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⑦
しおりを挟む春になったから昨日薬草を畑に植え替えた。
いや…おかしい。植え替えたばかりだよ?
何この…さぁ!どうぞ!摘み取って!って感じの茂り具合…リオも驚いてた。
「……えっと おまたせ しました?
なんの くすりから つくる?」
「…抑制剤。」
羊は…特に驚いた感じはしない。むしろ当然です?って感じ?
「何からしましょうか?」
「おみずを たっぷり」
朝の水やりは俺の係り。山羊がポンプを漕ぐ。
俺がタライに溜まった水を浮かせて荒目の霧状態にして…優しい雨の様に。
すぐに消えちまうが、朝日に照らされて小さな虹がいくつも出来て…あっ!あっ!ってリオが嬉しそうにキラキラして…。
葉に残った水滴がキラキラして。
幸せで涙が出そうだ。
頃合いを見計らって幾つかの薬草を摘み取って、乾かして粉に挽く。
抑制剤は緊急抑制剤も含めて強さ別に4種類。
それぞれ10包ずつ。
「れしぴどおりに つくったけど しんぱい」
…そりゃそうだ。
休みだったが出来たてほやほやの薬を持って砦に向かった…こう言う時は侯爵家。
俺達が侯爵家に着いてから1時間も待たずに発情期の雄とその番。または番予定の相手が緊急招集された。
医務官立ち会いで解剤を服用して浄化。
まっさらな発情期の雄にリオの薬がどこまで効くのか。
…って言うか俺が第一号。
発情期だからね?まっさらになったら…人前でもフルで勃つよ。若い雄は嫌がるかな?と思ったんだが…集まったのは若いのばかりだった。
……そりゃそうだよな。勃ちの悪くなった雄は自信がねぇよな?
リオ…うっとりするな。薬飲みたくなくなるだろ?……ん?リオのうっとり具合を見て…若い雌の緊張が解けた?好いた雄のフル勃起したナニに反応するのは当たり前だろ??…わからん。
あー。効いてる。効いてる。なんか…優しい。
試しにリオに煽ってもらった。
多少…反応するが…うん…頭は冷静だ。
2号は番が…まだ獣人体で手が出せない狼。
「効いてます。…性欲だけが抑えられてます…凄い。間違えがあったら嫌だから…不全紋入れようかと思ってました。」
もちろん治験が終わった奴から解散。
リオは…スリングの中で俺にしゅき♡しゅき♡してるから話なんて聞いてない。可愛いよな?雄の発情期に当てられて…俺も早く帰りてぇ。
結果は概ね良好。前のは…愛しいって気持ちまで抑制されていたが…これはソレが抑制されないと言ってる奴がいた。
わかりやすい…薄汚い欲の匂い…おい…余計な事をいうなよ?次は早く量産しろと突き上げたいんだろ?…俺の警戒を視た侯爵家の山羊が「まさに神の御業。神の恩恵。感謝致します。」と腰を折った。
次の日、どこまで虎が手伝えるのか…試した。
ひとりでやるには工程が多すぎるからな?役割分担だ。厨房兼工房の限定で結界を承認した。
摘み取って乾かして…炒ったり、蒸したり、発酵させたり、抽出してから煮詰めて冷やして結晶化させて…よく覚えてるな!
リオの「出来る」のレベルの高さがやばいな?
リオが言う「下準備」の段階はほぼ触れなかった。効率を考えると…朝の水やりは俺だな。
今日使わない物は薬箪笥に入れた。
魔法使いが残した道具が…秀逸だ。
天日干しの籠の上下が入れ替わる。
石臼が回り、挽いた粉をボウルに入れると攪拌してくれて…錠剤にプレスするハンドルが回る。
虎が出来た事は…。
錠剤をピンセットで掴んで油紙に包む。
煎じて飲むタイプの物は、測って油紙に包む。
地味だが…量が多いから大変な作業だ。
使い終わった道具を洗って元の場所に戻す。
出来上がった薬を侯爵家に届ける。
午後から出てきてもらう事にした。夜行性だから丁度いいな?
