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ボリスside 夏が来る①
しおりを挟むあぁ…俺の欲望は尽きない。
性欲の次は食欲だ。日差しが強くなった。夏がくる。短いが鮮やかに彩り咲き誇る夏がくる。
朝イチ…っても8時くらいにドワーフが次のタオルの生産に伴う書類を届けに来た。リオが1.5倍って言ったら。
「…ご冗談を。ご予約は取っていませんがお問い合わせの状況を考えますと3倍が最低ラインです」って。山羊も「腐るモノでは無いので4倍でも問題ないと思います。」と強気だった。
「おじさまの むりのない ていどで おねがいします。」
「いい判断です。では私が手配出来る量で。
これで孫の工房の窯をひとつ増やしてやれる!
あれは、今、ガラスに凝っているんです。
ご希望がございましたら是非お声がけください。まだ若輩者ですが」って売り込んできた。
「ぼくの わがままを きいて くださるなら。」
リオの方が一枚上手じゃねえか?爺ぃ頑張れ!
きちんと商売として続きそうだから2階の執務室にリオ専用スペースを山羊と作り終わって一息テラスでお茶してるところ。
この時期の庭は勢いを増す。頑張ってもやる気が失せる状態になる…去年の俺だな。
…リオがキョロキョロしながら呆けてるな?と思ってたら
「あら、珍しい。羽虫が来てますね」って羊が。
…羽虫?幼な子じゃなく?
「育つ事のない精霊の幼体です。神のお言葉でも届けに来たのかしら?…あんなに近づいて…リオ様…虫苦手なのに。」
…相変わらず羊は不思議な雰囲気だ。この羊、エルフの血が混ざってるらしい。「私、ほんの少々エルフの血が混じっておりまして…羊と番うなんて物好きですよね?エルフの審美眼も大した事ないんですねぇ」って笑ってた。辛辣だよな?
足元でホップしてる毛玉に「もう区別がつくでしょ?たくさんお食べ」って雑草だよ?
もぐもぐモグモグ…美味しい!って顔だな?
「よく食べるから毛伸びが早いわね?刈っちゃいましょうか?夏が来るし…このまま伸ばしたら鬱陶しいわ。」
……山羊とか羊の子供の初毛刈りは親としてイベントじゃないのか?
リオが弾ける様な笑顔で振り向いて。
「ぼりす ぼく ここに いる!」
眩しい…何かが吹っ切れたリオは息を飲むほど綺麗だった。…あまりに綺麗で消えてしまいそうで…駆け寄って捕まえて抱き締めた。
いや…捕まったのは俺の方だな。
あぁ、日差しが強い。夏だ。
…夏と言えば川魚が美味いんだ!
もう毎食でもいい。焼いて、ちょっと塩振っただけでいい…リオが好きだといいな。
あれは俺も捌ける。
ぜーんぶ放って釣りに行きたい。
その場で捌いて焼いて…あ…食いてぇ。
後、コーン。
あれはなんなんだろうな?
なんであんなに美味いんだ?
パンプキンもいい。甘くて。
夏は美味い物ばかりだ!
リオを抱えたまま庭を見てまわったら…表から見えない所が香草畑になってて笑った。もっと広げてもいいぞ?って言ったら
「やめてください!本気にします!」って山羊が慌ててた…かまわないのに。
「あらぁ~」って羊が嬉しそうだぞ?
「君も!調子に乗らない!」
「冗談ですわ?」
「君の冗談はわかりづらい!」…本当に仲良しだな。
痴話喧嘩を初めて見たんだろうリオがポカンとしてた。足元ではもぐもぐモグモグ…美味しい!って顔だな?
…食えなくて腹空かして世界を妬んでた頃の俺に教えてやりたい。お前は幸せになるぞ。
……駄目だ。我慢出来ねぇ。
まだ昼前…朝早くからの方がいいんだが…行こう!準備なんて適当だ。必要なモノを収納にぶっ込んで…リオは帽子を忘れるな!
おら!皆纏めて転移だ。中隊長万歳!権利は使ってこそ意味がある!山羊、毛玉抱いとけ。
…よし!来た!
ここは外砦の外。麦畑のさらに外側、羊の放牧地を突っ切るように流れる河っペリ。俺の釣りの定位置。河原が広めで見通しが良くて気持ちいいんだ。
ターフ張ってガーデンチェア広げて、ちょい離れた所に焚き火台セットして。…煙いからね。
リオが口元押さえて本で見たのと同じ!ってキラキラしてた。準備している間リオは放牧地にいる仔羊と毛玉を見比べてた。…羊獣人と家畜の羊ね。子供の頃は見分けがつけづらいかな?俺らはわかるけど口で説明するのは難しい。
「ぼくが しってたのは かちくの ひつじだった」
納得したんだろう…羊を手伝い始めた。
俺は釣りだ。…今日は適当に。
コレは拾った相棒達だ。野良みたいな生活してた時に金持ちそうな奴が「こんな物!」言うて投げ捨てられた竿だ。……いただきました。めっちゃ使いやすいです。アイツが下手なだけ。
練り餌を作って…いや …この時期は虫の方がいいかな?ちょっと石をひっくり返して…いたいた…コイツを針につけて。リオが覗きこんできた。嫌かな?…そうでもないな?
