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05話 仲間を増やそう
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「アリスさん。ツリーマンの討伐クエストは......」
「申し訳ないですが、今日もありません」
無料の宿が使えなくなり、ギルド近くの宿で暮らしながらツリーマンを討伐していたが、数日前からクエスト自体が無くなってしまった。どうやらこの辺のツリーマンは狩り尽くしてしまったらしく、奴らはすぐに生えるわけでも無いみたいだ。
「そろそろ、別のクエストを考え始めないといけないか......」
クエストがなくても日々お金は飛んでいく。宿泊代やご飯代によって1日過ごすのに2人で銀貨1枚ほどかかる。
「飯代はある程度我慢すれば節約できるけど、宿がなー」
宿代が2人で1部屋で大銅貨6枚かかる。
この街は野宿禁止となっているので、必要経費だ。
「ヤスさん、別のクエストやりましょーよ(笑)」
「だってお前何もしないじゃん」
せめてエールも戦力になればいいんだが......
「お腹減りましたね(笑)」
やはり戦う気はないらしい。確かにお腹は減っているので朝食を食べることにした。
ギルドのご飯は一番安くて大銅貨1枚だ。食べなければお金は減らないが......
「私は、ヤスさんと半分コでいいですよ(笑)」
「エールはとても気の利く良い子なんだなー」
戦ってくれればね
「じゃあ私はご飯買ってきますね(笑)」
帰ってきたエールはしっかり2食分買ってきた。
「じゃあいただきましょー(笑)」
食事中に次のクエストの相談をした。
「何かクエストを受けるにしても、せめてもう1人仲間が欲しいな」
「そんなっ! 私だけじゃ不満だというんですかー(笑)」
「それって答えないとだめなやつ?」
「ギルドのご飯は今日も美味しいですねー(笑)」
だめだこいつ。
「はい。あーん(笑)」
「あーん。んー、久しぶりのご飯は美味しいです」
いつの間にかエールが知らない奴に餌付けをしていた。
「美味しいですか? もーっと食べてくださいね(笑)」
「はい! ありがとうございます!」
この見知らぬ少女は誰なのか。
というより、よく食べるなー。
「昨日から何も食べてなくて、本当に美味しいです!」
「ふふふ(笑)」
というか食べられてるのって俺の分じゃないか?
ツッコミを入れようとしたときには既に殆ど食べつくされていた。
「とりあえず自己紹介でもしてくれないか?」
「ルンです」
......え? 終わり?
「私はエールです。よろしくお願いしますね(笑)」
「エールさんですね! よろしくお願いします!」
「私達クエスト受けようと思ってるんですけど、人手が足りなくて困っているんですよ。一緒にいかがですか?」
「私もお金なくて困ってたんですよ! ぜひ一緒に!」
ヤスが口を挟む間もないまま色々と決定していった。
エールのコミュ力すげーなーと思っていると
「あれがヤスさんです(笑)」
「なるほど。あれですね」
いつの間にか俺の紹介も終わっていた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
ルンが仲間に加わったので、クエストを受ける事にした。
掲示板の張り紙を確認していると
「私、スライム討伐がいいです!」
「お、やったことあるのか?」
「ないです! でも安全なのは知っています!」
......大丈夫なのか?
「こっちに来た時初めて見たモンスターですね(笑)」
確かにそうだ。町の外でたまに見かけるこのモンスターは特に襲ってくることもないので放置していた。
「討伐クエストなんてあったんだな」
とりあえずスライムの情報を集めるためにモンスター倒し方マニュアルをチェックする。
「方法その1。スライムは叩くと分裂します。分裂後、核がない方は石になります。核が壊れるまで叩き続けましょう」
なるほど。スライムには核があって、それを壊すまで倒せないということか。
「で、方法その2は......」
「ありませんね(笑)」
「じゃあ行きましょう!」
ヤスの周りの女の子は好戦的なようだ。
情報は乏しいがスライムの討伐クエストを受けることになったのでアリスの窓口へ向う。
「アリスさん。スライム討伐のクエストを受けたいので、手続きお願いします」
「スライムですか? ああ今朝掲示したクエストですね。最近小さいのが町の周辺に増えてきたので助かります。少々お待ちくださいね」
「スライム討伐ってどのくらい危険なんですか?」
「小さいのはそこまで危険じゃないですよ?」
「でもクエスト依頼があるってことは何かあるんですよね?」
「大きくなると厄介なので小さいうちに対処したいんですよ」
なるほど、小さいやつは安全というルンの情報は正しいみたいだ。
でも安全なクエストなら人気があるのでは?
