5 / 285
第一章
変身、斬心の魔法少女・クアンタ-04
しおりを挟む
男一人を遠くまで放り投げ、しかし表情一つ変えず、汗一つかく事も無くそういったクアンタが前に出ると、それを静止するリンナ。
「コイツらは、あくまで商売に来てるだけだ。ムカつく奴らではあるけど、アンタみたいなベッピンさんが出る幕じゃねぇ」
「了解、静観する」
すん、とその場で真っすぐ身体を伸ばして立っているだけの、無口な女の存在に、全員が驚きと恐怖によって黙っていたが、しかし数秒ほど時間経過すると「ふん」と鼻を鳴らしながら、ヴァルブが不機嫌そうにした。
「では今回は諦めよう。しかし、その不遜な態度やそこの女の暴行、私の我慢もそろそろ限界だ。次に来た時までにその態度が直っていない場合、分かっているだろうな?」
「このベッピンさんがやった事は謝るけどね、別に悪い事はしてないでしょーよ。アタシの仕事場で勝手な事されちゃ困るから、この子がやってなきゃアタシがアイツの頭カチ割ってたよ」
「いいか。次までにあの刀をしっかりと用意し、何時でも私へ献上する準備を整えておけよ!」
そう言って男たちを引き連れ、リンナの家より立ち去っていく四人の姿を見届けた後、彼女は頭を掻きむしりながら「ムカつく!」と一度叫んだ後、早足で家の中へと入った後、恐らく塩だと思われる白い結晶を周りへ撒いた。
「あーチクショーあの連中マジでしつこいんだから」
「刀の買い手か」
「そーよ。でも欲しがってんのはただの刀じゃなくてねぇ」
そうして気持ちを落ち着かせたのか、ふぅっと息を吐いたリンナが、クアンタの手を取って引き戸の玄関を開け、リンナを中へ招く。
通された畳の居間。日本式の居住と殆ど同じであると記録しつつ、クアンタはリンナがどこからか持ってきた刀を渡されて、首を傾げる。
「これは」
「アタシの親父が遺作として打った刀。名前は無いけど、かなりの業物なの」
「価値がある刀か」
「娘のアタシが言うのも何だけどさ、マジでソイツは他の刀と違う。さっき言った魂が全て打ち込まれているような、そんな刀」
「では、高値を付けて売ればいい。刀は使用される事が本分であるはずだ」
「しない。……そりゃ、こんだけの業物なら、贅沢しなきゃ一生暮らせるほどの大金は手に入るだろうし、買い叩かれてはいるけど、あのヴァルブも相当の額を提示してくれてる」
「ではなぜ」
「親父の魂が籠った遺作だもんよ。無神経で親不孝者だったアタシだけど、自分の父親を売れる程、人でなしでもねーって思ってるから」
言っていて気恥ずかしくなったのか、少々顔を赤くしたリンナが「それより!」と胡坐をかく足を叩きながら、クアンタの頭を撫でた。
「さっきのアンタ、スカッとしたよ! あんだけ大の男をぶん投げられるって筋肉スゲーわね? 鍛えてんの?」
「筋肉トレーニングなどの経験はない」
「ほーん、あんだけ暑い場所で金槌振ってたにも関わらず汗一つもかいてねぇし、逸材だよ」
クアンタの背中を叩きながら、何か思いついたように「そーだ」と肩を掴んだリンナ。
「アンタさぁ、帰る家が無いって言ってたけど、求職者かなんか?」
「少々事情があるのだが、今この世に自分が身を寄せる場所がなく、働き口がない事も確かだ」
「じゃあさぁ、アタシの弟子になんなさいよ! 少ないけど給金は出すし、この家に住み込みで飯も用意する! いい条件じゃないかね!?」
数秒、クアンタは目を閉じて思考する。
現状身を寄せる場所が無く、今いるこの地に明るくないクアンタは、元いた世界に帰る方法さえわからぬ状況である。
法律や倫理等に縛られる事なく過ごす事は可能だが、しかし要らぬ問題を生んでしまう事にも繋がってしまう。
であるならば、彼女の申し出を受ける事が何よりも適切ではないか。
そう考えつつも、しかしクアンタは別の理由を以て、その提案に頷いた。
「――私も刀についてもっと知りたい。リンナの弟子になろう」
「うっし、労働力に加えて有望な弟子もゲットぉっ!」
ガッツポーズをして喜ぶリンナ。
だがクアンタは、今自身が言った言葉に、自分自身で驚き、困惑している。
思わぬ想いを口にしてしまった。
