ただ平和に暮らせれば私は…。

まり

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21.神の気づき

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世界の裏側。
人間には見えない、“秩序”の流れが渦を巻く場所。
そこに、微かな濁りが走った。

「……入り込んだ、か」

神は目を細めた。
掌に浮かぶ光の粒が、ほんのわずかに黒ずんでいる。
それは彼の世界に、異質な波が触れた証。

「あれは――彼女だな」

声は静かだった。
だが、空気の温度がすっと下がる。
柔らかな光に満ちた空間が、ひび割れるように軋んだ。

「まさか、自分も入ってくるなんて。」

神は目を伏せる。
彼の視線の先に、アニェラの姿がかすかに映る。
少女の周囲には、薄く残る漆黒の揺らめき。
それは、彼の法則ではない“闇”――女神の残滓。

「……あの子に触れたのか。ルシエラ」

口元がわずかに歪む。

「お前らしいな。気に食わないものは、壊して奪う。
 愛しているつもりで、すべてを腐らせる。」

掌の光が微かに震えた。
そこに滲んだのは、怒りとも、哀しみともつかない感情。

「……時雨。君が扉になってしまったか」

神の声が、風に溶けて消える。

そして、ほんの一瞬。
どこからともなく、女神の笑い声が響いた。

『あら。久しぶりね。まだ“私のもの”を守ろうとしてるの? 可愛い人。』

「ルシエラ……この世界を穢すな。ここはお前の居場所ではない。」

『穢す?違うわ。取り戻すの。だって――あなたは、私のものだから。』

光と闇がかすかに揺れ、世界の端が軋む。

神は静かに目を閉じた。
その表情は冷静でありながら、どこか痛みに満ちていた。
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