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第18話
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駅前の個室のあるお店に入って、ビールを飲み始めたが、泣き顔を見られてなんだか恥ずかしかった。
「川瀬痩せたな。仕事大変なのか?」
「そうかな?大丈夫だよ」
「ムリするなよ」
「ありがとう」と言って、次の言葉を発することに躊躇する。
緊張して、ビールも進まない。菅野もあまり飲んでいなかった。
早々にお店を出て
「夜景でも見に行く?」と聞かれた。まだ大切な事を伝えていない焦りもあり
「行きたい」と答えた。タクシーに乗り、菅野が行き先を告げた。
前に来た時は寒かったが、今日は暖かい。しかし、緊張からか末梢が冷たく感じる。夜景を見ながら、菅野を盗み見る。視線がぶつかって、菅野が自分の方に向き直った。
「会うと諦めきれないから会わないようにしてたけど、川瀬からの連絡嬉しかった。川瀬のこと未だに好きで、いいかげん諦めようと思ってたからビックリだったけど」
緊張の中、混乱する。
「あのね、今日来てもらったのは自分の気持ちに気付いて、それを伝えたいって思ったの」
「川瀬の気持ち?」
「うん。今更なんだけど私、菅野が好きだったことに気づいたの。だから嬉しい」と言い切った。すると大きな体に視界が塞がれる。
「ヤバイ。ホントに?」
「ずっと自分の気持ちに気づかなくて、ちゃんと考えなくて、ゴメンね。大好きだよ」と腕の隙間から言うと、さらに力を込めて抱きしめた。その温もりを感じて、笑みが溢れた。
「10年越しだけど、好きってスゲ嬉しい」と腕の力を緩め、見下ろす。
「でも、菅野は小学生の時から凄くモテたでしょ?晴美が告白するの一緒に呼び出したこともあったし。なんで私だったの?」
「あん時、もう川瀬好きだったから、ムカついてた。川瀬、学校に犬連れて来たの覚えてる?」
「覚えてる。登校中に見つけて、中庭に繋いでたのにいなくなっちゃって」
「オレ、窓際だったから中庭見えて、保健所の人じゃないかな。檻みたいなのに入れて連れてった。いなくなって川瀬ずっと探してただろ?それ見てて優しいんだなって、気になり始めた」
「あの子、保健所に連れてかれたの?学校に連れて行かなきゃよかった。可哀想なことしちゃった」悲しくなる。
「暗くなるまで探してるの見て、それ言えなくてさ。でも、親に言って保健所から連れ帰って、今でも元気にしてるから大丈夫だよ」
「えっ?チャリ元気にしてるの?」
「チャリじゃなくてイチカだけど」
「妹がチャリって名前つけてたんだけど、なんで私の名前なの?」
「イチカって呼びたかったから」
「なにそれ。でも菅野って凄い。今まで何気なくフォローしてくれてて、離れてみて助けられてたことに気づいたの。今までありがとう」
「今までじゃなくて、これからもだろ」
「そうだね。これからもよろしくね」
「川瀬がオレの彼女かぁ」と笑って菅野が言う。夜景は鮮やかな光を放ち、その上には沢山の星が輝いていた。
「川瀬痩せたな。仕事大変なのか?」
「そうかな?大丈夫だよ」
「ムリするなよ」
「ありがとう」と言って、次の言葉を発することに躊躇する。
緊張して、ビールも進まない。菅野もあまり飲んでいなかった。
早々にお店を出て
「夜景でも見に行く?」と聞かれた。まだ大切な事を伝えていない焦りもあり
「行きたい」と答えた。タクシーに乗り、菅野が行き先を告げた。
前に来た時は寒かったが、今日は暖かい。しかし、緊張からか末梢が冷たく感じる。夜景を見ながら、菅野を盗み見る。視線がぶつかって、菅野が自分の方に向き直った。
「会うと諦めきれないから会わないようにしてたけど、川瀬からの連絡嬉しかった。川瀬のこと未だに好きで、いいかげん諦めようと思ってたからビックリだったけど」
緊張の中、混乱する。
「あのね、今日来てもらったのは自分の気持ちに気付いて、それを伝えたいって思ったの」
「川瀬の気持ち?」
「うん。今更なんだけど私、菅野が好きだったことに気づいたの。だから嬉しい」と言い切った。すると大きな体に視界が塞がれる。
「ヤバイ。ホントに?」
「ずっと自分の気持ちに気づかなくて、ちゃんと考えなくて、ゴメンね。大好きだよ」と腕の隙間から言うと、さらに力を込めて抱きしめた。その温もりを感じて、笑みが溢れた。
「10年越しだけど、好きってスゲ嬉しい」と腕の力を緩め、見下ろす。
「でも、菅野は小学生の時から凄くモテたでしょ?晴美が告白するの一緒に呼び出したこともあったし。なんで私だったの?」
「あん時、もう川瀬好きだったから、ムカついてた。川瀬、学校に犬連れて来たの覚えてる?」
「覚えてる。登校中に見つけて、中庭に繋いでたのにいなくなっちゃって」
「オレ、窓際だったから中庭見えて、保健所の人じゃないかな。檻みたいなのに入れて連れてった。いなくなって川瀬ずっと探してただろ?それ見てて優しいんだなって、気になり始めた」
「あの子、保健所に連れてかれたの?学校に連れて行かなきゃよかった。可哀想なことしちゃった」悲しくなる。
「暗くなるまで探してるの見て、それ言えなくてさ。でも、親に言って保健所から連れ帰って、今でも元気にしてるから大丈夫だよ」
「えっ?チャリ元気にしてるの?」
「チャリじゃなくてイチカだけど」
「妹がチャリって名前つけてたんだけど、なんで私の名前なの?」
「イチカって呼びたかったから」
「なにそれ。でも菅野って凄い。今まで何気なくフォローしてくれてて、離れてみて助けられてたことに気づいたの。今までありがとう」
「今までじゃなくて、これからもだろ」
「そうだね。これからもよろしくね」
「川瀬がオレの彼女かぁ」と笑って菅野が言う。夜景は鮮やかな光を放ち、その上には沢山の星が輝いていた。
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