「安全ならクエストやりたい人も多いんですか?」
「スライム討伐は人気がないんですよ。なのでヤスさん達が受けてくれるなら本当に助かります」
なんだか雲行きが怪しくなってきた。
「なんで人気がないんですか?」
「まあ、一言で表すならば、疲れちゃうんですよね」
「疲れるだけですか?」
疲れるだけならツリーマン討伐だって疲れるし......
「すっごい疲れるんですよ」
「疲れなら私が取ってあげられるので、永遠に稼げますね(笑)」
「お前のおまじないってプラシーボじゃん」
「スライムは1体倒すと大銅貨1枚ですので、できるだけたくさん倒してください。石になってしまったスライムは売れないので持ち帰り不要です」
今回は売却の報酬はなしか......
「じゃあ頑張っていきましょー(笑)」
どうせ頑張らないエールの声が響いた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「良い天気ですねー(笑)」
「ポカポカですねー」
これから討伐クエストだというのに呑気な仲間達だ。
「空気が美味しいですねー(笑)」
「なんだかお腹すいてきましたー」
「おやつ持ってますよー。あーん(笑)」
「あーん」
......ピクニックかよ!
「流石に気が緩みすぎじゃないか?」
「ヤスさん。ピリピリしすぎても良いことないですよ」
「ルンちゃんの言う通りですよー。そんな常に交感神経ピリピリだと身体に悪いですし(笑)」
「こうかんしんけー?」
「ルンちゃんには難しいですかねー。大人になったら教えてあげますね(笑)」
「大人になったらわかるんですねー」
ルンは生返事を返している。
この子は本当に戦えるのか? これ以上なにもしない子が増えたら困るんだが......
ルンの持っている長い棒状の物について聞いてみる。
「その持っているのは武器か?」
「そうですよー。私愛用の棒です」
棒状の物は棒だったらしい。槍とかじゃないのか?
「まあ、槍も使えますけどー。手入れがめんどくさいんですよねー。棒なら多少凹んでも汚れても平気です」
ルンの言っていることもわからないこともないが......
普通こういう世界感だと自分の武器にこだわりとかあるんじゃないのか?
「ルンちゃんは物に縛られないタイプなんですねー。かっこいいですね(笑)」
「ふふん。私に扱えない棒はありませんよ!」
どや顔しているルンに落ちている木の棒を渡してみる。
「では、これを授けよう」
「今は愛用の棒があるので不要です」
......もっともだ。
「じゃあ、こんな感じの木の棒しかなかった場合はどうするんだ?」
「ヤスさんならどうしますか?」
まさかの質問で返ってきた。
うーん。
「これは武器としては使えないな。細いし......まあ叩かれたら少し痛いかもしれないけど」
「ヤスさんはどんな相手を想定したんですか?」
「え、特に考えてないけど......」
「甘いですね」
ルンの空気が変わった。
「戦いは基本的に素手厳禁です。触ったら死ぬかもしれない、それくらいの心構えは必要ですよ」
先程までピクニック気分だったやつに言われたくはないが、そんなこと言える雰囲気でもない。
「なんかすまん」
「謝られても困るのですが、ヤスさんは考え方を改めないと今後生き残れませんよ」
「ヤスさんに死なれたら私も困ります(笑)」
「わかったよ。考えを改める。おかしなところがあったら教えてくれ」
「はい。一緒に冒険行く仲ですし、私もあなたに死んでほしくはないです」
「みんなで力を合わせて頑張っていきましょうね(笑)」
相変わらず緩い感じのエールだが、今はこの雰囲気がとても助かる。
「ちなみにルンは触ったら死ぬような相手のとき、木の枝でどうするんだ?」
「逃げます。生き残りの基本は戦わないことです」
この子はいったいどんな人生を送ってきたのだろうか。
ヤスの知っている冒険者とは明らかに心構えが違う。ケイン達が考えなしなだけかもしれないが......