2匹の毛玉が…いい仕事をする。
遊べ!一緒に寝よう!と時間になったらジーーっと庭からリオを見てくる。リオは「あっ!…まって。」って言いながら手を止める。
庭のコンサバトリーで早めの昼飯食って昼寝する。
夏の羊と山羊のケンカは…犬も食わなかった。
「駄目だ!殺精紋を入れる!3年連続は負担が大き過ぎる!君は魅力的過ぎるんだ!なんなんだ!こんなに私を惑わして!」
「……あらぁ?」…そう言う事らしい。
黒猫と虎とは、それなりに上手く行ってる。
黒猫とリオは仲良しだからな、指定転移紙を使わなくても森の結界を越えられる様になった。
蜜作りは問題ない。
虎は薬師家の分家だった。「あそこは魔術音痴が多い」と盾家の家令山羊が言っていた。
虎なのに魔術音痴…かなり残念な奴。
雑草抜いて、水撒いて…薬草を摘み取る事が出来る様になって…おっかなびっくり、突くみたいにチョンって薬草に触って、ほっとして詰んで…時々黒く溶かして…「私は直ぐに欲に溺れてしまいます。もっと、もっとと…。」天を仰ぎ許しをこいて。
「ぼくより よくぶかいものなど おりません どうぞ とらを おゆるしください」
ってリオも一緒に祈って…他人の為に祈るリオ様は欲深くなどございませんと苦笑しながら穏やかに過ごしている。
俺の方は…立ち位置が変わって痛感する貧乏人と金持ちの意識のズレ…線引きの難しさを痛感してる。
思考を奪う飢えと欲。腹が減ると目先の出来事に右往左往する…わかりやすく…小さくても目に見える成果。
そもそも人手が足りなさ過ぎる!
…軍住宅で暇持て余してる雌ども!働け!
年寄りもだ!孫ならぬ…子供達の面倒を見ろ!果実園で井戸端会議してろ!
暇だから余計な事を考えるんだ!汗をかけ!
叔父さんは…乱暴だなぁって言うが、汗拭いながらお喋りしてる雌がいい顔してるから問題ねぇんだよ。叔父さんもな?俺の子供に帝王学ってのを教えてもらわないといけないからな?頑張れよ?
俺も含めて急に人が育つわけじゃない…周りに支えてもらいながら中隊長は……3年やった。
…秋は殲滅に入った。途切れる記憶の中で過ごした。
盾の当主って言う立ち位置は、付け焼き刃過ぎて自信がなくて緊張して上手く言葉が出て来ない。それでも…やりたい事や願う事はあって。
…リオが俺の腕の中から穏やかに俺を包むから、
俺は自然に背筋を伸ばす事が出来た。
「おみみ たててね? ぼりすは つよいよ」
…リオが隣にいてくれるからだよ、ありがとう。
薬の事とか、俺の仕事とかが、プレッシャーだったんだろう…順調にいけば一年と思っていたリオの発情期が年3回で安定するのに…2年かかった。
秋の終わり…リオの匂いの…甘さとスパイシーさのバランスが変わって…成熟した大人になったって感じた…もう駄目。じっとしていられない…そわそわする。発情期なんて関係ない。
獣人の執着って…厄介。
見せびらかしたいのに隠したい。
離れたくないのに閉じ込めていたい。
全ての行動に干渉したい。
くすくすクスクス。
お水、飲ませて?って。
スリングに入れて?って。
…家の中なのにスリングに入ってくれて。
リオは…厄介な俺に優しい。
後ろから見た時の腰のラインが!
上から見える鎖骨が!エロさしか感じない!
サボテン並みじゃない…それ以下。
約束の19の年の秋、リオの発情期に合わせて殺精紋を解除して…改まって「さあ!」ってなると…緊張した。
濃厚な6日間…本当にサボテン以下。
…可愛かった。
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