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第7章

閑話・小話詰め合わせ⑪(後編)

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「今日は仲良くなるために来てるんだよ?!開始早々喧嘩してどうするの!」

「「すみません…。」」

森の前で、俺とサレアはティナに正座をさせられていた。フェルもティナの頭に乗り、頬を膨らませている。怒り方がとても可愛いが、今はそんなことを言っている場合ではない。

「はあ…とりあえず班を決めるわよ。はい、じゃあ3人で好きな棒を引きましょう。」

ティナは3本の棒を握り、俺たちの前に差し出した。王様ゲームのような感じだ。

「頼む、こんなアホとは別の班で…。」

「すけこましと虫探しはごめんだ…!」

俺は棒を勢いよく引き、恐る恐る確かめた。俺の棒の下側は赤く塗られており、サレアのは色がなかった。

「よっしゃー!」

「やったぞ!」

「もうクジなしで勝手に決めとけばよかったかな…。」

『ぴゃぁ…。』

ティナも色付きのクジを引いており、無事に俺とサレアは別の班で探す事になった。




「それにしても…なんだか大きい魔力を感じますね。」

「森の主でもいるのかしら。」

虫探しを始めて30分、俺は先程から感じている反応に違和感を感じた。この森は魔物が多いと聞くのだが、今のところ怖いくらいに何も遭遇していない。そして、遠くの方に1つ大きい魔力を感じていた。

「なんか面倒な事になりそうなんで、少しだけ避けていきます?」

「うーん…冒険者の人たちが襲われたりするかもしれないから、倒してもいいかも。」

「了解です。」 『ぴゃぁっ!』

とりあえず、みんなでプロードビートル探しを続行する事にした。



「はぁ、全然いない…。」

「本当ね。図鑑には、この森にいるって書いてあったんだけど…。」

『ぴぃ…。』

探し始めてから1時間ほどが経ったが、未だにプロードビートルの姿は見えない。それどころか、他の昆虫の姿もない。

「どこにいるー」

その時、少し離れたところから木がなぎ倒される音がして地面が少し揺れ始めた。

「なんだ?!」

「何かきてる!」

とりあえずティナと近くの木が密集していないところに来たが、音はどんどんこちらへと近づいてきた。

「なんか、やばそうですね…。」

「あれ、この感じ…」


「うぉぉぉぉぉおおおお!!」

『グォワァァァァアア!!』

ティナが呟いたと同時に、バカでかい蛇に追われるサレアが走ってきた。



「何やってんだテメェは!」

「何あれ!?」

「大変だ!何か出てきたぞ!」

「いや、どう見てもテメェを追いかけてんだろうが!」

「と、とにかく逃げなきゃ!」

サレアが俺たちの方に逃げてきたので、俺たちも必然的に逃げるしかなかった。走りながら鑑定すると、『マンジェスネーク(亜種)』と出てきた。特徴は、牙と皮膚に触れたものを殺す毒があるらしい。
俺は走りながら、隣で顔色を悪くして走るサレアに怒鳴った。

「おい!お前なんとかしろよ!あれ連れてきたのお前だろ!」

「ムリだ!虫は平気だが爬虫類は苦手なんだ!」

「か弱い乙女みたいな事言ってんじゃねぇよ!それが許されるのはヒロインだけだ!」

「2人とも危ない!」

「どわっ!」 「くっ!」

後ろを振り返ると、大きく開いた口が俺たちに迫ってきていた。なんとかかわすと、マンジェスネークはそのまま突っ込んでいった。
そのまま3人ですぐに逃げたが、マンジェスネークは方向転換して俺たちを追ってきた。