それが自分にとっての異常行動であると、彼女は分かっていたが、しかし本心ではある事を認め、訂正する必要は無いと口を紡ぐ。
「? なんかあんま嬉しそうじゃない感じ?」
「いや、先ほどの言葉に偽りはない。気にしないでくれ」
「あ、そ。じゃあクアンタ、アンタはこれからアタシの事、お師匠と呼びなさい!」
「了解した、お師匠」
「お、っほぉ……っ、お師匠って呼ばれるのこんなにキモチいいのねぇ……っ! 最高よ最高っ! ね、もっかい言って!?」
「お師匠」
「やーんメチャクチャ気持ちいいーっ! やっべ、女みたいな声出ちゃった!」
「お師匠は女では」
「女ってのはクアンタみたいなベッピンさんの事を言うの! アタシみたいなガサツな奴は男みたいなモンよ」
「そうか、私も女か」
「何当たり前の事言ってんの? それより、飯にしましょ。クアンタ、アンタ食べたいものある?」
「私に食事は必要ない」
「必要ないわけ無いじゃんよ。んー、まぁ無いなら適当に作っちゃうから、アンタはそこにある箒でも使って軽く掃き掃除でもお願い」
「了解」
「コイツらは、あくまで商売に来てるだけだ。ムカつく奴らではあるけど、アンタみたいなベッピンさんが出る幕じゃねぇ」
「了解、静観する」
すん、とその場で真っすぐ身体を伸ばして立っているだけの、無口な女の存在に、全員が驚きと恐怖によって黙っていたが、しかし数秒ほど時間経過すると「ふん」と鼻を鳴らしながら、ヴァルブが不機嫌そうにした。
「では今回は諦めよう。しかし、その不遜な態度やそこの女の暴行、私の我慢もそろそろ限界だ。次に来た時までにその態度が直っていない場合、分かっているだろうな?」
「このベッピンさんがやった事は謝るけどね、別に悪い事はしてないでしょーよ。アタシの仕事場で勝手な事されちゃ困るから、この子がやってなきゃアタシがアイツの頭カチ割ってたよ」
「いいか。次までにあの刀をしっかりと用意し、何時でも私へ献上する準備を整えておけよ!」
そう言って男たちを引き連れ、リンナの家より立ち去っていく四人の姿を見届けた後、彼女は頭を掻きむしりながら「ムカつく!」と一度叫んだ後、早足で家の中へと入った後、恐らく塩だと思われる白い結晶を周りへ撒いた。
「あーチクショーあの連中マジでしつこいんだから」
「刀の買い手か」
「そーよ。でも欲しがってんのはただの刀じゃなくてねぇ」
そうして気持ちを落ち着かせたのか、ふぅっと息を吐いたリンナが、クアンタの手を取って引き戸の玄関を開け、リンナを中へ招く。
通された畳の居間。日本式の居住と殆ど同じであると記録しつつ、クアンタはリンナがどこからか持ってきた刀を渡されて、首を傾げる。
「これは」
「アタシの親父が遺作として打った刀。名前は無いけど、かなりの業物なの」
「価値がある刀か」
「娘のアタシが言うのも何だけどさ、マジでソイツは他の刀と違う。さっき言った魂が全て打ち込まれているような、そんな刀」
「では、高値を付けて売ればいい。刀は使用される事が本分であるはずだ」
「しない。……そりゃ、こんだけの業物なら、贅沢しなきゃ一生暮らせるほどの大金は手に入るだろうし、買い叩かれてはいるけど、あのヴァルブも相当の額を提示してくれてる」
「ではなぜ」
「親父の魂が籠った遺作だもんよ。無神経で親不孝者だったアタシだけど、自分の父親を売れる程、人でなしでもねーって思ってるから」
言っていて気恥ずかしくなったのか、少々顔を赤くしたリンナが「それより!」と胡坐をかく足を叩きながら、クアンタの頭を撫でた。
「さっきのアンタ、スカッとしたよ! あんだけ大の男をぶん投げられるって筋肉スゲーわね? 鍛えてんの?」
「筋肉トレーニングなどの経験はない」
「ほーん、あんだけ暑い場所で金槌振ってたにも関わらず汗一つもかいてねぇし、逸材だよ」
クアンタの背中を叩きながら、何か思いついたように「そーだ」と肩を掴んだリンナ。
「アンタさぁ、帰る家が無いって言ってたけど、求職者かなんか?」
「少々事情があるのだが、今この世に自分が身を寄せる場所がなく、働き口がない事も確かだ」
