魔法少女の異世界刀匠生活

ミュート

文字の大きさ
59 / 285
第六章

円卓会議(ちゃぶ台)-05

しおりを挟む
「ではイルメールの快諾も得たという事で、今回の議題自体は終了だ。問題は今後どういった対応をしていくかだが、今まで寝ていたイルメールは、先ほど災いと相対したような口ぶりでしたが?」

「ん、アァ。ちょいと相手してやったが、ダメだなアリャ、兵隊としては強ェかもしれねェけどな。思考回路がねェのか、クアンタみたいに応用が利くわけでもねェ、ゴルタナ装着した奴が相手すれば問題なく勝てるレベルだ。そう大した脅威とは思わねェよ」

「しかし問題は数です。イルメール領における被害総数、記憶にありますかな?」

「えー……いっぱい」

「イルメールよ、主は領主という自覚があるのかぇ?」

「しゃーねェだろぉ? 一日に『今日は災いによる被害が何件ありました』だの、言われたって数えてらんねぇよ、二日目辺りまでは数えたんだけど、両指の数超えた辺りからもぉダメだ、計算できん!」

「足の指を使って数えられたらどうです?」

「あーその手があったな! ん、でも多分三日目くらいで超えるぞ?」

「ねぇイル姉さま、筆算って知ってる? その前に鉛筆って知ってる? 便利だから使ってみてね」

「バカにすんなよカルファス、鉛筆は知ってるぜ!」

「筆算はどうなんですイルメール姉さま……」

「ヒッサン……? なんか、必殺技の名前っぽいけど、何の意味なんだアルハット」

「何故コレで皇族に名を連ねる事が出来る?」

「むしろオレ以外は皇族の名折れだな! 強さがあれば、筋肉があれば何でもできるっ!」


 クアンタ、シドニア、アメリアが冷たい視線をイルメールに送るが、しかし彼女の力量は確かで、その力量を見込まれて、彼女は皇国軍の実質トップにもなっている。その才能は確かだ。


「ではイルメールに伺いたいのですが、各領土で多発している災いへの対処、もし各領土に駐屯基地を持つ皇国軍と、各領土が運用する警兵隊をどのように動かす事が最適と思われますか?」

「ん、そりゃまぁ戦術的にゃ定期配置だろ」


 イルメールにしては難しい言葉が出た気がした面々だが、しかし彼女が「アルハット、地図」と口にし、アルハットがレアルタ皇国全土地図の表示した霊子端末と、操作用タッチペンを渡す。


「まず基本的に各領土にゃ、オレが配置している皇国軍駐屯基地が二つから四つあるだろ? まずオレん所のイルメール領はもちろん四つあるが、コレは国土の広さがあっからな」

「広さで言えばアメリア領が一番広いですが」

「ただっ広いだけで六割は人も住んでねぇし開発も進んでねぇ山岳地帯だろ? ていうか多分そのマリルリンデは山岳地帯を超えてっから人目に付かねぇンだよ。詳しくは聞いてねェけど、報告聞いてる限りだとクアンタみてぇな人外だろ? なら山岳地帯超えるのもラクショーだろ」


 イルメールはマリルリンデの名と、彼がアメリアの皇居に彼が襲撃をかけた事は知っているが、先ほど話題に出たクアンタと同種であるという話の際には気絶をしていた筈だ。

  にも関わらず、マリルリンデの行動報告を受けた内容だけで、彼が人外だと見抜くのは、獣の直観か、それとも報告を聞いてそう感じたのか、どちらだろうか。


「話はちょいズレたが、各駐屯基地が三つから四つあれば上等だ。基本的に各駐屯基地にいる実戦人員は三百人弱で、六時間交代制で稼働させる事が出来るだろ」

「配置はどのように?」

「基本的には目の届く範囲全般、と言いたい所だが、それじゃ数が足りねぇ。基本的な警戒はゴルタナ装備の警兵隊に任せて、皇国軍の奴らは戦闘になりかねない、どの町や村にもある人通りの少ない道に点在させる。これなら警兵隊の負担も無くしつつ、皇国軍の数でも間に合わせる事ぁ可能だろうよ。ていうか、イルメール領じゃもうやってるぜ」

「無難――というか、基本的じゃが故に強固な守りじゃの」

「こういうのは奇をてらった所で意味ねェからな。実戦は何より数と質の両方を兼ね備えてようやく出来るモンだ。数が限定されてるなら、その数を疲弊させない方法でこなすしかねェ」

