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④
本当にウチの山羊は頼りになる。
彼がウチに来たのは9年前。
曾祖父さんの代からウチに仕えてくれていた老山羊が父さん達と一緒に西領に移住する事になり新しい執事を斡旋所から紹介してもらった。
紹介してもらったんだが…使えなかった。
…それなら養成学校か?と思って出向いたが時期が悪かった。卒業間近で優秀な人材は、すでに就職先が決まっていた。
八方塞がりだ。溜息を吐きながら学校の門をくぐった時に「おっさん泥がはねてるぞ。」と足早に私を追い抜かしながら洗浄をかけて向かいの建物の影に入って行った。
チラリと覗き見れば、頭痛薬入りの煙草に火をつける生意気な若者。 …この匂いは…口惜しい…でしょうか?握り締めた左拳が…雄弁に彼の心を語っていますね…。執事養成学校を優秀な成績で出たとしても後ろ盾が無ければただの雑用係。たぶんそんなところでしょう。この気の強そうな匂いは嫌いじゃない。…賭けてみましょうか。
「卒業後の進路に不満があるならウチで働きませんか?」
「は?」
「領境の河守りの家です。引き継ぎ期間は1ヶ月。前任者は隣の西領に移住しますので貴方のミスをフォローしてくれる者はいません。責任の重さに見合う報酬は出します。」
慌てて煙草を携帯用の灰皿に突っ込んで背筋を伸ばし
「1ヶ月有れば充分です。」と私の顔を見た。
覚悟のあるしっかりした目 …これは当たりかもしれない。
「ではウチの頭の堅い老山羊に会っていただこう。急で申し訳ないが、このまま相乗りで家に向かってもいいかな?帰りも送るから。」
「転移が使えますので大丈夫です。」
……それから任せっきりだ。丸投げと言うより私が口を挟む余地がない。
私がラヴィに印をつけた次の朝。
「忘れたくないから。」って朝からノートに書いていて…羞恥心で汗が出た。
もちろん「旦那様とちゃんと番になったの」と山羊に報告していて「それは良かったですね。」と山羊が話を合わせてくれて…「噛み跡に血が滲んでますから、少し軟膏を塗りましょう。綺麗に跡が残る様に保護しましょうね。」とラヴィと会話をしていた。
私には無言でかなり強めの抑制剤を出してくれて…。
日常に追われて考えの纏まらない私のフォローをしてくれる。
「教会に予約を入れて参ります。ご両親様も見届けたいと思いますのでご予定をお伺いしますね。」
…で山羊がラヴィの誕生日に教会の予約を入れて帰って来た。春の最終日。後5日…誕生日まで致すなと…。
さらに「馬では行けません」と。
「私の魔力量では複数での転移はできませんが、旦那様なら可能かと思います。」と。
…それは複数での転移を5日で覚えろと言う事ですね?
「私の見立てでは…転移門に登録さえすれば家から外砦までの3往復くらいなら問題はないと思います。これは私が学生の頃に使った転移のマニュアルです。」
本当に頼りになるんだ。信用している。山羊が出来ると言うなら出来るんだろう…頑張ってみるか…。
魔力に余裕が出来たとしても日々の仕事の内容が変わる訳ではないのでラヴィを寝かしてから頑張りました。…多少 …大分寝不足ではありますがギリギリ間に合った。
目と耳と匂いで全てを使い瑣末な変化も見逃せないので仕事で転移は使えない事が分かり…思い通りにはいかないものだな。
…春の最後の日。教会で専有紋は入れが、ラヴィには魂魄共有番紋は入れなかった。共に逝くのは至福以外の何物でもないが、命を大切にして欲しくて…。
私の生に殉じて短く終わる必要はない。
その後、ご両親と食事をした時に馴れ初めの話を母上に聞いた。とても不思議な話だった。
『主人とは冬の星降る夜に羊の放牧地で出会ったの。雲ひとつ無くて怖いほど綺麗な夜で… 運命と言う言葉以外では表せなかったわ。
2人共何を願ったのかは覚えていなかったのだけれど…神が私達の願いを叶えてくださった事だけはわかって感謝で心が震えたの。不思議でしょ?』とラヴィを見ながら微笑んでいた。…ラヴィは父上の膝の上に乗って…幸せそうだった。
別れ際、父上に「其方の山羊に貴方が不全紋を入れていると聞いた。ラヴィを大切にしてくれて有り難う。」と……。
これは…山羊に特別手当を出すべきですね?
家に帰って来たらラヴィの体温が少し高くて…。
このタイミングで…発情期の最後の日に発情するとか可愛すぎないか?
ラヴィは、…犬は交尾前排卵で排卵する前に胎を整える発情前期という期間が10日程あって…ラヴィの場合は微熱が出て食欲が落ちメンタルも鬱気味になるんです。
この期間はいつもスリングに入れて仕事に連れて行っていた。別に今まで蔑ろにしていたつもりは…ない。
番休暇なんてものはないから、私を受け入れる為の準備をしていた。…やっと指3本。
10日も放って置いたら閉じてしまうから不本意だがプラグを使った。
さらに排卵した卵が成熟するまで2日間。
……この我慢も…なかなかクセになる。
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