天使エールはいっっっっつも笑顔

夏木ユキ

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15話 魔法

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 タマキを連れて洞窟へ向かう。

「この穴です(笑)」

「ふむ。ここか」

 タマキは少し離れた所から洞窟の周りを観察した後、ヤス達の元へ戻ってきた。

「換気ができるようにしたいって言っていたな。任せておけ」

「本当ですか!? 助かります!」

 しかし、どうするつもりなのだろうか?
 ヤスが確認しようとすると

「もう居ませんね(笑)」

 タマキが消えた。

「私は水を汲みに行けば良いですか?」

「そうだな。大変だけど頼む」

 ルンが水汲みを申し出てくれた。重労働だから助かる。

「任せといてください!」

 ルンが川へ向かった後、ヤスとエールは木材を探しに行くことにした。

「とりあえず、焚き火用の木が必要だな」

 夜、星明かりはあるが、火があると安心できる。

「頑張りましょうね(笑)」

「じゃあ、そっちは任せた」

「はーい(笑)」

 しばらく薪を拾い集め、そろそろ帰ろうかと思い始めた頃。
 少し先の方からエールの声が聞こえた。

「ヤスさーん、これ何かに使えそうじゃないですか?(笑)」

「お、確かに。しかも2人でならギリギリ運べそうな大きさだな」

「後で皆さん呼んで運びましょう(笑)」

 エールは重労働をしてくれない。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 洞窟に戻るとタマキが洞窟の上の道にいた。

「そんなところで何してるんですか?」

「換気が出来ないなら天井に穴開ければいいじゃない......ということで開けといたぞ」

 え? どういうこと?
 ヤスとエールが洞窟に入ると、ルンが天井を見上げていた。

「天井が高い家って良いですよねー」

「高いと言うより、無いですけどね(笑)」

 こんな穴開けてどうするんだ......というか1人で掘ったのか?

「ふふん、いい仕事をしただろう」

 穴の上からタマキの声が聞こえる。

「今降りるから、そこどいてくれ......っと」

 飛び降りてきた。

「あ、見えました(笑)」

「ふむ。減るもんでもないし気にするな」

 少なくともそれは見られた側のセリフではない。

「これ1人で掘ったんですか?」

「そうだ」

「結構大変だと思うんですけど......」

 洞窟から上の道までは5m以上ある。

「穴掘りが気持ち良くなる魔法をかけたのでな」

 魔法? エールのおまじないだろうか?
 それにしても穴掘りが気持ち良くなるって限定的すぎるだろ。

「えーっと、おまじないみたいな感じですかね」

「いや、魔法だ」

 話をまとめると、どうやらタマキは魔法が使えるらしい。人間の三大欲求である睡眠欲、食欲、性欲をコントロールできる魔法だそうだ。
 タマキは辛い作業に性的快感を得るような魔法を自身にかけたらしい。

 すごいんだけど、コメントに困る。そしてヤスが想像していた魔法とは違った。ツリーマンの討伐には火の魔法が有効と書いてあったので、火や水などの魔法を想像していたが精神に働きかける魔法も存在するようだ。

「性欲ですか......」

「でも見た感じには変化がないですね(笑)」

 エールの言う通り、タマキは顔色一つ変わっていない。

「ふむ。気持ち良いというのはわかるんだが、長年使っていたら慣れてしまってな。私はもう顔に出ないのさ。試してみるかい?」

「またの機会にしておきますね(笑)」

「機会があるの?」

「ふふっ、内緒です(笑)」

 気になる。

「それにしても魔法って初めてみた。なんでもありだな」

「タマキさんの魔法はかなり特殊ですよ。こんなの聞いたことありません」

 この世界出身のルンにとってもタマキの魔法は特殊らしい。

「特殊じゃない魔法って何なの?」

「手から水を出したり、土を出したり、火を出したり、風を吹かしたりです」

 ヤスが想像していたような魔法だった。
 風の魔法が使える人がいれば換気する必要もなかったのかもしれない。

「風の魔法があれば、天井に穴が開くこともなかったのか......」

「そうかもしれないですけど、そもそもこの世界で魔法が使える人が少ないんですよ。魔法が存在することを知らない人もいるくらいですし」

 冒険者には知られていても、一般の人は魔法の存在を知らずに一生を終えることもあるらしい。それほど魔法使いは珍しい存在なようだ。ならツリーマンの討伐方法に火の魔法を使うなど書かないで欲しい。