「てっきり『オレがいりゃ災いなんざ屁の河童よ』とでも言いそうでしたが?」


 シドニアの茶化すような言い方に、イルメールも「間違っちゃいねぇよ!」と笑いながら彼の背中をバチンと叩くが、それによってシドニアはちゃぶ台に頭を打った。ちゃぶ台にヒビが入ったが、それほどまでの勢いで頭を打ったシドニアは、普段の彼からは想像できない表情で悶絶している。


「っ~~~っ!!」

「実際、オレ一人でも戦争は出来る。んで勝つ自信もある。けどよォ、オレの体は一つしか無くて、今回の敵は数も出現場所もわかってねェ。なのにオレ一人で対処出来るはずもねェさ。

 人間っつーのは出来る事を愚直にこなすしか無くて、オレにゃ筋肉が、そしてオレの部下にゃ数っていう手札があってよ、それを使わねェのはもっとアホだ」

「シドちゃん大丈夫?」

「だい、じょうぶじゃ……ない……っ!」


 カルファスが「ぶふぅ」と笑いながら弟の事を心配し、頭を撫でるが、しかし彼も頭を押さえながら「しかし」と口を挟んだ。


「それでも被害は少なからず発生するでしょう。その被害に遭われた領民への対処は」

「そこはオレの仕事じゃねェ、オメェとアメリアの仕事だ」

「全く……で、アメリアはどうです?」

「うむ、正直な所、イルメールの配置案で基本問題ないと思うが、同時に心配も多い」

「? 今の、特に何ら問題ないような気もしますけど」


 リンナが手を上げると、その答えは今葉っぱや木の枝が服などに刺さったままのサーニスがやってきて、回答を。


「被害数の隠蔽について、です。配置数は基本的に警兵隊と皇国軍双方が多く出動する形となりますので、その事態を訝しむ者も現れるだろう、というのがシドニア様やアメリア様の心配でしょうね」

「あ、サーニスさん無事だったんですね」

「正直あそこまで吹っ飛ばされたのは、イルメール様に教えを乞うていた時以来です」

「オメェ、ホントに見ない内に弱くなったよな。昔はそれこそ、オレと張り合えるレベルにまで強くなったっつーのに」

「シドニア様のお付きとして、恥じぬ教養をと自分に課した結果です。事実、私は弱くなったと自戒しております。今後で挽回できるよう、精進いたします」


 眼鏡を整え、頭をイルメールに下げたサーニスにシドニアが「君はよくやってくれている」と労い、先ほどサーニスが述べた問題点についてを続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ニートを生贄に。

ハマハマ
ファンタジー
『勇者ファネルの寿命がそろそろやばい。あいつだけ人族だから当たり前だったんだが』  五英雄の一人、人族の勇者ファネルの寿命は尽きかけていた。  その代わりとして、地球という名の異世界から新たな『生贄』に選ばれた日本出身ニートの京野太郎。  その世界は七十年前、世界の希望・五英雄と、昏き世界から来た神との戦いの際、辛くも昏き世界から来た神を倒したが、世界の核を破壊され、1/4を残して崩壊。  残された1/4の世界を守るため、五英雄は結界を張り、結界を維持する為にそれぞれが結界の礎となった。  そして七十年後の今。  結界の新たな礎とされるべく連れて来られた日本のニート京野太郎。  そんな太郎のニート生活はどうなってしまう? というお話なんですが、主人公は五英雄の一人、真祖の吸血鬼ブラムの子だったりします。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

フィフティドールは笑いたい 〜謎の組織から支援を受けてるけど怪し過ぎるんですけど!?〜

狐隠リオ
ファンタジー
 偉大なる魔女の守護者、それが騎士。  大勢の若者たちがその英雄譚に魅了され、その道へと歩み始めていた。  だけど俺、志季春護は騎士を目指しながらも他とは少し違かった。  大勢を護るために戦うのではなく、残された二人の家族を護るために剣を振るう。  妹の夏実と姉の冬華。二人を護るために春護は努力を続けていた。  だけど……二人とも失ってしまった。  死の淵を彷徨った俺は一人の少女と出会い、怪しげな彼女と契約を交わしたんだ。  契約によって得た新たな力を使い俺は進む。騎士の相棒である水花と共に。  好意的だけど底の知れないナニカの助力を受け、少年は強さを求める。  家族の仇を取るために、魔族を討滅するために。

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

黒木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...