「おい、こういう時は二手に別れてどっちかが囮になる方がいいと思わないか?」

「くっ!貴様にしては良い案だ。よし行ってこい!」

「は?おまっ!」

サレアが珍しく同意してきたと思ったら、俺の腕を掴んでそのまま明後日の方向に投げ飛ばした。

「あっぶねぇ…あ。」

俺はなんとか着地してサレアをぶっ飛ばしに戻ろうとしたが、顔を上げたら目の前に大きな口が迫っていた。

「こんのムッツリメガネがぁ!覚えとけよー!」

『ぴゃぁー!』

俺はフェルを抱えて、とりあえず反対方向へと逃げ出した。



「もう!何やってるのよ!」

「ふんっ!前にルージュさん達の前で変な言いがかりをつけてきたお返しだ!」

「事実でしょ?!」

「そんな事はない!」

「へぇ…いつも帰ったらセイラさんにハグしてるくせに?」

「な、何故それを?!」

「とにかく、早くレイ君を助けなくちゃ。」

レイがマンジェスネークを引き受けた後、ティナはサレアに再び説教をしていた。
遠くで木が倒れる音がしているあたり、レイは逃げ続けているのだろう。

「あんなやつ、助ける必要はない。」

「ダメよ。同じ王国を護る仲間でしょ?少しは協力しなさい。」

「あいつと仲間なんかになった覚えは…まて、なんか音が近づいてないか?」

「え?言われてみれば…。」

サレアに言われティナは耳を澄ませると、確かについさっきより音が大きくなっている。2人は顔を見合わせ、音のする方を見つめた。

「おい、まさか…。」

「これって…。」

2人の予想通り、前方からフェルを抱えたレイがものすごい速さで走ってきた。




あの後、マンジェスネークは毒に気をつければ倒せそうだったがサレアにやり返すために殺さずに逃げ続けた。
そしてサレアの魔力の方へと走っていたのだった。

「あー!やっと見つけたぞエロメガネ!」

「貴様何故まだ倒していないのだ!」

「レイ君!早くこっちにーきゃっ!」

俺は頭にフェルを乗せ、ティナをお姫様抱っこしてそのまま走った。隣でサレアが死にそうな顔で走っている。

「おい!こいつどうするんだ!」

「ふっ…。俺に任せろ!」

俺はティナさんとフェルを空中に投げ、そのままサレアの足を掴んだ。

「貴様、何をー?!」

「ドーーンだYO!!!!」

そしてサレアを後ろに投げつけるとー


ーパックンチョ。

 
マンジェスネークはためらう事なく、サレアを丸呑みにした。
そして落ちてきたティナとフェルを抱え、俺は再び走り出した。

「ちょ、レイ君!何してるの?!」

「ははははは!やられたらやり返す、倍返しだ!さっきのお返しだ!」

『ぴゃぁ…。』

ティナは後ろを見ながら驚き、フェルは完全に呆れ顔をしている。

「あのままじゃ、サレア君が!」

「わかってます、すぐに終わらせますから。」

俺が空中に飛ぶと、マンジェスネークは口を開けながら俺の方へと体を伸ばしてきた。

「ティナさん、ちょっとフェルをお願いしますね。」

「え?きゃっ!」

ティナにフェルを預け、そのまま離れた所に投げ飛ばした。
そしてすぐに右手に氷の剣を作り、「八相の構え」をとった。

『グガァァァァァア!!』


「龍神の舞」


俺はマンジェスネークの周りを、高速で下の方へと回転しながら飛んだ。そして空中でティナとフェルをキャッチして、綺麗に着地した。

『グ、グギャァァアア!!』

振り返ると、マンジェスネークの体は輪切りのようになってバラバラになった。そして中からサレアが飛び出してきた。

サレアのところに駆け寄ると、サレアは嫌いなものに飲み込まれて気を失っているようだった。

「ふぅ…やっと終わりましたね。」

「まだ見つけてないんだけど…。」
  
「あ、プロードビートル見つけなきゃ!」


マンジェスネークが死んだせいか、今まで隠れていた魔物達がかなり出てきたが、そいつらを倒しながら虫探しを続けた。

起きたサレアと喧嘩をして、結局また説教をされたとかー。
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