「へー。ルンは結構詳しいのか?」

「私、魔法使えますし」

「......初耳なんだけど」

「機会がなかったので」

「あらあら(笑)」

「ルンは何が出来るんだ?」

「水が出せます」

 どうやら脱水で死ぬ心配がなくなったようだ。

「すごいな......ん?」

 そういえばルンが真先に水汲み係に立候補してくれてたような気がする。

「サボってた?」

「適材適所ですよ(笑)」

 確かにそうか。

「ただ、1日5リットル位しか出せません」

「制限あるのか。使いどころが難しいな」

「トイレの水が出ない時や紙がない時、何度も助けられました」

 珍しい能力は、日常に即した使われ方をしていた。

「とりあえず、洞窟から出ようか」

 大人4人でこの洞窟は窮屈だった。

「もう洞窟じゃないですけどね(笑)」

 魔法のインパクトで天井に穴が空いたのを忘れていた。とりあえず穴を塞がなければ......

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

「さて、どうするかな」

 エールとタマキには夕飯を捕まえに行ってもらったので、今はヤスとルンの2人しかいない。

「木で柵を作って上に被せるか......」

「まあ、それが妥当ですね」

「さっきエールが見つけた良い感じの木材があるから取りに行こうか」

 木材は2人いれば運べそうだったのでルンと取りに行くことにした。

「あ、スライムですよ」

 森に入るとスライムが数匹いた。安全だというのは以前のクエストで体験済みなため慌てる必要はない。
 ヤスがスライムを指でつんつんしていると、ふと頭にアイデアが降りてきた。

「こいつが固まる前に型に流し込めば簡単に柵ができるんじゃないか?」

「どうでしょう?」

 上手くいけば木を加工するより楽そうだ。
 そうと決まれば早速試してみたい。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

「捕まえてきましたよ」

「よし、じゃあその穴に入れておいてくれ」

 ヤスがスライムを逃がさないための穴を掘っている間、ルンには捕まえに行ってもらった。
 ルンが捕まえてきた3匹のスライムを穴の中に入れる。

「で、どうするんですか?」

 スライムを叩いて分裂させれば片方が固まる。なら、型の上でやればその通りに固まるのではないか?

「そこの上でスライムを叩く」

 ヤスは、逃げないようの穴とは別に作っておいた地面の窪みを指差す。窪みは、薄い正方形の型になっているので、3匹いれば十分だろう。

「じゃあ、ヤスさんに任せます」

 ヤスは、ルンが差し出したスライムを1匹受け取り、窪みの上でスライムを叩いた。

「あ、逃げちゃいましたよ!」

「とりあえず、放っておいていいぞ」

 スライムは1度分裂すると動きが早くなるため、1匹のスライムから手に入る素材は半分くらいだ。今回は倒す必要がないため、逃げたスライムは追わない事にした。
 残りの2匹も同様に処理する。

「お、いい感じだな」

 薄くても丈夫な柵ができた。

「これなら、他にも色々作れるんじゃないか?」

「でも、スライムを集めるのは効率が悪いですよ。何処にいるのかはっきりしませんし......」

 確かに、さっきの3匹は偶然見つけたのだ。色々作るとなると、もっとたくさんのスライムが必要になる。
 ヤスとルンが頭を悩ませていると夕飯係の2人が帰ってきた

「お魚釣れましたー(笑)」

「ふむ。2人ともどうした? 難しい顔をして」

 スライムで作った柵を見せて経緯を説明し、どうやってスライムを集めるか悩み中なのを伝えた。

「ふむ。なるほどな」

「増やせませんかね(笑)」

 そもそもスライムはどうやって増えるのか? 生き物だし増える事は確かだろう。
 ルンに確認すると、スライムは身近なモンスターだが、その生態はほとんどわかっていないらしい。

「わからないなら観察しましょう(笑)」

 エールは相変わらず前向きだ。

「じゃあ、その役割はエールに任せた。色々試してどうなるか観察してくれ」

「わかりましたー(笑)」

 エールは重労働以外ならしっかり仕事をしてくれる。

「何でもして良いんですか?(笑)」

「ああ、エールに任せるよ」

「じゃあ、ヤスさんの分のお魚を食べさせてみますね(笑)」

「......」

 確かに任せるとは言ったけど。

「エールさん。今日はもうスライムがいないので、明日捕まえに行きましょう」

 夕飯のおかずが無事で一安心だ。

「あげるなら明日のヤスさんの分です」

「......」

「君はいじめられているのか?」

 タマキが同情するような目で見てくる

「なんだかんだ言って、ちゃんとくれるはずです......」

 たぶん、きっと、恐らく......

「なら良いが」

 エールが魚を焼くのを見ながら、明日からのおかずに不安を抱くヤスだった。
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