「じゃあさぁ、アタシの弟子になんなさいよ! 少ないけど給金は出すし、この家に住み込みで飯も用意する! いい条件じゃないかね!?」
数秒、クアンタは目を閉じて思考する。
現状身を寄せる場所が無く、今いるこの地に明るくないクアンタは、元いた世界に帰る方法さえわからぬ状況である。
法律や倫理等に縛られる事なく過ごす事は可能だが、しかし要らぬ問題を生んでしまう事にも繋がってしまう。
であるならば、彼女の申し出を受ける事が何よりも適切ではないか。
そう考えつつも、しかしクアンタは別の理由を以て、その提案に頷いた。
「――私も刀についてもっと知りたい。リンナの弟子になろう」
「うっし、労働力に加えて有望な弟子もゲットぉっ!」
ガッツポーズをして喜ぶリンナ。
だがクアンタは、今自身が言った言葉に、自分自身で驚き、困惑している。
思わぬ想いを口にしてしまった。
それが自分にとっての異常行動であると、彼女は分かっていたが、しかし本心ではある事を認め、訂正する必要は無いと口を紡ぐ。
「? なんかあんま嬉しそうじゃない感じ?」
「いや、先ほどの言葉に偽りはない。気にしないでくれ」
「あ、そ。じゃあクアンタ、アンタはこれからアタシの事、お師匠と呼びなさい!」
「了解した、お師匠」
「お、っほぉ……っ、お師匠って呼ばれるのこんなにキモチいいのねぇ……っ! 最高よ最高っ! ね、もっかい言って!?」
「お師匠」
「やーんメチャクチャ気持ちいいーっ! やっべ、女みたいな声出ちゃった!」
「お師匠は女では」
「女ってのはクアンタみたいなベッピンさんの事を言うの! アタシみたいなガサツな奴は男みたいなモンよ」
「そうか、私も女か」
「何当たり前の事言ってんの? それより、飯にしましょ。クアンタ、アンタ食べたいものある?」
「私に食事は必要ない」
「必要ないわけ無いじゃんよ。んー、まぁ無いなら適当に作っちゃうから、アンタはそこにある箒でも使って軽く掃き掃除でもお願い」
「了解」
0
あなたにおすすめの小説
異世界ニートを生贄に。
ハマハマ
ファンタジー
『勇者ファネルの寿命がそろそろやばい。あいつだけ人族だから当たり前だったんだが』
五英雄の一人、人族の勇者ファネルの寿命は尽きかけていた。
その代わりとして、地球という名の異世界から新たな『生贄』に選ばれた日本出身ニートの京野太郎。
その世界は七十年前、世界の希望・五英雄と、昏き世界から来た神との戦いの際、辛くも昏き世界から来た神を倒したが、世界の核を破壊され、1/4を残して崩壊。
残された1/4の世界を守るため、五英雄は結界を張り、結界を維持する為にそれぞれが結界の礎となった。
そして七十年後の今。
結界の新たな礎とされるべく連れて来られた日本のニート京野太郎。
そんな太郎のニート生活はどうなってしまう? というお話なんですが、主人公は五英雄の一人、真祖の吸血鬼ブラムの子だったりします。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
フィフティドールは笑いたい 〜謎の組織から支援を受けてるけど怪し過ぎるんですけど!?〜
狐隠リオ
ファンタジー
偉大なる魔女の守護者、それが騎士。
大勢の若者たちがその英雄譚に魅了され、その道へと歩み始めていた。
だけど俺、志季春護は騎士を目指しながらも他とは少し違かった。
大勢を護るために戦うのではなく、残された二人の家族を護るために剣を振るう。
妹の夏実と姉の冬華。二人を護るために春護は努力を続けていた。
だけど……二人とも失ってしまった。
死の淵を彷徨った俺は一人の少女と出会い、怪しげな彼女と契約を交わしたんだ。
契約によって得た新たな力を使い俺は進む。騎士の相棒である水花と共に。
好意的だけど底の知れないナニカの助力を受け、少年は強さを求める。
家族の仇を取るために、魔族を討滅するために。
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
黒木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる