたので…。」

「いいのよ別に、直してくれてるしね。」

「ありがとうございます。」


レギルがタバコの煙を宙にはいて、口を開いた。

「まぁなんとなくこれの持ち主は見当がつくな。」

「え?!」

俺が驚いたのをみて、レギルはニヤッと笑った。

「ガリアとキャロルには、前から裏で怪しい研究をしているって噂があった。それに報告書で見たが、地下に魔力を察知出来ないデケェ施設があったんだろ?つまりこの板は、その施設の資材やらを輸出していた国のもんって可能性が高いな。」

「なるほどね。レイ君、何か知っているようだったけど知っている事があるなら話してくれるかな?嫌だったらいいけど…」

「…わかりました。」

俺はこの前起こった事の、大まかな内容を話した。

「そうだったのね。見た事のない装置があったと…となるとレギルの推理も正しいかもね。」

「だが、流石にどこの国とまではわかんねぇな。他の大陸にしらねぇ国なんていくらであるからな。 」

「考えられる国はいくつかあるけど、証拠がこの板しかないからね…。まぁ、レイ君もありがとね。」

「いえ!怒りのままに行動してしまってすみません。」

謝る俺の背中を、レギルがバンっと叩いてきた。

「そんな辛気くせぇ顔すんな。なんなら、今から俺と少し勝負してくんねぇか?あの壁を直したのはレイなんだろ?その魔力が気になっててな。」

「わかりました…少しだけですよ?」

「あぁ、ありがとな!」

レギルが部屋を出て行ったので慌てて後をついていこうとすると、ルージュさんにとめられた。

「レイ君、終わったら来てくれるかな?副団長の詳しい話をしたいから。」

「わかりました!」

そしてレギルさんを追うように部屋を後にした。

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