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第7章
閑話・小話詰め合わせ⑪(前編)
しおりを挟む『喧嘩するほど仲が良いなんてくそくらえ』
「指名依頼?」 『ぴゃぁ?』
「うん、レイ君に来てるわよ。」
ある日、ギルドから召集があったので向かってみるとアリアさんから1枚の紙を渡された。依頼人は何故かティナになっていて、依頼内容は書いてなかった。
とりあえず騎士団本部に向かうと、正面玄関にティナとサレアがいた。ティナは俺に手を振っているが、サレアは俺を見るなり不機嫌そうになった。
「レイ君、来てくれてありがとう!あら、随分可愛い子を連れてるのね。」
「こんにちはティナさん、今日はもう帰って良いですか?」
「あぁ、貴様は早く失せてもらって構わん。」
「ちょっ、待ってよ2人とも!レイ君もまだ依頼をしてないでしょ?」
「なんですか、依頼って?」
「じゃーん!」
ティナは持っていた紙を俺に見せた。紙には見たことのない昆虫が描かれている。
「なんですか、これ?」
「私の甥っ子が描いた絵よ。もうすぐ甥っ子の誕生日だから、その昆虫を生で見せてあげたいのよ。」
「それなら1人で捕まえられるんじゃないですか?」
「その…私、虫とか苦手で…。それに、そのプロードビートルって言うんだけど、それがコルータの森にいるって言われてるけどかなりレアなやつらしくて。」
「あの魔物の多い森ですね。でも、それならこのおっぱい魔人がいれば大丈夫じゃないですか?」
「えっと…。」
「貴様、次それを言ったらしばくぞ。だが、たしかにこのガキの言う通りだ。何故俺たちが必要なんだ?」
俺とサレアの指摘に、ティナは言葉を詰まらせた。目をそらし明らかに何かを隠している様子だったが、吹っ切れたのか急に副団長フェイスになった。
「この前の討伐で私は確信しました!あなた達は、上に立つ者としての自覚がありせん!」
「え?」 「は?」
「なんで本当にわからないみたいな顔してるの!いい?2人があんな喧嘩みたいなことしてたから、団員達が困ってたのよ?その自覚はある?!」
「それは、このおっぱい番長が…。」
「何か言ったかすけこまし?」
「ほら、そうやってすぐに喧嘩しない!というわけで、2人にはプロードビートルを探しながら仲を深めてもらいます!」
「「………はぁ。」」
「大丈夫です、カイザーさんとルージュさんの許可はとってありますから!」
何故か張り切っているティナと対照的に、俺たちは大きくため息をついた。
「最悪だ…。」
俺たちは馬に乗りながら、コルータの森に向かっていた。先頭でティナさんはご機嫌な様子だが、後ろの2人はお通やモードだった。
俺は肩から虫カゴをさげ、サレアの背中には虫取り網がくくりつけられている。こんな所を団員に見られたら、恥ずか死しそうだ。
「今回だけは貴様に同感だ…。」
「別にテメェと意見があった所で嬉しくねぇよ。おまえはエースを殺した赤犬並みに嫌いだからな…。」
「とんでもないネタバレをくらったが、俺も貴様はハガ○ンのエンヴィー並みに嫌いだ。ヒューズを殺しやがって。」
「しっかり見てんじゃねぇか…。糞が…おっぱい魔人ふぜいが見下してんー」
「こら、なんでそんな暗い雰囲気なの!」
いつの間にかティナは馬を止め、こちらを見てプンスカといった表情をしていた。
「もう帰りたいです。こんなやつと1秒でも一緒にいたら乳好きがうつる…。」
「は?それはこっちのセリフだエロガキ。貴様こそ、その若さを使って女性に甘えているんだろう。」
「あ〝ぁ?だったらお前は毎晩セイラさんに、いえいえいえいえいえぃ!ぱふぱふぱふぱふぱふ!とかしてんだろ、このデカパイキンが。」
「なんだその人を馬鹿にしたような言い方は!」
「馬鹿にしてねぇわ、むしろ結構面白いからな。アニメもだけど見てもないのに批判するやつの帰宅方面は、向かってあちら側でーす。」
「このマセガキが。いいだろう、勝負してーガッ!」
サレアが剣を握ろうとすると、何かがサレアの頭を弾いた。見ると、ティナが剣の鞘で叩いたようだった。目の前でサレアは頭を擦っている。
「こら!同じ立場とはいえ、相手はまだ年下なのよ?」
「だけどこいつはー」
「ぶはははははははっ!こ、これだけでも今日来た甲斐があっーいだだだだだだだだ!」
腹を抱えて笑う俺の頭に、フェルが容赦なく牙を刺した。
「はっ!愛犬に懐かれないとは、動物は貴様の本性を見抜いてるらしいな!」
「んだとこら!フェルは俺の頭を噛むのが好きなだけだ!後で魔物に襲われても助けてやんねぇからな!」
「貴様の助けなどいらん!」
「先に見つけて依頼を終わらせてやる!」
『ぴゃっー!』
「あ、レイ君!サレア君もー!」
俺とサレアは森まで競争し、慌ててティナが後を追いかけた。
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