これは愛か、それともただの刷り込みか

栗鼠

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小話 ふたりぼっち

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収支報告を出しに事務所に寄ったら親父の実家から手紙が届いていた。

…17年前に一方的に絶縁されたのに?…自分達の保身の為にお袋と俺を切り捨てたヤツらが…今更なんだ?…呪禁なんぞ仕込まれていたら厄介だ。その場で事務員に開封させた。

…腹違いの弟が番ったと。

親父が逝って…そろそろ4年か?
…お袋は「イヴァン!大好きよ!貴方は生きて!」って小さなナイフ片手に緩衝帯に飛び出した…久しぶりに晴々とした顔で振り返って…腹を空かせた魔獣に集られて喰われて跡形も残らなかった。
親父と別れてから13年……まぁ…時間じゃないよな…

…仲のいい2人だったが、それは突然壊れた。

親父が唯一と出会って。…抗ったが…金と権力には敵わなかった。親父が番紋しか入れていなかった事が仇になった。

…親父が家を出る日、お袋を抱きしめて「離れても…共に逝こうな…待ってるぞ」って言ってて。
…俺達を捨てて出て行くクセに格好つけてんじゃねぇって…俺は訳もわかってなかった。

その後は、お決まりのコースだ。

専有刻んだ魔力の少ない雌が…生きていく方法なんてない。…ゴミ漁りしながら、どうにか2人生き延びて。

その頃俺は獣人体で、雄は兵隊になれれば食っていく事が出来るから、見習い兵士の雑用で必死に小金稼いで…もちろんその日暮らしで…。
冬が来る度に死を覚悟した。

人化して、見習い兵になって親父譲りの魔素耐性の強さのお陰で爺さんの家の配達役に指名されて…そしたら、とんとん拍子で討伐者になる道が開けた。
内砦の内側の軍住宅に住める事になって、単身用の狭い部屋にお袋と2人で住んで…あちこちにあった借金を返しながら暮らした。

「もう少し」ってのがお袋の口癖で…。

討伐隊で3人ひと組になって魔獣を倒すトリプルって言うランクに上がった頃に「ごめんね。これ以上は無理なの。」って…わかってたよ。

食う物が少ない冬。
腹を空かせた魔獣ども。
緩衝帯に飛び出していく雌を止める奴はいない。

……そっちはそっちで色々あったんだろうが。
俺におめでとうって言われてもな?…違うだろ?お互い…用心しながら生きて行こうや…。

兎が持って来た焼き菓子とか、白いのからもらった飴玉とか…そう言う、ガキの頃に食う物をニーチェは知らないから…スリングに入れて街に買い物に出たんだ。

好奇心でキラキラすると思ってたら……すげぇ怯えて。
…視界制限かけて消音かけて、匂いも遮断して…それでやっと落ち着いて。
「世界にふたりぼっち…しあわせ…スリング好き。」って…これは…なんのご褒美だ?

ミルク味の飴玉を転がしながら色々見て回って、夕飯は軍食堂で持ち帰りにしようと思って…。

豹のばばぁの店の前に……いた…腹違いの弟が。

笑っちゃうくらい親父に似てた。
少し気難しいそうな雰囲気も。
スリングに子供を入れて番と手を繋いでた。


……幸せそうでなによりだ。




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