転生令嬢は冒険したい~ダンジョン目指してるのになぜか婚約破棄~

四葉

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第一章

34 婚約 ト 絶望

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重厚な扉をコンコンとノックすると、奥からくぐもった声で「入りなさい」と返事が聞こえる。

「おとーさま、セレスティアです。およびとうかがいましたが」

「おお、来たか。
セレスティア、今日は大事な話があって呼んだんだ。」

「はい。」

「よく聞きなさい。お前の婚約者が決まったよ」

「はぇ?」

婚約者とな?
いや、決して早すぎるということはない。
この貴族社会、結婚は基本的に政略。家同士の繋がりを深めたり、弱みを握るための人質としてだったり事情は様々だが家格を守るための常套で最終の手段として定着している。

「おあいてはどちらのかたですか?」

「なんと、王家のヴィンセント殿下だ!」

はあああああ?!
ちょ、ちょいちょいちょい!!!
ないわ!ないわーーーー!!

ああ、お父様。
3ヶ月前の祭典での一件であのヒトの印象最悪なんですよ。
ああ、お父様。すごい喜んでる。

「いやー、私が陛下の従兄弟にあたるからね。他の貴族家に配慮してしばらくは当家との婚姻は見送るべきところなのだけど、セレスティアが称号を3つも持っているのは王家としても逃したくないらしくてね!」

うわー、かつてないほど目尻がだらしないよ。
そんなに嬉しいものなのかな?

今さら語るまでもなく、王家とはありとあらゆる貴族の頂点に立つ存在だ。
各貴族にとって、王家と連なる。つまりは王家の一員に加わることは貴族に生を受けた者の最終目的と言っても過言ではない。

だからこそ、既に〔当主が今上陛下の従兄弟〕という絶対的な立場を得ている我が家は貴族としては充分過ぎるほど王家に連なっている。
ここから更に輪をかけて王妃を輩出するとなると他の貴族家の当たりがつよくなってしまう。

早い話が「お前ん家ばっかいい思いしやがって!」という嫉妬を受けたり「自分の家は王家に期待されてないんだ·····」と忠誠心が揺れたりする。
あと、割と近親婚になっちゃうからお世継ぎの問題も出てきたりね。

とにかく、あまりいい事がないにも関わらず、それらを押し退けてでも称号付きというのは魅力的らしい。

ぶっちゃけ、称号なめてた。
まさかそこまで力があるとは·····

そうなってくると俄然気になるのが殿下のアレだ。

「ちなみに、おとーさまはヴィンセントでんかのしょーごーをごぞんじですか?」

「殿下の称号?いや、聞いていないな。
恐らくこれから取得されるのだろう。何かあれば黙ってなどおられまい!」

ウチの娘のようにな!と豪快に笑いながら断言されてしまった。
そうだよね、いい感じの称号なら自慢したくなるのが親心だもんね。

伝えるべきか··········

「お前が新緑祭の祝福で称号を得たと知って、陛下に打診しに行ったんだ。
きっとお前なら婚約者に選定されると思っていたよ!」

ダメだ。言えない·····。
本気で悩んだがあまりに嬉しそうな顔を見せられて結局言い出す事が出来なかった。

ああ、両親の希望ゆめが叶ってしまった。
セレスティア。
齢5歳にして、将来に不安がいっぱいである。
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