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しおりを挟む明日から代休も含めて20日間の番休暇。休暇に向けてあっちこっち準備してどうにか形になった。愚痴っていいなら…なんで昇進がこのタイミングなんだ?
東区第2中隊隊長の席は…中央の中隊長の言葉通り玉突きで…選出も裏でごちゃごちゃゴチャゴチャひと月近く揉めてたらしい…有り難いが跳弾喰らった気分だ。
番がいるのが暗黙の条件だったらしく、番が唯一とかだと出世も早いらしい…知らなかった。理由は言われなくても分かる…獣人の番絡みは厄介だからな。トラブル回避の為だ。
まぁ居ない間のフォローはイケオジが全部見てくれるって話だし…大丈夫だろ。
イケオジ…そんなに歳上じゃないんだが。
頭の回転が早くて言葉短く的確にアドバイスをしてくれるんだ。落ち着いていて穏やかで頼り甲斐があって…ちょっとやんちゃで…仕草がエロい。で、ついたあだ名が「イケオジ」。
この砦を支える薬局の伯爵家だ。長男だが自分には家業は向かないって兵隊になったそうだ。三男が家を継ぐらしい。
爵位な…獣人には無意味なんだが…王都に住む人族にはかなり重要みたいだから北領もとりあえずある。
役職名が苗字。だから……東区第2中隊所属第3小隊隊長が俺の苗字(…長いな)…どこの誰なのか匂いでわかるから必要ないだろ?
ギリギリ届いたギルドからの調査報告書。
リオは苗字があった。人族は平民は苗字がない。
苗字があるって事は貴族の出って事だ。だからギルドに調べてもらったんだが…王都に「いちじょう」と言う苗字の登録は無かった。
憶測の域を超えないが…リオは転移の誤作動で飛ばされたのは間違いない。…記憶が壊れるほどの遠距離…
「お疲れ。この前カフェでごめんね?まさか躾前だと思わなくて。」
トレー片手に向かいに座って来た。コイツはわざわざそれだけを言いに東区の軍食堂に来るほど暇じゃねぇ。
「番ちゃんエルフっぽかったけど人族だよね?ウチは豹だから。寒がり加減が似てるかなぁ?って思って…はい番祝い。休暇楽しんで?明けたら俺らまた仲良く連もうぜ?」
喋りながら飯を食う。
「なんか考えてる事とかある?番ちゃん絡みでね?」
「…住み込みの使用人を考えてる。」
「はぁ!さすが熊。番う前から他人を入れられるその余裕。お薦めはお約束の山羊かなぁ?淡々とやってくれるよ。ウチは敷地内の別棟。同じ建物内は無理。俺が無理。デニスの所の三男が独り立ちしたいって言ってと思う。もちろん俺が保証する家柄よ?話通しとくね?そいじゃ俺戻るわ~。」
勝手に喋って帰って行った。
…午後からは番祝いの封筒を幾つも貰った。
ロッカーと机周りの私物を収納にぶち込んで空にして定時退勤。それでも早足で…よし。結界に異常なし。
「ただいま。」
空っぽのカップを覗いてたリオの顔がパッと俺を見てふにゃっと笑った。
「おかえりなさい」
もちろん「お疲れ様」してもらって飯食って風呂入って暖かい服着せて2階の執務室。仕事関係の物は全部ここに入れてある。
ストーブに適当に薪を放り込んだ。俺はまだストーブ使うほど寒くはないが…リオは寒いだろう。
…イチャイチャエロエロな夜を過ごして明日ふにゃふにゃのリオを連れて教会に!ってのが俺の予定だったんだが持って帰って来た荷物の片付けを手伝ってもらう事にした。
雑然としてた部屋が整っていく。片付けは…得意だな?なんだか少し楽しそうだ。…庭と料理と家政…雑事を丸っと全部出来る使用人が欲しい…あいつが薦めてくれる奴はどこまで出来るだろうか。
イチャイチャを諦めた訳はもうひとつ。
番祝いの封筒だ。これタイムリミットがある。
封を開けずにイチャイチャイチャイチャイチャしてるとリミットがきてリリンって鈴の音が鳴って中身が出る。
元ネタは俺…独り身の嫌がらせ。割れたり壊れたりしないようにはしたよ?…送ったヤツらからソレを返された。…リミットが来る前に開ける。
びっくり箱みたいな物だから、リオはキッラキラだよ。
封筒から出てきたのは
ちょっと高級な箱入りの飴玉。
美味しいそうに食べていたあの店のガトーショコラ、ベイクドチーズ、ドライフルーツのパウンドケーキ、りんごのコンポート、焼きプディングがそれぞれ4切れずつ。
果実水用のカットされた柑橘系が入った瓶が20個。
風呂用のオイルとミルク。
疲労回復薬20個。ありがとう。
蜂蜜とお茶のセット。
バターとチーズのセット。
これだけあれば20日間イチャイチャ出来るよ。
メッセージもあった。
『やっとお前も仲間入り。番自慢しようぜ。
俺の番が1番だけとな。』似たようなのが5通。
あの店のからも来てる。
『先日の焼き菓子はいかがでしたか?
番様の次のご来店をお待ちしております。』
美味そうに食ってたからな。
寒がりな番ちゃんを守る会?なんだそりゃ。
冬本番を無事に過ごすためのグッズチケット?
色は店で選んでね?ん?マジかよ。会計済みかよ!
同期の中で番も出世も1番最後。
イタズラはしたけどちゃんと考えた…背中預けた仲間達だ。だから祝いの品の中身は素直に喜べるものばかり…温かい気分になった。
番う前夜くらい我慢してみようかな?なんて今思ってる。…俺は昼間は仕事だからちょっと寝不足なのと…お預け喰らった方が…明日盛り上がるかな?なんて…。
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