転生令嬢は冒険したい～ダンジョン目指してるのになぜか婚約破棄～

第一章

32 晩餐 ト 祝杯

その日の夜、お父様が戻られた夕食は豪華な晩餐会となった。

貴族邸で行われる豪華な晩餐というと夜会やパーティーを連想するが、今夜は家族のみの大人しいもの。
いつもより食事を豪華にして、いつもよりお酒を嗜み、いつもよりテンションが高いだけ。
とは言え、普段から食べきれない量の食事が並ぶのにそれより格段に豪華な食事がどんなものかは推して知るべし。

新緑祭という祭りの夜だからこんなお祝いみたいな晩餐になるのかとおもってたけど、違った。

「素晴らしい！！
まさか初めての鑑定で称号が3つも出るとは！」

「本当ね！さすが私たちの娘だわ！！」

今夜の祝いは私のステータスに起因するものだったらしい。
どうせ食べきれない、飲みきれない量が並ぶのだ。使用人たちへの振舞い酒になるのだろう。

「この、神使の守護者とはどういった称号なのかね？」

「わかりません。いつのまにかついてたの」

確実にセフィドと一緒にいるからだけどね。
説明するの面倒だし。

「悪い称号じゃなさそうだしいいじゃない。
それより優雅な令嬢なんて公爵家に相応しい称号だわ！」

「それもそうだな！それに貴種の心得ノブレス・オブリージュも正に貴族の中の貴族と言った称号じゃないか！！」

お父様とお母様にはそれらの称号は付いてないのかい？
·····なーんて、聞きませんよ。
空気の読める幼女ですから。
よく見かける称号にしては喜び方が異常だからね。あまり多くはないのか、少なくともこの組み合わせの称号持ちは縁者にいないのだろう。

どうでもいいけど、和食が食べたい。
貴族の食事って贅を凝らしただけあって、こってりなんだよね。
冷奴とか出てこないかな。

だいたい今まで気付かないふりしてきてけど、ハッキリ言ってヤバイ！
子供だからと誤魔化してきたけど今後もこんな食生活が続くなら現実を見ないといけない。
··········ダイエットだ。


私が1人、自室でお腹の肉を摘んでいたその頃、両親は一つの希望ゆめを抱いていた。
それは野望と言ってしまうにはささやかで、割と現実的なゆめ。

しかし、私の人生に置いては到底歓迎出来ない夢が現実になろうとしていた。