天使エールはいっっっっつも笑顔

夏木ユキ

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12話 襲撃その2

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「あらあら(笑)」

月明かりが綺麗な夜。川に映る月へ沈みゆくパンツ。
ヤスの人望も川底へ沈んでいく。

「とりあえず川から離れるんだ!」

川の中ほどには蛇のようなモンスターが頭を上げてこちらを見ている。今すぐに襲ってくる気配はないが用心に越したことはない。
とりあえず20mほど川から離れ、後ろを見ると蛇が川岸に上がるところだった。

「けっこう大きいですね。ヤスさんどうしましょう?(笑)」

見た感じ3mほどの太めの蛇がこちらに向かってくる。

「エール! あれがアンデッドかどうかわかるか?」

「あの蛇さんは生きてますよ(笑)」

じゃあ、エールの力では倒せそうにない。

「私の棒とも相性が悪いです!」

ルンにも厳しいようだ。流石にあの大きさの蛇に棒では厳しいか。

「わかった。倒さなくていいから時間は稼げそうか?」

「逃げた方がよくないですか!?」

「トイレの度に死にかけてたら困るだろ! 深追いしなくて良いから、不味いと思ったら洞窟まで逃げてくれ!」

「わかりました! とりあえずやってみますが長くはもちませんよ!」

ルンは蛇と距離をとりつつ、ヤス達から離れていく。
蛇はルンの方へ引きつけられている。

「エール! 石を集めてくれ、投石で削るぞ!」

「私、ヤスさんの考えが段々わかってきた気がします(笑)」

エールの手には既に手頃な大きさの石があった。

「お、助かる。ルン! 今から石投げるから気をつけろよ!」

「気をつけろって酷くないですか!?」

ルンの方を見ると、まだ一定の距離を取って蛇の回りを走っている。
チラチラと見えそうになっているが、遠いのと夜なのとであまり良く見えない。
せめてもう少し近ければ......

「ヤスさん何考えてるんですかー?(笑)」

「おらっ!」

エールを無視して投げた石は蛇に命中した。少し血が出ている様だ。

「身体に当てても大したダメージになってなさそうですよ!」

確かにそのようだ。一応痛かったのか、蛇がこちらに向かってくる。
次の石は顔に照準を合わせる。

「おらっ!」

蛇の頭を狙った石は、余裕を持って避けられてしまった。

「避けられちゃいますね(笑)」

これは俺らの戦力じゃ厳しい相手な気がしてきた。
とりあえずもう2~3個投石してみる。
しかし、頭を狙ったものは器用に避けてしまう。

「流石に身体に来た石は避けられないみたいですね(笑)」

そうこうしているうちに、蛇との距離は縮まっている。

「ルン! そっちからも投げて引きつけてくれ!」

「わかりました!」

びゅん!
ルンの投げた石は蛇に当たらず、地面に落ち、そのまま転がってヤスの脛にかすった。

「危ねえ!」

「すみませんね! 気をつけてください!」

もしかしたら少し怒っているのか? というかわざとじゃないよな?

「大丈夫だ。でも、とりあえず蛇に当ててくれ!」

「がんばります!」

ルンの2投目。蛇の頭から1メートルくらい横を抜けていく。

「下手くそか!」

「仕方ないじゃないですか!」

「喧嘩している場合じゃないですよー(笑)」

確かにそうなんだが......

「ルン! とりあえずそっちにある石手当たりしだいに投げろ!」

「おりゃ」

もう投げていた。
先ほどと同じく頭の横に逸れそうだったが、蛇はその石を丸呑みにした。

「なんでわざわざ飲み込んだんだ?」

「お腹減ってたんですかね?(笑)」

ルンの方を見ると、手が赤くなっている。

「怪我したのか!?」

「違います。さっき投げた石に蛇の血が付いてたんです」

血の匂いに反応したのか? 試してみる価値はありそうだ。

「まだ血が付いた石があるはずだ! それ全部投げてくれ!」

「わかりました!」

ルンが3つくらい連続で投げると、蛇はすべて丸呑みにした。

「ルン! 俺が蛇に投げて当てるから、そのときに血が付いた石を拾って投げつけてくれ!」

「よくわかりませんが、わかりました!」

ヤスの投げた石が命中し、蛇の血が付いた石をルンが投げ、それを蛇が丸呑みにする。
10回くらい繰り返すと、蛇の動きが見るからに鈍ってきている。

「ヤスさん!これ繰り返したら勝てそうですね(笑)」

意図に気づいたエールが、もう勝った気でいる。
しかし、この方法で止めを刺すのは厳しそうだ。何かないか.....

「やっぱり、このまま逃げるのも手だな......」

「でもこれからのトイレどうするんですか?(笑)」

確かにそうだ。今後の平和なトイレのためにここで何とかしておきたい。

「エール。何か良い考えは無いか?」

期待はできないが聞いてみる

「ちょっと試したいことがあるんです(笑)」

ヤスは想定外のエールのセリフに驚きながら話を聞く。

「......それって女の子としてどうなの?」

「生き残るために男も女も関係ありませんよ(笑)」

たくましい子だな。そうヤスは思いました。
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