「木の棒使わないんですね(笑)」
「戦わないといけない状況なら使いますよ」
「あ、スライムだ」
話も途中だがスライムが現れた。
ルンの心構えも大事だが、今は目の前の敵だ。
アリスの言う通りならば危険ではないみたいだし。
「人の頭くらいの大きさですね(笑)」
「その表現だと攻撃しにくくなるからやめて」
危険ではないが一応距離を取りつつ様子をみる。
スライムはこちらに気がついているようだが、やはり襲ってくる感じはない。
「さてどうしたものか」
ルンの話を聞いた後だとどうしても身構えてしまう。
しばらく動けずにいるとルンがスライムに近づいていった。
「スライム相手に何ビビってるんですか?」
そう言うと手にした棒でスライムを真っ二つに叩き切った。
「お前があんなに脅してくるから慎重にもなるわ!」
「それは相手が得たいの知れない敵とか、見るからに強いとかそういうときの話です。これスライムですよ? 子供が遊んでたら倒しちゃったとかそういうレベルですよ?」
「ヤスさん! 私はその感じで良いと思いますよ。例え子供が倒しちゃう様な敵でも何があるかわからないですもんね(笑)」
エールのフォローは果たしてフォローなのだろうか? ......というか煽られているだけか。
ルンに分断されたスライムを見ると半分の大きさになっている。もう一方は石になったようだ。
生きているスライムは逃げていく。かなり早い......早っ!
「ふん!」
ルンの棒はスライムの上の方に当たった。
分離したスライムは小さい方が石になった。
「小さくなればなるほど当てにくそうだな。何かめちゃくちゃ早いし」
半分にし続けること4回、ルンは最後まで動いているスライムを靴ですりつぶした。
「はー。これで1匹の討伐が完了です。地味に疲れますねー」
これで大銅貨1枚か。効率よく倒せれば美味しいクエストだな
「次はヤスさんどうぞ。あそこにもう1匹いますよ」
「よし、任せろ!」
ヤスは思いっきりスライムを蹴ってみた。
1発目は問題なく当たり、スライムは分離して石とスライムになった。
が、2発目以降はなかなか当たらない。結局4回当てるのにルンの3倍以上の時間がかかってしまった。
「ヤスさーん。頑張ってくださーい(笑)」
「ぜーぜー......」
全力でスライムを追い回しているヤスには、エールの応援に応える余裕はない。
「あ、こっち来た。えい(笑)」
ぷち。
なんだろう、釈然としない
「やりましたね、エールさん! 1匹討伐です!」
「ありがとうございます! ルンちゃんのおかげです(笑)」
「ぜー、ぜーっ......。お、俺のおかげだろっ......」
ヤスのか細い突っ込みはエールに届くことはなかった。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「結局一日使って倒したスライムは10匹ですか」
倒した内訳は、ルンが5匹、エールが4匹、ヤスが1匹だったが、報酬は山分けにしてくれた。
「ヤスさんは私たちに感謝してくださいね(笑)」
結局ヤスがスライムを攻撃して、最後のとどめはエールが踏むというのが続いた。
何故か最後はスライムがエールに吸い寄せられていく。意味がわからない。
「ありがとうございます......」
釈然としないが、嫌な顔ひとつせずに報酬を等分してくれたのでお礼を言う。
「私たち仲間じゃないですか。気にしないでください」
ルンが優しい目を向けて言ってくるのが余計に虚しい。
「でも1日やってこの額だと生活が厳しいな」
「私もこれだと今日泊まる宿代もないです......」
「ルンちゃんが嫌じゃないなら私達と一緒に泊まりますか?」
「助かります! やっぱり持つべきは仲間ですね!」
あの部屋2人でも狭いんだが......
文句を言えば自分が追い出されそうなので黙っていることにした。
「でも部屋が狭いので、ルンちゃんは私と一緒に寝ることになりますけど良いですか?」
「私は気にしませんよ」
「ヤスさんも一緒に寝ますか?(笑)」
「仕方ないなー」
「私は嫌です」
「さっきまで仲間って良いですねって言ってたじゃないか」
「それとこれとは話が別です」
「あーあヤスさんの日頃の行いが悪いからー(笑)」
今日会ったばっかりじゃん......
エールとルンが部屋に戻っていく。
ヤスだけに疎外感を残して。
「申し訳ないですが、今日もありません」
無料の宿が使えなくなり、ギルド近くの宿で暮らしながらツリーマンを討伐していたが、数日前からクエスト自体が無くなってしまった。どうやらこの辺のツリーマンは狩り尽くしてしまったらしく、奴らはすぐに生えるわけでも無いみたいだ。
「そろそろ、別のクエストを考え始めないといけないか......」
クエストがなくても日々お金は飛んでいく。宿泊代やご飯代によって1日過ごすのに2人で銀貨1枚ほどかかる。
「飯代はある程度我慢すれば節約できるけど、宿がなー」
宿代が2人で1部屋で大銅貨6枚かかる。
この街は野宿禁止となっているので、必要経費だ。
「ヤスさん、別のクエストやりましょーよ(笑)」
「だってお前何もしないじゃん」
せめてエールも戦力になればいいんだが......
「お腹減りましたね(笑)」
やはり戦う気はないらしい。確かにお腹は減っているので朝食を食べることにした。
ギルドのご飯は一番安くて大銅貨1枚だ。食べなければお金は減らないが......
「私は、ヤスさんと半分コでいいですよ(笑)」
「エールはとても気の利く良い子なんだなー」
戦ってくれればね
「じゃあ私はご飯買ってきますね(笑)」
帰ってきたエールはしっかり2食分買ってきた。
「じゃあいただきましょー(笑)」
食事中に次のクエストの相談をした。
「何かクエストを受けるにしても、せめてもう1人仲間が欲しいな」
「そんなっ! 私だけじゃ不満だというんですかー(笑)」
「それって答えないとだめなやつ?」
「ギルドのご飯は今日も美味しいですねー(笑)」
だめだこいつ。
「はい。あーん(笑)」
「あーん。んー、久しぶりのご飯は美味しいです」
いつの間にかエールが知らない奴に餌付けをしていた。
「美味しいですか? もーっと食べてくださいね(笑)」
「はい! ありがとうございます!」
この見知らぬ少女は誰なのか。
というより、よく食べるなー。
「昨日から何も食べてなくて、本当に美味しいです!」
「ふふふ(笑)」
というか食べられてるのって俺の分じゃないか?
ツッコミを入れようとしたときには既に殆ど食べつくされていた。
「とりあえず自己紹介でもしてくれないか?」
「ルンです」
......え? 終わり?
「私はエールです。よろしくお願いしますね(笑)」
「エールさんですね! よろしくお願いします!」
「私達クエスト受けようと思ってるんですけど、人手が足りなくて困っているんですよ。一緒にいかがですか?」
「私もお金なくて困ってたんですよ! ぜひ一緒に!」
ヤスが口を挟む間もないまま色々と決定していった。
エールのコミュ力すげーなーと思っていると
「あれがヤスさんです(笑)」
「なるほど。あれですね」
いつの間にか俺の紹介も終わっていた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
ルンが仲間に加わったので、クエストを受ける事にした。
掲示板の張り紙を確認していると
「私、スライム討伐がいいです!」
「お、やったことあるのか?」
「ないです! でも安全なのは知っています!」
......大丈夫なのか?
「こっちに来た時初めて見たモンスターですね(笑)」
確かにそうだ。町の外でたまに見かけるこのモンスターは特に襲ってくることもないので放置していた。
「討伐クエストなんてあったんだな」
とりあえずスライムの情報を集めるためにモンスター倒し方マニュアルをチェックする。
「方法その1。スライムは叩くと分裂します。分裂後、核がない方は石になります。核が壊れるまで叩き続けましょう」
なるほど。スライムには核があって、それを壊すまで倒せないということか。
「で、方法その2は......」
「ありませんね(笑)」
「じゃあ行きましょう!」
ヤスの周りの女の子は好戦的なようだ。
情報は乏しいがスライムの討伐クエストを受けることになったのでアリスの窓口へ向う。
「アリスさん。スライム討伐のクエストを受けたいので、手続きお願いします」
「スライムですか? ああ今朝掲示したクエストですね。最近小さいのが町の周辺に増えてきたので助かります。少々お待ちくださいね」
「スライム討伐ってどのくらい危険なんですか?」
「小さいのはそこまで危険じゃないですよ?」
「でもクエスト依頼があるってことは何かあるんですよね?」
「大きくなると厄介なので小さいうちに対処したいんですよ」
なるほど、小さいやつは安全というルンの情報は正しいみたいだ。
でも安全なクエストなら人気があるのでは?
「安全ならクエストやりたい人も多いんですか?」
「スライム討伐は人気がないんですよ。なのでヤスさん達が受けてくれるなら本当に助かります」
なんだか雲行きが怪しくなってきた。
「なんで人気がないんですか?」
「まあ、一言で表すならば、疲れちゃうんですよね」
「疲れるだけですか?」
疲れるだけならツリーマン討伐だって疲れるし......
「すっごい疲れるんですよ」
「疲れなら私が取ってあげられるので、永遠に稼げますね(笑)」
「お前のおまじないってプラシーボじゃん」
「スライムは1体倒すと大銅貨1枚ですので、できるだけたくさん倒してください。石になってしまったスライムは売れないので持ち帰り不要です」
今回は売却の報酬はなしか......
「じゃあ頑張っていきましょー(笑)」
どうせ頑張らないエールの声が響いた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「良い天気ですねー(笑)」
「ポカポカですねー」
これから討伐クエストだというのに呑気な仲間達だ。
「空気が美味しいですねー(笑)」
「なんだかお腹すいてきましたー」
「おやつ持ってますよー。あーん(笑)」
「あーん」
......ピクニックかよ!
「流石に気が緩みすぎじゃないか?」
「ヤスさん。ピリピリしすぎても良いことないですよ」
「ルンちゃんの言う通りですよー。そんな常に交感神経ピリピリだと身体に悪いですし(笑)」
「こうかんしんけー?」
「ルンちゃんには難しいですかねー。大人になったら教えてあげますね(笑)」
「大人になったらわかるんですねー」
ルンは生返事を返している。
この子は本当に戦えるのか? これ以上なにもしない子が増えたら困るんだが......
ルンの持っている長い棒状の物について聞いてみる。
「その持っているのは武器か?」
「そうですよー。私愛用の棒です」
棒状の物は棒だったらしい。槍とかじゃないのか?
「まあ、槍も使えますけどー。手入れがめんどくさいんですよねー。棒なら多少凹んでも汚れても平気です」
ルンの言っていることもわからないこともないが......
普通こういう世界感だと自分の武器にこだわりとかあるんじゃないのか?
「ルンちゃんは物に縛られないタイプなんですねー。かっこいいですね(笑)」
「ふふん。私に扱えない棒はありませんよ!」
どや顔しているルンに落ちている木の棒を渡してみる。
「では、これを授けよう」
「今は愛用の棒があるので不要です」
......もっともだ。
「じゃあ、こんな感じの木の棒しかなかった場合はどうするんだ?」
「ヤスさんならどうしますか?」
まさかの質問で返ってきた。
うーん。
「これは武器としては使えないな。細いし......まあ叩かれたら少し痛いかもしれないけど」
「ヤスさんはどんな相手を想定したんですか?」
「え、特に考えてないけど......」
「甘いですね」
ルンの空気が変わった。
「戦いは基本的に素手厳禁です。触ったら死ぬかもしれない、それくらいの心構えは必要ですよ」
先程までピクニック気分だったやつに言われたくはないが、そんなこと言える雰囲気でもない。
「なんかすまん」
「謝られても困るのですが、ヤスさんは考え方を改めないと今後生き残れませんよ」
「ヤスさんに死なれたら私も困ります(笑)」
「わかったよ。考えを改める。おかしなところがあったら教えてくれ」
「はい。一緒に冒険行く仲ですし、私もあなたに死んでほしくはないです」
「みんなで力を合わせて頑張っていきましょうね(笑)」
相変わらず緩い感じのエールだが、今はこの雰囲気がとても助かる。
「ちなみにルンは触ったら死ぬような相手のとき、木の枝でどうするんだ?」
「逃げます。生き残りの基本は戦わないことです」
この子はいったいどんな人生を送ってきたのだろうか。
ヤスの知っている冒険者とは明らかに心構えが違う。ケイン達が考えなしなだけかもしれないが......
「木の棒使わないんですね(笑)」
「戦わないといけない状況なら使いますよ」
「あ、スライムだ」
話も途中だがスライムが現れた。
ルンの心構えも大事だが、今は目の前の敵だ。
アリスの言う通りならば危険ではないみたいだし。
「人の頭くらいの大きさですね(笑)」
「その表現だと攻撃しにくくなるからやめて」
危険ではないが一応距離を取りつつ様子をみる。
スライムはこちらに気がついているようだが、やはり襲ってくる感じはない。
「さてどうしたものか」
ルンの話を聞いた後だとどうしても身構えてしまう。
しばらく動けずにいるとルンがスライムに近づいていった。
「スライム相手に何ビビってるんですか?」
そう言うと手にした棒でスライムを真っ二つに叩き切った。
「お前があんなに脅してくるから慎重にもなるわ!」
「それは相手が得たいの知れない敵とか、見るからに強いとかそういうときの話です。これスライムですよ? 子供が遊んでたら倒しちゃったとかそういうレベルですよ?」
「ヤスさん! 私はその感じで良いと思いますよ。例え子供が倒しちゃう様な敵でも何があるかわからないですもんね(笑)」
エールのフォローは果たしてフォローなのだろうか? ......というか煽られているだけか。
ルンに分断されたスライムを見ると半分の大きさになっている。もう一方は石になったようだ。
生きているスライムは逃げていく。かなり早い......早っ!
「ふん!」
ルンの棒はスライムの上の方に当たった。
分離したスライムは小さい方が石になった。
「小さくなればなるほど当てにくそうだな。何かめちゃくちゃ早いし」
半分にし続けること4回、ルンは最後まで動いているスライムを靴ですりつぶした。
「はー。これで1匹の討伐が完了です。地味に疲れますねー」
これで大銅貨1枚か。効率よく倒せれば美味しいクエストだな
「次はヤスさんどうぞ。あそこにもう1匹いますよ」
「よし、任せろ!」
ヤスは思いっきりスライムを蹴ってみた。
1発目は問題なく当たり、スライムは分離して石とスライムになった。
が、2発目以降はなかなか当たらない。結局4回当てるのにルンの3倍以上の時間がかかってしまった。
「ヤスさーん。頑張ってくださーい(笑)」
「ぜーぜー......」
全力でスライムを追い回しているヤスには、エールの応援に応える余裕はない。
「あ、こっち来た。えい(笑)」
ぷち。
なんだろう、釈然としない
「やりましたね、エールさん! 1匹討伐です!」
「ありがとうございます! ルンちゃんのおかげです(笑)」
「ぜー、ぜーっ......。お、俺のおかげだろっ......」
ヤスのか細い突っ込みはエールに届くことはなかった。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「結局一日使って倒したスライムは10匹ですか」
倒した内訳は、ルンが5匹、エールが4匹、ヤスが1匹だったが、報酬は山分けにしてくれた。
「ヤスさんは私たちに感謝してくださいね(笑)」
結局ヤスがスライムを攻撃して、最後のとどめはエールが踏むというのが続いた。
何故か最後はスライムがエールに吸い寄せられていく。意味がわからない。
「ありがとうございます......」
釈然としないが、嫌な顔ひとつせずに報酬を等分してくれたのでお礼を言う。
「私たち仲間じゃないですか。気にしないでください」
ルンが優しい目を向けて言ってくるのが余計に虚しい。
「でも1日やってこの額だと生活が厳しいな」
「私もこれだと今日泊まる宿代もないです......」
「ルンちゃんが嫌じゃないなら私達と一緒に泊まりますか?」
「助かります! やっぱり持つべきは仲間ですね!」
あの部屋2人でも狭いんだが......
文句を言えば自分が追い出されそうなので黙っていることにした。
「でも部屋が狭いので、ルンちゃんは私と一緒に寝ることになりますけど良いですか?」
「私は気にしませんよ」
「ヤスさんも一緒に寝ますか?(笑)」
「仕方ないなー」
「私は嫌です」
「さっきまで仲間って良いですねって言ってたじゃないか」
「それとこれとは話が別です」
「あーあヤスさんの日頃の行いが悪いからー(笑)」
今日会ったばっかりじゃん......
エールとルンが部屋に戻っていく。
ヤスだけに疎外感を残して。
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さらなる魔法の発展を求め、自らの魂を未来へ送る転生魔法を発動した。成熟した古代魔法を超える研究が進んだ世界を見たいという純粋な探求心から、5000年後の世界へと意識を沈めた。
目覚めた先は、スケルド男爵家三男レイフとしての赤子の身体だった。産まれた瞬間から記憶を持つ彼は、質素な家と薄い魔力の流れを前に、未来の魔法研究が古代よりも大きく退化していることに気づく。最底辺と呼ばれる家に生まれながらも、家族は温かく、彼の異常な魔力量を希望として受け入れた。
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