魔法少女の異世界刀匠生活

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第二章

シドニア・ヴ・レ・レアルター09

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「お師匠」

「な、なに?」

「私にも、二本の刀を用立てて欲しい。この遺作を使って欲しくはないだろう」


 腰に据えていた、リンナの父が打ったとする遺作を彼女へと預けると、彼女は上手く思考が働いてい無さそうに、しかし首を傾げながら要望を聞く。


「え、えーっと……その、種類はどんなのがいいの?」

「片手で扱える刀。そして出来れば長さはシドニアのように長めと短めで分けて頂きたい」

「わ、分かったからシドニア様を普通に呼び捨てで呼ぶのやめてくんない!? 心臓に超悪い!」

「呼べと言われているのに呼ばない方が失礼かと思うのだが」


 クアンタの言葉は、急ぎ離れの蔵へと向かっていくリンナには聞こえていなかったが、しかし二分も経たずに蔵から刀を二本用立てたリンナが、説明を開始。


「今度また詳しく教えるけど、まずこの二本には呼び方がある」

「ほう」

「まずこっち、比べて長い方ね」


 おおよそ刀身が七十センチ程の刀をクアンタへ渡す。


「これは打刀(うちがたな)。親父の遺作もだけど、刀っつったら大体コレの事を言ってる場合が多いね」


 んで、と間に挟みながら渡す短い刀は、先ほどよりも三十センチほど刀身が短めの、小さな刀だった。


「こっちが脇差(わきざし)。長さが違うだけで基本的に同じ刀だけど、この二本だったら取り回ししやすいでしょ」

「感謝する」


 魔法少女としての兵装に付けられたスカートのベルトへ、二つの鞘を結んで固定、その上でシドニアと距離を開けつつも、向かい合う。


「待たせてすまない」

「いいや、むしろこの待ち時間を楽しむ事が出来た」

「それより、ゴルタナを展開しろ。私は変身しているというのにお前がゴルタナを展開していないのでは、いざと言う時に私が困るのだが」

「大丈夫だ。――さぁ、交わろうクアンタ」


 二者が剣と刀を抜くタイミングは同時だったが、スピードはクアンタの方が早かった。

  一瞬で打刀を抜き放ち、シドニアから見て左方から斬りかかる彼女のスピードは、リンナにとっては残像程しか捉えきれぬ程の、疾走。

  しかしシドニアが右手で抜いた剣を構え、彼女の振り切った刀と剣が衝突するも、クアンタの振った刀はシドニアの剣によって上方へと受け流される。

  キン――と金属同士の接触音が聞こえたタイミングで、クアンタの身体が無防備に。

  続けてシドニアは左手で短剣を抜き放つと、勢いよく横薙ぎで振り切ろうとするも、しかし動きを読んでいたクアンタが同じく左手で、脇差を逆手持ち状態で抜き、受け、振り切る事で二者との間に距離を開ける。


「――早いな、シドニア」

「私も驚いているよ、クアンタ。ギアを一つ上げるとしよう――ッ!」


 開かれた距離は、続けてシドニアによって埋められた。

  だがそこからの剣劇は、既にリンナの目には捉えきれぬ程の、瞬速。

  辛うじて見えるのは、金属と金属がぶつかり合い、僅かに散らす火花だけ。

  互いの隙を見つけ、その隙に向けて斬り込もうとすると出来る隙を、互いに持つ二本の刀剣で斬り、防ぎの繰り返し。

  鍔迫り合いも、斬り結びも無く、ただ剣と刀同士の接触と共に、力は受け流され、次の瞬間には違う動きへと向かっていく。


  パワーもスピードも、勿論魔法少女へと変身しているクアンタの方が上。

  しかしシドニアは彼女と同等のスピードは持たないが、しかしその動きを追い、受けるだけの動体視力と動きを追うスピードは持ち得るし、何より彼がクアンタよりも優れているのは技術の方だ。

  クアンタの振るう刀の流れを一瞬で見極め、力で受けきる事が出来ぬと判断した瞬間には、受けるのではなく流す事で彼女の放つ一撃のパワーを拡散している。

  しかも、それだけ力強い振り込みであれば、受け流した後にクアンタの体に隙が出来る事は必然。

  故に、シドニアはその隙を狙い、斬り込むが――クアンタには彼のような技術こそないが、そのスピードと動体視力は彼以上。


  出来た隙に斬りかかる彼の動きを、彼以上に動けるスピードと観察眼を以てして、防ぎ、次なる攻撃へと移る。

  一秒の間に四撃程度の攻防を幾度となく繰り広げる事一分。

  クアンタがシドニアとの距離を数メートル程開け、脇差を鞘に仕舞い、打刀を両手で掴んで構えた瞬間。


「――ふ、ッ!!」

「ッ――!!」


  彼女は数メートルの距離を一瞬で詰めると同時に、打刀を下段から振り込む。

  シドニアは表情を引き締めながら、防御の間に合う短剣で受け流そうと試みるも、しかし彼女のあまりに強力な振り込みを前に、短剣は受け流す前に弾き飛ばされ、その勢いを保ったまま、クアンタが素早く、上段から振り下ろす。


  ――しかし、寸前にクアンタが振り下ろす刀の向きを棟側へ持ち替えた僅かな時間で、シドニアは剣の面を左手で添えながら、クアンタの一撃を受ける時間を作り出し、流した。


「……なるほど。如何にゴルタナがあろうと、ヴァルブの私兵程度では勝てぬわけだ。パワーもスピードも、常人の域を逸脱している」

「そのゴルタナさえ展開せずに、お前は私とここまで渡り合っているんだぞ。もう少し喜んでくれないと、私の立つ瀬がないのだが」

「私を殺さぬように本気を出していないと気付いている。……これで大体、君の事を把握できた」
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