うわさのRoll〜Remembering the days of Rape〜

冴木譲

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本編(前編)

130.絵里(えり)

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 2005年1月1日

「おい、玲美。起きろ。」

「・・・んん~・・・おはよぉ・・・。」

「もう11時だよ。12時に待ち合わせなんだろ?」

「・・・やばぁ~。準備しなくっちゃあ。」

「俺も準備するから、一旦帰るぞ。12時に駅でな。」

「はぁ~い。」


 自宅へ戻り、出かける準備をする。玲美のように、リビングのこたつで母親がまだ爆睡している。香織も未来もよく寝るが、俺の周りの女どもはなんでこうもよく寝るんだ?どうでもいいことを考えつつ支度を終え、駅に向かう。

 12時前。
 少し余裕を持って待ち合わせ場所に到着した。一番乗りかと思ったら、すでに玲美がいた。あれだけ寝坊していたくせに、顔も髪もばっちり作っている。


「おつぅ~。寒いねぇ~。」

「玲美、意外と時間ちゃんと守るよな。」

「そんなのぉ、人として当然って感じぃ?」

「寝坊してたくせによ・・・。」

「起こされなくてもぉ、起きてたしぃ。」

「ま、いいけど。絵里はちゃんと来るかな。」

「どだおろぉ。絵里も割ときっちりしてるけどぉ。」

「そうなんだ?昔はズボラな印象だったけどな。」

「まぁ~遅刻したりすることもあるけどぉ・・・と思ったらぁ、来たよぉ。後ろぉ。」

「え?」

「・・・久しぶり、冴っち。」


 玲美の視線の先、声のする方へと振り向く。記憶に焼きついた姿とは大きく違ったものの、そこにいたのは、確かに絵里えりだった。派手なまつ毛とアイライン、楊枝で絵が描けそうな厚塗りのファンデーション。玲美に負けないくらいのギャルメイクで、小学生のころの絵里とは全く印象が違う。唯一、絵里の顔の中で特徴的な口元だけは当時とそこまで変わっておらず、くっきりした唇に薄いグロスを塗っている程度だ。次に目を引くのは、金髪のセミロングヘアーに赤いコート。あの時宣言した通りだ。ただ、コートはいかにも不良が着ているようなものではなく、女らしいピーコートだ。すっぴんでは目も当てられないほど酷い顔の玲美とは違い、もともと絵里はそれなりに綺麗に整った顔立ちをしている。ちょっとメイクはやり過ぎにも思えるが、赤いピーコートがよく似合っている。


「・・・なぁ~にぃ~、じょーちん、絵里に見惚れてるのぉ~。」

「・・・何言ってんだよ。ずいぶん久しぶりだったからさ。」

「あっ、そぉ~。」

「・・・じょーちん?」

「そぉ~。譲くんだからじょーちん。」

「ふーん。そうなんだ。」

「おい、なんか誤解してそうだな。」

「してないよ。たぶんちゃんと理解してる。」

「そぉそぉ。まぁ誤解してくれてもぉ、玲美はいいけどぉ。」

「なんでだよ・・・それで、どこ行くか決めてるのか?」

「都内の方にぃ、出よぉと思ったぁ~。」

「じゃ、とりあえず電車乗るか。」


 改札を通りホームへ向かう。思ったより人は多くない。みんな正月は自宅でゆっくりするということだろうか。まぁ、これから向かう都内の神社などは死ぬほど混んでいるのだろうが。タイミングよくちょうど到着した電車に乗り込む。


「玲美と絵里っていつから仲良かったんだっけ?」

「中2からぁ。2年間同じクラスだったしぃ。」

「あーその時か。小学校の頃は付き合いあったかなーって思ってたわ。」

「その頃はぁ、無かったかなぁ。」

「そーだね。冴っちと玲美ってむしろ付き合いあったんだ?」

「小学生の頃ぉ、同じクラスだったことがあってぇ、今もぉ、バイト先が同じぃ。」

「あー言ってたね。」

「・・・なんか、お前らって同じギャルでも対照的だな。」

「何が?」

「対照的ぃ?」

「玲美はいつもニコニコしてとろい喋り方で、絵里は無愛想に淡々と喋るだろ。真逆じゃん。」

「はぁ?ざけんなし。」

「とろいってぇ、何ぃ、じょーちん。」

「おい、2人がかりで攻め立てんなよ。」

「お前が余計なこと言うからだろ。」

「見たまんまのこと言っただけだろ。」

「それが余計だっつってんだよ。」

「ならお前もニコニコ喋ってみろよ。」

「なんでうちがそんなことしなきゃなんねーんだよ。」

「ねぇねぇ、2人ともぉ、そこまでぇ。久々に会ったんだしぃ、仲良くしよぉ。」

「・・・冴っち、余計なこというなよ。」

「お前もな。」

「はぁ~?」

「なんだよ。」

「もぉ~・・・これもぉ、仲良いってことなのかなぁ?」


 電車に揺られること30分。目当ての神社に到着した。近くには超一流大学があり、まさか玲美がこんなところを参拝先に選ぶとは思わなかった。


「玲美、この神社のこと知ってるのか?」

「確かぁ、学問の神ぃ?がいるんでしょぉ?」

「なんか、意外だな。」

「じょーちんは進学校通ってるしぃ、こういうところがぁ、いいと思ってぇ。」

「あ・・・わざわざ俺のためにここにしてくれたのか?」

「まぁねん。他にぃ、思いつかなかったっていうのもあるけどぉ。」

「そうか・・・まぁ、俺はすっかり落第生だけどな。」

「ここでお祈りしてぇ、復活すれば良いっしょぉ。」

「冴っちってどこ高?」

「E高。絵里は?」

「F高。」

「あぁF高。確か女子高だったよな。」

「そ。」


 賽銭箱に5円玉を投げ入れ、ニ礼二拍手する。今年も、未来と仲良く過ごせますように。あと、穴が足りないのでもう5穴くらい増えますように。最後に、今年は10人くらい新しい女を抱けますように。最後に一礼し、その場を後にする。境内にはたくさんの出店が並んでいる。酒を数本空ける玲美と絵里。俺は焼きそばとたこ焼きだ。参拝に並んでいた時間もあってか、気づけば時刻は14時を回っている。


「冴っち、全く酒飲めないの?」

「全くじゃないけど、あんま好きじゃない。」

「ふーん。子供じゃん。」

「うるせーな。俺は真面目に生きてんだよ。」

「じょーちん、それはぁ、無理があるよぉ。」

「んなことねーだろ。それより、このあとどうするんだ?」

「どぉしよっかねぇ。絵里ぃ、もっと飲みたい?」

「どっちでもいいけど、玲美は夜バイトなんでしょ?」

「そだよぉ。18時からぁ。」

「お前、シフト入ってんのに酒飲んでんのか・・・。」

「この程度ならぁ、大丈夫ぅ。」

「・・・うち来る?」

「おぉっ、良いねぇ、絵里んち行っちゃおっかぁ。」

「えっ、元旦からさすがに悪くないか?」

「別に誰もいないから大丈夫。親は帰省してるし、兄貴もいないし。」

「んじゃっ、絵里ん家で決定ぃ。」


 再び電車に揺られる。道中で酒とツマミを買い、絵里の家に着いたのは15時半を過ぎた頃だった。
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