つけてみ… それは嫌なのね?そんなに必死に首横に降らなくても。
それならリオは練り餌でいってみようか?針気をつけて?割と簡単に釣れるんだ。
竿を真っ直ぐに立てて。
あの辺目掛けて…担ぎ上げて…こお!
やってみ?
…ん。ちょっと近い。
もう一度。
もう一度。
…そう。上手い上手い。
浮を見て、つんつんって沈むのは餌を食べようとしてる時。
あたりは弱いから分かりづらいかもしれない。
…何度か餌持って行かれたらわかってくる。
来たかな?って思ったら竿を立て。
ゆっくり無理せ泳がせながらこちらに近づける。
半歩後ろに下がる。
…かかった。
リオの竿はそのまま足元に置いてもいい。
ちょっと見とけ。
竿を立てて。
泳がせながら。
こちらに…こちらに。
抵抗されたら少し竿を戻して…立てる。
浅瀬まで引いて…捕縛。
んー。いい型。
針を外してタライに。
「リオ、竿引いてる。慌てなくて大丈夫だ。」
後ろから右手を腹に回し左手を竿に添えてサポートにはいる。
竿を真っ直ぐ立てて。
あそこだ。わかるか?
2歩下流に。
…立てたまま。
ゆっくり魚をこちらに寄せる。
…少し戻して。
もう1度こちらに。
ほら…上鰭が見えた。
もう少しこちらに。半歩後ろに下がって。
浅瀬に…抵抗するねぇ。
もう1歩下流に、半歩下がって、竿は立てたまま…今だ。引いて…上手い!捕縛。
「リオのが大きいな?」
キラッキラの笑顔だよ…嬉しそうだ!よかった!タライの中の魚をみてるか?
自分で釣り上げたのを見るのは楽しいよな。
すぐに次が釣れて …ありがとう。そんなにキラキラされると俺が調子に乗る。
山羊が薪を整えて、リオが見る用に一匹だけタライに残して羊がぽんぽん捌く。
コレは大きいからスモーク用ですって羊が自分の収納に入れていく。
結界張ったから毛玉も安心だ。
山羊は…私、釣りは苦手なんです。魚に嫌われておりますって毛玉見ながらお茶飲んでる。
あー。いいねぇ!和む。
って言うか…羊捌くのが早くて上手いな。
「私スモークが好きなんです…食べ放題ですね。」
…好きなだけ食えよ。
鱗と内臓とって串に刺したり、頭を落として3枚に下ろしてバターで焼いたり……羊にかかるとなんだか洒落たものになるな。
「リオ様は、どの食べ方がお好きか色々試しましょうね。新鮮ですから臭みもなく食べやすいですよ。」
あの短時間でよく準備したな?って感じに色々
並んでいく。俺は構わずに釣る!
焚き火に網を被せて芋とオニオンを乗せて焼いて。パンも串に刺して、少し炙ってクリームチーズをぬって…リオがトコトコ持って来てくれる。…ありがと。美味いよ。
毛玉がそれ何?って見ているが「大きくなったらね?あなたはその辺の草食べてなさい。お庭では食べられないわよ?」
そうだ…思い出した。
『大きくなったらね。』だ。俺もそうだった。
洗いもせずに畑のパンプキンやコーンを食った。すぐそばに森があって、どんぐりもよく食った。隣で母さんがカゴに拾って…俺はそのまま食って…木苺も「これは父さんの分。あなたは自分で取りなさい」って…カゴに入った苺に顔突っ込んで食いたいと思ったんだ。
大人になったら絶対に顔突っ込んで食べてやるって思ったんだ。
火の入った物を食べたのは獣人化してからだ。
茹でたコーンが甘くて…旨くて、母さんが作ってたのはこの味だったんだって思ったんだ。
当たり前に使用人がいる生活をしていた2人は
「あら?」とか「ん?」とか言いながら「次は上手くいく」って笑ってたな…。
山羊がパッと毛玉を抱き上げた。
大丈夫。…結界にまだ反応はない。
見ているだけだろう。
たくさん食べて、たくさんホップした毛玉は山羊に抱き上げられるとウトウトし始めた。
獣体の時は安全だと思う昼間に寝る事が多い。
「…重い。」山羊は足元の麻の編み籠の中に毛玉を入れた。
……匂いは覚えた。
魚は入れ食い状態で面白いくらい釣れた。
串焼きの魚を頭からバリバリ食べて…満足した。
暖かくなったとは言え水の上を渡る風は冷たく体力を消耗する。そろそろお終いだ。
あ…好きだ。片付けを楽しそうにするリオが。
…不意に鋭い風が吹いた。
風にリオの帽子が持っていかれそうになって…
隣にいた山羊が素早くキャッチして。
そしたらリオはキラッキラで。
「ね?私の旦那様もなかなかでしょ?」って
羊がリオに耳打ちして「うん!」頷いて。
「君は…こんな所で」って山羊の顔が赤くなった。羊の発情期は夏だからな?些細な事でドキッとするよな?
……俺の視線が森の中に。
「…ちょっと 待ってろ。」
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